<大波小波> トンデモ映画と反戦
2020年9月9日 16時00分 (9月9日 16時00分更新)
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一九七七年夏、百恵・友和コンビの東宝映画が人気を呼んでいた時、その新作と併映で、トンデモ映画が公開された。戦死した友和の婚約者が、戦後も豪邸にひっそりと住んでいる。そこに少女たちが到来し、次々と食べられていく。老女は婚約者の帰りを待ち続け、いつしか人食いの妖怪と化していたのだった。テレビCMの大林宣彦が監督し、日活ロマンポルノの桂千穂が脚本を担当した『HOUSE ハウス』である。
主演は池上季実子、大場久美子といった、売り出し中の美少女アイドル七人と南田洋子。それまでの陰気な怪奇映画とは正反対。お洒落(しゃれ)でポップで、ハリウッド感覚あふれる怪奇アクション映画だった。大林と桂はそれ以来大活躍し、つい先ごろ相次いで亡くなった。
二人にはそれ以前に檀一雄原作で『花筐(はながたみ)』を撮る構想があり、脚本まで完成していた。太平洋戦争開戦直前の唐津を舞台にした青春群像の物語だ。計画は頓挫したが、大林は四十年後、余命半年の宣告を受けながらもそれを執念で撮りあげた。『ハウス』は言うならば『花筐』の後日談である。
戦争に反対し恋愛を肯定する点で、大...
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