なお、死者数は7月下旬から増加しているが、これは熱中症などで死亡した人も新型コロナによる死亡とみなされていることが影響している。

 厚生労働省は6月18日、「新型コロナウイルス感染症の陽性者が死亡した場合、厳密な死因を問わず、新型コロナウイルスで死亡した感染者として全数を公表する」ことを都道府県に依頼している。

 死者に関する詳しい情報が公表されないため詳細はわからないが、発表された死者に、死因が新型コロナ以外である人が相当数含まれているのは間違いない。

 日本が集団免疫状態に達していると判断した奥村教授と上久保教授は、7月27日に都内で記者会見し、このことを発表した。

 会見で、上久保教授は、主な欧州諸国の「死者曲線」(人口100万人当たりの死者数の動きをグラフにしたもの)を示し、これらの国ではいずれも、死者数が高い水準に達した後、急減していると説明した(死者の数や急減の時期は国により異なる)。

 集団免疫に達しているのは日本だけではないとみているわけだ。

 日本で7月から8月にかけて感染者(PCR検査の陽性者)が急増したが、それは検査数が増加した結果、陽性者が増加しただけのことだという。また陽性者の多くは総合的な免疫力によって無症状か軽症状で済んでいる。

 新型コロナウイルスへの対応方法は、感染拡大期と集団免役期では180度異なる。

 集団免疫状態であれば、不要不急の外出や県外旅行の自粛、集会の人数制限、マスク着用や社会的距離の確保などは、原則として必要ないと奥村教授は言う。

 政府が勧める「新しい生活様式」にとらわれる必要はなく、経済活動は徐々に元に戻していけばよい。

 PCR検査で陽性と判定された人は、症状に応じて対応する。重症や中等症の人は入院し、軽症や無症状の人はしばらくの間、症状が悪化しないか注意しながら暮らす。

 軽症者や無症状の人は体内にあるウイルスの量が少ないので、外出しても他人にうつす可能性はきわめて低いと考えられる。

 従って入院者を限定し、医療資源を重症者の治療に集中すれば、医療の逼迫(ひっぱく)も起こらないはずだ。

「総合的な免疫力」は
人を守る3重のバリア

 ここで「総合的な免疫力」とはどのようなものかを説明しよう。

 宮坂教授によれば、人が病原体などの異物から身を守る「生体防御」は3重のバリア(防壁)から成っている。