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即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。 作者:藤孝剛志

第5章 ACT2

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15話 お約束の登録時のステータスチェックで驚愕されたりとかでござるかね!(第5章完)

 創造主クリエイター、丸藤彰伸は自分こそが最強だと思っていた。

 その能力は創造であり、様々な生物を創り出すことができる。

 完全に無から有を産み出せるわけではないが、それでも破格の力であることは間違いないだろう。

 彰伸はこの力を、魂を与える能力だと捉えていた。

 動物を相手に使うことはできないが、植物や死体なら対象とすることができる。

 魂のある存在には使用できないと考えるとわかりやすいだろう。

 もっとも、彰伸は本当に魂があると信じているわけはではない。魂のようなものを仮定すれば説明しやすいというだけのことだ。

 産み出した生物は彰伸の命令に従う。

 生物には様々な能力を与えることができるため、間接的にそれらの能力を使うこともできた。

 制限といえば、能力を使うには直接触れなければならないことだが、それも自らが産み出した生物を利用してある程度は克服できた。

 たとえば、樹木のような生き物を創造し、根を伸ばしていけばいい。

 彰伸が創造物に触れていれば、それを介して力を及ぼすことが可能なのだ。

 今はまだ、創造できる大きさ、速度、数に限界はあるが、それも能力が成長すれば解消できる問題だろう。

 いずれは世界を支配することもできると彰伸は考えていた。


  *****


 預言者オラクルマスター、三田寺重人は自分こそが最強だと思っていた。

 その能力は運命の予見だ。

 ステータスが高かろうと、破格の能力を持っていようと、先が見えていないならいずれは失敗する。

 ただ漫然と力を使っていたところで、そのうちにより強い者に打倒されるだけのことだろう。

 それに、ただ強いだけで物事が思い通りに運ぶことなどない。その強さが故に失敗することすらあるだろう。

 目標を達成するためには、情報が必要なのだ。

 何を倒し、何を倒してはいけないか。

 どこに行き、何を入手し、誰と会えばいいのか。

 重人の預言書には目標を達成するための手順が書かれていた。事前に何をどうすればいいのかがわかるのだ。

 それは本の形で示されるため、全てが書かれているわけではない。

 だが、攻略に必要な最低限のことは書かれていて、読み取るには多少のコツはいるのだが、重人はそれをマスターしつつあった。

 預言書は目標を設定すれば必要な情報を提示する。

 今の重人は賢者を殲滅し、世界に君臨することを目標としていた。

 確かに、正面切って戦えば、彰伸にもラグナにも勝てないだろうし、このギフトを与えた上位者である賢者にも勝てないだろう。

 だが、ギフトの親である賢者に勝てないというのは、ギフトの能力を直接行使することができないというだけのことであり、賢者を倒すために必要な情報を得られないわけではないのだ。

 なので、創造主クリエイターでは賢者に勝てなくとも、預言者オラクルマスターには勝てる可能性がある。

 重人は、そのために必要な、アイテムと人材を集めていた。

 幸い、今の所は時間制限のようなものはない。

 預言書を読み込み、慎重に事を運べばいずれは事を成すことが出来るだろう。

 重人は、情報を制する自分こそが世界を制すると考えていた。


  *****


 運命の女(ファムファタル)、九嶋玲は自分こそが最強だと思っていた。

 その力は、異性の利用価値の算出と、籠絡。

 つまり、使える男を見つけだし、誑し込むことができる能力だ。

 創造主の丸藤彰伸も、預言者の三田寺重人も、自分が玲の支配下にあることなど気付きもしていないだろう。

 彼らは、いつのまにか、なんとなく、玲に逆らえないようになっていて、その意向を自然と汲むようになっているのだ。

 もともと、重人は賢者を倒し、世界を支配するなどという野望を持っていたわけではない。

 それは、玲がそう仕向けただけのことだった。

 そうしたことに大した理由はない。

 ただ、自分の男たちが、自分のためにどこまで無理難題を聞いてくれるのかと試してみただけのことだった。

 そして、このままどうなるのかを楽しんでいる。

 この世界で安全に過ごすだけならどうにでもできるだろう。

 だが、それでただ安穏とつまらない人生を送るだけのことになる。

 どうせ異世界から帰れるあてもないのだ。

 ならば、できるだけ派手に、刺激的に、享楽的に。

 面白おかしい人生を過ごしたいと、玲は考えていた。


  *****


 古代都市を通り抜け、花川たちは長い階段を上っていた。

 うんざりするほどの行程を経て、ようやく地上にでるとそこは森の中だ。

 出口になっていた建物はすぐに跡形もなくなったので、一方通行ということらしい。

 森を出るとすぐに街道があり、少し離れたところに城壁が見えた。

 そこがエント帝国の帝都のようだ。

 どこまでも続いている城壁は帝都の大きさを物語っているが、花川は少々落胆していた。

 これまでに見てきた街とほとんど変わらなかったからだ。


「東の島国ですので、なんとなく和風を期待していたのですが、これまでと変わる様子はないですな」


 花川は相変わらず先頭を進んでいた。

 特に指示がないので、そのまま帝都へと向かう。

 城門では検閲は行われておらず、そのまま中に入ることができた。


「さて、帝都にきましたが、それからどうすればいいのでござる?」

「次は冒険者ギルドだな。黒閃龍の宝玉はそこで必要になる」


 重人が預言書を参照して言った。


「ほほう。そんなものがあるとは初耳ですな」


 似たような施設はマニー王国の王都にもあったが、あちらは魔界への入界権を売買していたので性質は異なるだろう。

 預言書にはギルドへの地図も載っているようで、指示に従って進むとあっさり到着した。

 中は、基本的には酒場のようだった。

 テーブルがいくつも置かれていて、壁面には依頼書がべたべたと貼り付けられている。

 昼間から酒を飲み騒いでいる者たちがいるので、それなりに繁盛しているようだ。


「ふむ。なんというかテンプレ感がすごいですな! で、ここに来たということは、ギルドに登録するという流れでござるか? いやー拙者これでもレベル99ですからな! お約束の登録時のステータスチェックで驚愕されたりとかでござるかね!」


