検証「安倍政治」 普天間「返還」 辺野古ありきを改めよ
2020年9月11日 08時18分
異論や批判には耳を貸さず、説得をしようともせず、最後は力でねじ伏せる−。「安倍一強」政治の弊害は、沖縄県名護市辺野古での新しい米軍基地建設に反対する県民との向き合い方にも表れた。
米軍普天間飛行場(宜野湾市)の返還を巡り、史上最長の七年八カ月続いた安倍政権は、県民の声を一貫して退け、新基地建設を強行し続けた。完成の見込みがないまま、辺野古では今も、埋め立ての土砂投入が続く。
第二次安倍内閣発足から一年後の二〇一三年末、当時の仲井真弘多(なかいまひろかず)県知事は、普天間飛行場の五年以内の運用停止などを条件に辺野古埋め立てを承認。政権は五年後の一八年末、本体工事である埋め立てに踏み切る。だが、沖縄の民意は終始、別のところにあった。
仲井真氏や当時の県選出自民党国会議員は普天間の県外移設を選挙で公約。仲井真氏の埋め立て承認は変節と批判され、一四年知事選で辺野古移設反対を掲げる故翁長雄志(おながたけし)氏に敗れた。沖縄では以後、大半の国政選と一八年知事選、翌年の県民投票で新基地建設反対の意思を示す票が多数を占める。
政府はこの間、工事海域に改良困難な軟弱地盤があるのを認識しながら埋め立てを断行。県による埋め立て承認撤回処分も手前勝手な法運用で無効にした。既成事実の積み重ねで民意を抑え込む手法は事業の自己目的化を招いた。
一九年末公表の新工程表で政府は、辺野古移設には当初計画の二・七倍の九千三百億円を要し、完了は三〇年代になることを明らかにした。設計変更には再度、県の承認が必要だが、新基地は完成しても震度1で護岸崩壊の恐れがあると指摘される。県が承認する可能性は低く、進展は見通せない。
辺野古移設を「唯一の解決策」とする政府の論法は破綻しているのではないか。
その一方で政府は六月、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の秋田、山口両県への配備を工費と工期を理由に断念した。なぜ本土では見直しができ、沖縄ではできないのか、県民には「沖縄差別」に映る。
自民党総裁選を戦う三氏はいずれも、政府と党の要職を担う中で辺野古移設を進めてきたが、「辺野古ありき」の硬直した姿勢が、普天間返還という最優先すべき課題の解決を遠ざけてはいまいか。
首相交代は政策見直しの好機でもある。辺野古移設をいったん白紙に戻して解決策を探るべきだ。
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