「あんたの息子はショック受けるんじゃない?」
「何をだよ」
「私とジンがこういう関係だって知ったら」
「あー…」
ビジネスホテルのシングルベッドに二人。転がったコンドームが3つ。目が覚めたらこうなっていた。
完全に酒にやられた。今となっちゃ言い訳にしかならないが…。
全開のカーテン。窓から差し込む朝日が眩しい。夢子は全身素っ裸のまま、気にする様子もなくあぐらをかいて座っている。
「その……悪い」
「え?いや謝んないでよ、私だってなんの記憶もないし。もしかしたら私が誘ったかもしれないじゃん」
「お前意外と肉食なのな」
「もしかしたらだって!」
夢子は近くにあった枕をオレに向かって投げつける。豪速球ならず豪速枕を顔面に受けたオレはベッドに倒れこんだ。
「いって…」
「これでゴンに妹か弟でもデキたら爆笑なんだけど」
「おまっ…笑い事じゃねぇよ」
恐ろしいことを言い出す夢子に若干焦りつつも転がったコンドームに目線が行く。そうだ、多分酒にやられてても避妊はしてる。
「案外現実的でしょ、記憶ないんだからちゃんとゴム全部使ったかもわからないしね」
「…そりゃそうだが」
確かに…ここにあるゴムだけでは証拠にならない。転がってるのは3つだが、使わずにもっとヤった可能性もある。サァー…と血の気が引いて青ざめるオレに夢子が「冗談だよ」と笑うが、案外冗談じゃ済まない気がしてきた。
「シャワーでも浴びてくれば」
「え?あ、あぁ…」
「それとも一緒に入る?」
そんなことを言って夢子がオレの体にすり寄って、胸板に手をおく。妖艶なその姿に一瞬欲情しかけるが我に帰る。
「やっぱお前が誘ったんだろ!!」
「冗談だわバーカ!一人で入ってこい!!」
「いって!この肉食獣が」
再び飛んできた枕にわざと当たってやりながらも、床に転がるバスローブを持って風呂場に行く。
「やっぱ私が誘ったかもね…」
夢子がそう呟いていたことなんて知らずに。