名前秋元 康
あきもと やすし
出身地東京都目黒区
生年月日1958年5月2日
主な担当番組– ザ・ベストテン
– オールナイトフジ
– 夕焼けニャンニャン
– とんねるずのみなさんのおかげです。

【取材後記】

「目の前に、秋元康がいる…」

何十年にも渡ってエンタメ界の頂点に君臨してきた男が、
目の前に座り、僕の質問に答えている。

それが夢でないことは、手の震えや心臓の鼓動が教えてくれた。

失礼ながら、
普段の友人との会話で僕は「秋元康が…」とよく呼び捨てにしている(すみません)

なぜなら、僕にとって“秋元康”は果てしなく遠い存在だからだ。

勝新太郎のことを「勝新太郎さん」とは言わない。
黒澤明のことを「黒澤明さん」とは言わない。
僕にとってはそれと同じことなのだ。

なぜ、僕がそんな人を取材することが出来たのか?

それは取材当日からさかのぼること約1か月前。
この『日本放送作家名鑑』を開設した6月15日のお昼。

放送作家名鑑の立ち上げについて、
僕自身が取材を受けたニュースサイトの記事も同時に公開された。

その記事で僕は「放送作家名鑑で1番取材したい人は?」という質問に
「秋元康さん」と答えていた。

すると、その日の夕方、
『青春高校3年C組』の会議でテレビ東京の佐久間さんから
「秋元さんが深田君の取材受けていいって言ってるよ」と報告を受けた。

記事が公開されてから、わずか4時間後のことだった。

怖かった…
それはもう震えが止まらないほど。

“秋元康の1時間”を借りることの重みは、バカな僕でも十分に理解できたから。

そして、迎えた取材当日。

生身の秋元康と向かい合い、話を聞かせてもらった1時間の中で、
最も強く印象に残り、強い違和感を抱いたことがある。

それは…秋元康が“天才ではない側のスタンス”で話すことだ。

「世の中には天才っているよね」
「いくら頑張っても先人には勝てないよね」
「生意気な言い方かもしれないけど…」

え?いやいやいや!
あなた、秋元康ですよね?

『川の流れのように』を作詞したの、あなたですよね?
AKB48とか乃木坂46とか欅坂46をプロデュースしてるの、あなたですよね?
作詞した曲を1億枚以上売ってるの、あなたですよね?

そんな男が“天才ではない人”として話してくるのだ。

その話し様を目の前で目撃した僕の感覚として、
確信に近いものがある。

それはセルフプロデュースやリップサービスではなく、
「この人は本当に自分を天才と思っていない」

それが今回の取材で1番印象的であり、1番ゾッとしたことだった。

おそらく深田史上1・2を争う緊張ゆえに、
取材中の僕のリアクションは決して良くなかったはずだし、
会話のラリーもうまく出来ていなかったはずだ。

しかし、取材を録音したテープを聴き直してみると、
秋元さんは本当に優しく、丁寧に僕の質問に答えてくれていた。

最初は多かった敬語が、会話が進むにつれてなくなっていく様子も、
テープを聴き直したことで気づき、とても嬉しくなった。

緊張したけど本当に楽しい時間だった。
ずっとこの人の話を聞いていたいなと思った。

もちろん、1回取材をしたくらいで
“秋元康”と僕の距離が縮まったなんて思えるはずがない。

ただ、失礼を承知で言うが、
この取材で僕は生身の“秋元康”という人を本当に好きになった。

だからこそ、心残りがある。

秋元さんに感謝の気持ちを伝える余裕が、取材時の僕にはなかったことだ。

無趣味だった僕が欅坂46のファンになり、
ライブのチケットが外れたにも関わらず、
グッズを買うためだけに車を借りて富士急ハイランドまで行っちゃうくらい、
人生を楽しませてもらっていること。

『青春高校3年C組』で、
元々引きこもりだったり、自分に自信がなかった子たちが、
番組に出演したことよって日に日に輝きはじめ、
少しずつ世間に知られていく過程を番組スタッフとして見ることが出来て、
本当に幸せを感じられているということ。

中学の時、学年主任の先生が退職する際に
生徒一同で『川の流れのように』を合唱して、
凄く怖かった先生がボロボロに泣く姿を見て、
歌が持つパワーに人生で初めて感動を覚えたこと。
そして、その後の人生で困難に直面した時には
『川の流れのように』を聴いて自分を鼓舞してきたこと。

そして何より、この取材を受けてくれたこと。

秋元さんが旅行カバンをパンパンにしながら、
寝る時間を惜しんで40年以上も頑張ってきてくれたおかげで、
僕の人生がとてもとても豊かになったということを
「本当にありがとうございます」って伝えたかった。

だから、また会えるように頑張ります。

取材した人に一律で渡している謝礼の3000円も渡せなかったので、
その時に渡します。

そして今日からは、どんな時でも「秋元さん」ってちゃんと言います。

深田憲作