日本が改修の権利を重視するのは、次期戦闘機を逃すと他に自由に運用できる戦闘機がなくなるからだ。次期戦闘機と共に運用することになる2種類の戦闘機、F35とF15は、いずれも米国主導で開発されたもので、特にF35は「自衛隊のニーズに合わせて機能を柔軟に変えられず、修理にも時間が掛かる。運用してもノウハウを得にくい」(政府関係者)。

 比較的自由に改修できるF2の後継機が、F35などのように「米国からの買い物」になってしまえば、日本が独自に航空戦力を増強したり、技術を向上したりする機会が永遠に失われるといっても過言ではない。

 こうした危機感があるが故に、18年末に政府がまとめた「中期防衛力整備計画」には「(次期戦闘機は)国際協力を視野に、我が国主導の開発に早期に着手する」と明記された。しかし、方針を決めればその通りに進むほど戦闘機開発は甘くはない。

外圧に屈しない一貫性が必要

 20年度には、防衛装備庁に「将来戦闘機開発官(仮称)」なるポストが置かれ、開発が正式にスタートする。

 新ポストの指揮の下、開発に取り組む企業グループの中心となりそうなのがF2開発を取りまとめる主契約企業だった三菱重工業だ。

 同社の阿部直彦防衛・宇宙セグメント長は、「開発着手に向け、要素技術の獲得はほぼ完了している」と開発の取りまとめに意欲を示す。

 若干、専門的になるが、要素技術とは、(1)先進技術実証機(X-2)の開発で得たインテグレーションのノウハウ、(2)ミサイルを機体内に格納して敵機から発見されにくくするステルス技術、(3)世界最高性能のレーダー技術、(4)ボルトが不要で軽量な複合材の技術、(5)僚機間で連携して戦うクラウドシュティング技術――だという。

 この他、IHIのジェットエンジンなど日系企業は優れた技術を持つ。だが、実証段階にとどまるものも多く、実用機の開発、製造の実績では欧米企業に大きく水をあけられている。次期戦闘機の開発は欧米企業の支援なくしては不可能なのだ。

 一方、欧米に頼り過ぎれば「日本の自由な運用の幅は狭まる。特に米国に深く依存すれば確実に主導権を奪われる」(政府関係者)というジレンマがある。