「菅義偉首相」にしがみつく創価学会と公明党の限界

首相交代・深層レポート【前編】
戸坂 弘毅

創価学会は7月8日、東京・信濃町の本部別館で「最高協議会」を開催した。この会議は、毎年夏と冬の2回開かれ、全国13方面の方面長や婦人部長らの地方幹部と本部の幹部たちが一堂に集まり、組織の課題を話し合う重要会議だ。今回は、新型コロナ対策で出席者を普段の約半数の50人程度に絞り、開催日数も3日から1日に短縮して行われた。

会議の重要テーマは次期衆院選に向けた体制作りだった。会議の中で佐藤浩は「いよいよ衆院の任期満了まで1年余となった。9月以降はいつ衆院の解散があっても万全の戦いができるよう準備を進めて欲しい」と檄を飛ばした。

そして出席者が最も高い関心を寄せる衆院選の時期については、「来年7月の都議選から3か月後の10月の任期満了近くになる可能性が最も高い」との見方を示す一方、「可能性は高くはないものの、早期解散を模索する動きもあるのは事実なので、この秋から冬にかけての解散も皆無とはいえない」として、9月から全力で選挙準備に取り組むことを申し合わせた。

 

佐藤と菅が蜜月関係にあることは、今や学会内で知らないものはいない。出席した幹部たちは、佐藤の言葉はすなわち菅の考えだと思って聞いていた。会議で佐藤の見立てを聞いたある幹部は「菅さんは『安倍首相はもはや解散できない可能性が高いし、そもそも解散させたくない』と思っているのだろう」と呟いた。

この幹部の見方は当を得ていた。もともと安倍は、この夏に東京五輪を終えた後、今秋にも途中辞任して党員投票を省略した形の総裁選に持ち込み、気心に知れた政調会長の岸田文雄を後継にする――という青写真を検討していた。来年9月の任期満了まで務め、党員投票が行われる正式な総裁選が行われると、地方党員に人気の高い元幹事長・石破茂が総裁に就任する可能性が高まるからだ。

ところが東京五輪は1年延期となった。現職の首相として五輪を迎えたいと願っていた安倍が、任期いっぱい首相を務めることと、後継を岸田にすることを両立させるためには、もう一度自らの手で解散に踏み切って勝利し、求心力を回復させるしかない。それゆえ、無理は承知でなお解散を模索していたのだ。

(文中敬称略。中編につづく)