第四話:フェイト・ブレイク・オンライン――起動【四】
ファースの街を右へ左へと進んで行けば、ものの数分で目的地へ到着した。
この街には夢の中で何度も行き来しているので、マップがなくても不自由を感じることはない。
眼前の鍛冶屋は、
内部に巨大な工房があるため、縦にも横にもかなりデカい。
「――へい、いらっしゃい!」
鉄製の門をくぐれば、首に白いタオルを掛けた店主が、元気よく迎えてくれた。
店の奥には多くの職人さんがいて、カンコンカンコンと大槌で金属を精錬している。
「なんかいい感じの武器を探しているんだ。あんまり金はないから、安めので頼む」
「おぅ、いいぜ! 見てけ見てけ!」
店主が正面に手をかざせば、商品のリストが浮かび上がった。
・ひのきの棒 800マニー
いい感じの木の棒。
それ以上でもそれ以下でもない。
・ブロンズソード 2000マニー
青銅を精錬した直剣。
剣として必要最低限の機能しか持たない。
・朽ちた大槌 3500マニー
使い古された大槌。
攻撃力は高いが、耐久性に大きな問題あり。
・鉄の手斧 5000マニー
なんの変哲もないただの手斧。
木を斬り倒す際に重宝される。
・はがねのつるぎ 10000マニー
鋼を精錬した直剣。
前衛職の一般装備であり、斬れ味・耐久ともに及第点。
(……あれ、こんなに高かったっけ?)
俺の記憶にある武器の値段より一回り……いや、二回りは上の価格設定だ。
(なんか、おかしいな……)
なんとも言えない違和感を覚えながらも、リストに表示された武器を物色していく。
(うーん……。はがねのつるぎは、そこそこ使えそうだけど……。とてもじゃないが、高くて手が出せないな)
それ以外の武器については、そもそもの性能がかなり微妙だ。
「はっはっはっ、そう渋い顔をするな! このリストにある武器は全部、余った素材で作った『出来合い品』。坊主がモンスターの素材を持って来るってんなら、もっといいやつを作ってやるよ!」
「『もっといいやつ』、か。例えば剣なら、どんなのが作れるんだ?」
「剣だったら、そうだな……。うちで作れるのは、だいたいこんなところだ」
店主が指を横へスクロールすれば、新しいリストが表示された。
・バスターソード
鉄で作られた、両手持ちの大剣。
頑丈だが、斬れ味に難あり。
敵を斬るというよりは、叩き潰す方が向いているだろう。
・龍骨の短剣
謎の龍骨を加工した短剣。
グリップ感が独特。
斬れ味は悪く、骨ゆえに壊れやすい。
・
天を穿つ漆黒の業物。
秘泉に住まいし
クリティカル発生時、ダメージが2倍。
・ロック・ダガー
鋭い切れ味が自慢。耐久力はない。
・
斬り付けた相手に対し、定数ダメージ2を与える。
バスターソードと
龍骨の短剣とロック・ダガーは、耐久性に難があるので、これもパス。
「――『天黒の剛刃』ってのが、ちょっと気になるな」
この武器だけは、俺の知識にないものだ。
「あ゛ー……。目の付け所はいいが、そいつはちょっとおすすめできねぇな」
「どうしてだ?」
「あんまり気を悪くしねぇでもらいたいんだが……。坊主、お前さんはまだ駆け出しの冒険者だろ?」
「あぁ」
俺の冒険者歴が浅いのは、この超初期装備を見れば一目瞭然だ。
「それならやっぱり、
店主はそう言って、詳しい話を語り始めた。
「この剣を作るには、『
(トレヴァスの森に潜む恐ろしく強い鬼……おそらく
頭の中であたりを付けていると、店主がジィッと俺の全身を見つめた。
「それよりも坊主、防具はいらねぇのか? 随分と軽装に見えるんだが……」
「うーん、防具はまだいいかな」
俺の戦闘スタイル的に、防具よりも先に剣を追加した方がいい。
(というか、この人めちゃくちゃ親切だな)
今の俺は、どこからどう見ても新人冒険者。
まぁ早い話が、一番金払いの悪い客だ。
それにもかかわらず、この店主は嫌な顔一つしないどころか、いろいろなことを懇切丁寧に教えてくれる。
ファースを拠点にする間は、この鍛冶屋を使わせてもらうことにしよう。
「とりあえず、今日のところはブロンズソードを一本頼むよ」
「あいよ、まいどありぃ!」
2000マニーを支払うと、ブロンズソードがインベントリに収納された。
早速それを左手に装備し、腰の鞘に差しておく。
(あぁ……やっぱり二本あると落ち着くな)
俺はこれまで星の数ほどのゲームをやり込み、前衛・中衛・後衛――ありとあらゆる職業をこなしてきた。
その中で最も自分に合っていたのが、二刀流の剣士。
夢の中のFBOでも、ずっとこのスタイルで活動していた。
「おぅ坊主、武器はちゃんと装備しねぇと意味ねぇからな!」
店主から放たれた定番のセリフに「あぁ、ありがとう」と返事をしつつ、鍛冶屋を後にする。
ノービスから剣士へ転職・アビリティの習得・武器の購入――ここまで来れば、そろそろ『レベリング』に臨んでもいい頃合いだろう。
「サブクエストもこなしたいんだけど……。それはもうちょい後の方がいいかな」
フェイト・ブレイク・オンラインのサブクエストには、推奨レベルの表示がないため、非常に『殺傷性』が高い。
リスクヘッジの観点からも、今はレベリングを優先させた方がいい。
「さて、それじゃレベリングに行きますか!」
「ガココッ!」
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