第三話:フェイト・ブレイク・オンライン――起動【三】
俺とガンコさんは、ファース中央部の大通りを抜け、冒険者ギルドにたどり着いた。
二階建ての煉瓦造りには、中世風の情緒が漂っており、なんとも言えない不思議な魅力がある。
ただこうして外観を眺めているだけで、『冒険欲』のようなものがグワグワッと掻き立てられるのだ。
(それにしても……懐かしいなぁ……)
夢の中で何度もお世話になった冒険者ギルドに対し、ちょっとした感慨を抱きながら、両開きの大きな扉をギィッと開ける。
するとそこは――いつものように大勢の人たちで賑わっていた。
まだ日も高いというのに酒樽をかっくらう冒険者。
目をぎらつかせながら商談に精を出す商人。
作戦会議に熱を入れるパーティ。
「相変わらず、ここは栄えてるなぁ」
いつもと変わらぬ光景に安心感を覚えながら、ギルドの奥へ足を進めていく。
受付に到着すると、ギルド職員の美しい女性がニコリと微笑んだ。
「――ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はいかがいたしましたか?」
「すみません、転職をお願いしたいんですが……」
「承知いたしました。それではこちらのリストより、ご希望される職業をお選びください」
女性が正面に手をかざすと、大きなシステムウィンドウが表示された。
戦士・剣士・
(うーわ……。相変わらず、とんでもない情報量だな……)
指先でスクロールして、その全容を把握するだけでもけっこうな時間がかかる。
しかも、一つ一つの職業に対し、どのステータスに補正が掛かるのか・どういった戦法が強力なのか・おすすめの武器はなにか、果てには強力なスキルの組み合わせ・おすすめのパーティメンバー・相性補完に優れた装備などなど……。めちゃくちゃ細かい説明文が添付されている。
まるでおらがゲームの作り込み具合を自慢するかのようだ。
――変なところで親切だが、肝心なところで不親切。
それがこの糞運営の特徴だと広く喧伝されているが……こういうところを見ると、まぁ納得だな。
その後、俺はしばらく考えてから『剣士』を選択した。
状況対応能力に優れた
せっかく自由に動く体を手に入れたんだ。
どうせなら、前衛職で自由気ままに駆け回りたい。
剣士はHP(体力)・STR(筋力)・VIT(耐久)・AGI(敏捷)――四つのパラメーターにそこそこのプラス補正。
その一方、MP(魔力)・INT(知性)にかなり大きめのマイナス補正が掛かる。
俺の資質――STR(筋力)とAGI(敏捷)のプラス補正を活かせる職業だし、下級職の中では剣士が最適解と言っても過言ではないだろう。
無事に転職を済ませた後は、
武器や防具の重量を取っ払える前衛職の人権魔法<
各所に仕込まれた初見殺しを回避するためのFBOにおける必須スキル<危機感知>。
レベリングや対多数戦闘において有用な斬撃スキル<
「まぁ、こんなところかな」
これが夢の中のゲームだったならば、もっと『遊び』を持たせてもいいんだけれど……。
(今回は、命懸けのゲームだからな……)
一切の手抜かりなく、『ガチビルド』で臨むつもりだ。
「とりあえず、『ブロンズソード』に<
<
まるで背中に翼でも生えたかのような気分だ。
「よしよし。体も軽くなったし、戦闘用のスキルも取ったし、これで後は装備さえ整えれば――」
このとき、とある考えが脳裏をよぎる。
「この<
本来この魔法は、自身の装備を軽くし、FBOの売りである『高速戦闘』を可能にするものなんだけど……。
もしかしたら、別の使い方ができるかもしれない。
別に<
「ガンコさん、ちょっと<
「ガコ」
彼女からの許可も取れたので、早速トライ。
「――<
魔法は正常に起動し、青白い光がガンコさんを包み込んだ。
「それじゃちょいと失礼して……おぉ! 軽い軽い!」
<
ガンコさんを肩に載せれば、移動速度はなんと『亀』→『人』への大躍進!
高速戦闘を可能にするための魔法が、思いもよらぬ副産物を生み出してくれた。
「うし、次は装備を整えに行くか。――ガンコさん、しっかり掴まっていてくれよ?」
「ガコ!」
冒険者ギルドでの目的を果たした俺は、ガンコさんを肩に載せ、念願である『人並みの速度』で鍛冶屋へ向かうのだった。
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