 ここまで無理矢理つれてこられた花川だが、それはそれで楽しそうだと考えた。

 異世界に来てからこれまで、ろくな目にあっていないのだ。

 ありきたりな展開でもなんでもいいから、そろそろいい目を見たいところだった。


「残念だったな。それをやるのはラグナくんだよ」

「ぐっ……そのための宝玉でござるか! ギルド登録時に、そーいや、ここに来るときに倒したんだけど。みたいな感じで討伐証明部位を提出して、驚かれるとゆー奴ですな!」


 それも面白そうだと花川は思う。

 自分が主役でないのは残念だが、それを間近で見られるならいいかと思ったのだ。


「ん? その登録をすればいいの?」

「そうなんだ。登録をしておくと魔物を退治したりすることでお金がもらえるんだ」


 ラグナはよくわかっていないようだが、皆で受付に向かうことになった。

 全員で登録するということになったのだ。


 ――おお! なんといいますか、今さらではあるんですけれども、わくわくといたしますな! 拙者、冒険者になれるのでござるか!


 受付は奥にあるので、酒場の中を通ることになる。

 すると、酔っ払い共の間を通っていくわけで、当然のように行く手を遮る足が投げ出された。


「こ、これは!」


 花川は感動していた。

 ギルドにやってきた新人に、チンピラ冒険者が絡んでくる。こんな、物語の中であればありふれたような展開をこの目で見ることができるとは思っていなかったのだ。

 チンピラは貧相な体格で、革のズボンに、鋲付いたジャケットを着込んでいる。絵に描いたようなチンピラで、ここまでくるとわざとやっているとしか思えないほどだった。

 同じ席には女が三人、綺麗どころを揃えている。ただのチンピラよりは甲斐性がありそうだが、それでも下っ端感は拭いようがなかった。


「おいおいおい! 見ねえ顔だなぁ? 挨拶もなしに通り過ぎようってなぁ、どういう了見だよ?」

「こんにちは!」

「はい、こんにちは……ってそーゆーこっちゃねーだろ!? 素直かてめぇ!」


 ラグナは状況を理解していないのか、馬鹿正直に挨拶していた。


「じゃあどーゆーことなんだろう?」

「ギルドに登録しようってんだろ? 俺様が審査してやるぜぇ!」


 チンピラが立ち上がった。

 やはりひょろりとした、見るからに弱そうな男だった。


「審査って?」

「ギルド登録したきゃ、俺様を倒していくんだな!」


 チンピラが拳を上げ、構えを取った。

 そして、口で効果音を言いながら、ひょろひょろのパンチで素振りを繰り返す。

 どうしようもなく弱そうだが、花川は念のために鑑定スキルを使ってみた。

 レベル10だった。

 レベル5万を超えるラグナなら、指先一つで倒すことも可能な実力差だ。


「ヨシフミぃ、またそんなことすんのぉ?」

「いいから飲もうよぉ」

「新人なんかどうだっていいじゃん」


 女たちが呆れたように言う。

 いつも新人への洗礼をかってでているようだが、ヨシフミとやらが倒せるのは本当の意味での新人ぐらいだろう。


「困ったな。倒せって言われても」

「ラグナくん。適当にあしらえばいいよ。そうだな。文字通り床に倒せばいいんじゃないか。それで納得するだろ」


 これからギルド登録をするというに、殺したり大怪我をさせたりするのはまずいと重人は考えたのだろう。


「わかったよ。転かしたらいいんだね」

「あぁ!? 転かせるってのならそれでお前の勝ちでいいぜぇ!」


 ヨシフミが凄むが、花川ですら怖いとは思わなかった。

 戦う前から勝敗がわかっていて、道化としか思えないのだ。


「じゃあいくね」

「こいやぁ!」


 そして、ラグナの頭部が消し飛んだ。


「はい?」


 何がおこったのか、花川にはわからなかった。

 ラグナの首から血が噴き出し、天井を赤く染める

 体はそのまま倒れ、床を血だまりへと変えた。


「ヨシフミぃ。また受付のお姉さんに怒られるよぉ?」

「掃除するのも大変なんだからね!」

「だから、こんなんじゃ新人こなくなるって」


 ヨシフミが拳を拭きながら椅子に座る。どうやら殴ったらしいのだが、やはり何もわからなかった。


「よぉ。賢者候補ども。自己紹介が遅れたな。俺は、このエント帝国の皇帝。賢者のヨシフミってんだ。よろしくな」

「お、おかしいだろ……皇帝が……賢者がこんなところに……」


 重人が呆然と立ち尽くす。


「って、チンピラが勝つってどうゆーことなんでござるか!? ここはテンプレ通りに進行して欲しかったんですが!」


『賢者を倒すには世界剣オメガブレイドが必要だ! エントでの最重要目標が世界剣の取得なんだけど、ここには賢者ヨシフミがいるぞ! 剣を入手する前に遭遇エンカウントすると全滅は必至! けれどヨシフミは賢者にしては珍しく皇帝なんてやってるので居場所は限定されている。慎重に立ち回れば回避できるはずだ!』


 預言書にそう書かれていたことを、花川は思い出していた。

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