昨年の参院選の広島選挙区で、新人の河井杏里が現職の溝手顕正を追い落として当選できたのも、菅の依頼を受けた創価学会が全力で河井を支援したからだった。菅と学会のパイプが河井当選の決め手だったのだ。もっともその河井夫妻が公選法違反で逮捕されたため、広島県の学会関係者の間では、菅に対する怨嗟の声が上がっている。
学会とのパイプが有効なのは、自民党内だけではない。日本維新の会代表の松井一郎は、公明党が成否のカギを握る「大阪都構想」の実現に向け、菅に公明党対策をたびたび頼み込んできた。公明党・創価学会とのパイプは、維新をも引き寄せる効果があるのだ。
自民党のベテラン職員は「菅は、かつての野中広務と同じような立場に立ったな」と評するが、そのパイプは野中以上に強い。
それは菅が、2010年の参院選以降、創価学会で選挙対策を一手に担っている副会長で広宣局長の佐藤浩と極めて親密な関係を築き、その佐藤は会長の原田稔と主任副会長で本部事務総長の谷川佳樹という、今の学会を動かす中枢と直結しているからだ。
創価学会の絶対的な指導者である名誉会長の池田大作が、体調悪化により人前から姿を消して10年余。もはや池田が指揮をとれなくなっていることは明らかで、原田と谷川が名実ともに学会を動かしている。
そこに直結している佐藤と菅との約束は、そのまま創価学会と日本政府の約束になる。7年8か月の安倍政権の間に、公明党を「中抜き」して政府と創価学会の間で直接、物事が決まるという歪な関係ができているのだ。
だが、こうした現状は、創価学会にとって政府・自民党とのパイプが菅だけになっているという脆さの裏返しでもある。