2019年に産業用に発売された四足歩行ロボット「Spot(スポット)」は、ゴールデンレトリバーほどの大きさだ。建設現場の点検や発電所の巡回など、車輪で走るロボットでは行けない場所での作業をこなす。
その後、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生し、Spotは新たな技能をいくつか習得した。
この6カ月、Spotはシンガポールでは隔離された患者に食べ物を届け、日本では野球の試合でファンの人たちの代わりにダンスを踊った。シンガポールではまた、社会的距離を保つよう取り締まっていた係員がマスクをしていない男に刺された事件を受け、ビシャン・アンモキオ公園内の「安全距離確保大使」として、Spotが試験的に導入された。安全な距離にいる人間がこのロボットを使って人々を観察し、事前に録音された「シンガポールの健康を保ちましょう」という音声を再生し、注意を呼びかけたのだ。
一方、米国ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院では、iPadを備えたSpotが“着任”し、スタッフは患者予備軍の診察を遠隔で行えるようになった。ほかにも種々のセンサーが取り付けられた他のSpotのおかげで、医師や看護師は患者と同じ部屋にいなくても、体温や呼吸を測り、さらには血中酸素濃度の監視もできるようになった。
これらすべての実験は、「危険な仕事から人間を解放する」よう設計された機械にとって当然の変化だったと、Spotを開発した米ボストン・ダイナミクス社の事業開発担当副社長、マイケル・ペリー氏は言う。新型コロナ禍の今、「危険な仕事」には、人と人が接触するあらゆる活動が含まれる。
雑用を肩代わりするロボットの需要は、世界中で急増している。研究者団体Robotics for Infectious Diseases(感染症のためのロボット工学)によると、7月上旬の時点で、あらゆる種類のロボットが、少なくとも33カ国でパンデミックとの闘いに直接関わっている。新型コロナの影響で、ロボットは、日常生活の様々な面に入り込みつつある。これまでは、めったにあるいはまったく、ロボットが見られなかった分野だ。
パンデミックは、いつか収まるだろう。だがおそらく、ロボットはその後も使われ続けることになる。
「非常に多くの用途で幅広くロボットが使われているのを目の当たりにして、今こそ我々が躍進を遂げる時だと思いました」と「災害ロボット工学」の第一人者で、Robotics for Infectious Diseasesの議長を務めるテキサスA&M大学のロビン・R・マーフィー氏は話す。
「食べ物を届けるのにロボットを使うなんて馬鹿げていると言っていた人たちが、今では食料品を手に入れるのにロボットを介しています。小規模企業が、ロボットを利用しているのです。これまでにはなかったことで、ロボットが普及しつつあると言えます」
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