挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~ 作者:ハム男

第3章 学園都市編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
130/287

第128話 サイコ

「食事中はマリアを好きにさせたほうがいいんじゃないのか?」


「いいですの。マリアも私の膝の上がいいですわよね」


『はいデス…』


(完全に飼われているな。猫を飼ったことはないが、猫かわいがりしている飼い主と、自由を求める猫の関係だな)


 他人事のようにアレンは見ている。


 キールの妹ニーナは、拠点に暮すようになってからずっと霊Cの召喚獣と一緒にいる。寂しい思いをしたのか、それとも、とても気に入っているのか、寝る時も一緒だ。


 今も朝食中なのだが、食事中も膝に霊Cの召喚獣を乗せているので、キールが注意したところだ。


 キールと、その使用人が住むようになって5日が過ぎた。まだ、多少ぎくしゃくしているが、ずいぶん慣れてきたかもしれない。


 現在C級ダンジョンを3箇所毎日周回している。最下層ボスの討伐報酬である宝箱のおかげで大体1日金貨3枚ほど稼いでいる。うち6分の1が、食事代や使用人の給金などの拠点管理運営費だから、1日銀貨50枚になる。


 結構ギリギリだったりする。

 しかし、アレンは一切気にしていない。まもなく金銭的な問題は解決するだろうと考えている。


「さあ、準備してくれ。今日からB級ダンジョンの攻略に出掛けるぞ」


 そう、B級ダンジョンの攻略が始まるからだ。


「「「おう!」」」


 アレンの一言で、食事を終えた皆が返事をする。拠点を出るときに、不安そうに見つめるニーナの頭をキールがポンポン叩く。ダンジョンに出掛ける時に行う恒例行事だ。


 B級ダンジョンは拠点の近くに2つある。


 B級ダンジョン内で出てくる魔獣の構成には特徴があって、虫系だの死霊系だのあるが、今回攻めるのは獣系だ。獣系の攻撃は読みやすく、毒などの状態異常が罠と宝箱だけなので攻めやすいのが理由だったりする。


 歩いてほどなくするとB級ダンジョンの建物が見えてくる。並んでいる冒険者もC級ダンジョンに比べて強そうだ。


 冒険者の8割はC級ダンジョンを攻略するという。


 B級ダンジョンは2割程度だ。B級ダンジョンは罠などで事故ったら死ぬ。そして、B級ダンジョンの最下層ボスであるBランクの魔獣を倒せなければ意味がない。


 才能無しでは、B級ダンジョンの最下層ボスは決して倒せないそうだ。才能有りを中心としたパーティーで攻めるという。


 ここに才能の有無によって越えられない壁がある。


 なお、A級ダンジョンには5~10組のパーティーが参戦していると冒険者ギルドで聞いた。


 B級ダンジョンの建物に入る際、若く、しかも5人の構成は珍しいようで、大丈夫か? と受付の職員に言われたが、問題ないですとCランクの冒険者証を見せて建物内に入って行く。


『いらっしゃいませ。ダンジョン総合システムB304です』


 C級ダンジョンと同じように、部屋に入るとキューブ状の物体が浮いている。

 ここでも罠などの注意点の説明を受ける。かなりの死者がでているための注意措置なのかと思い、念のため最後まで聞く。

 昨日調べた情報以上のことはなさそうなのでダンジョンに飛ばしてもらう。


「雰囲気はC級ダンジョンと変わらねえな」


 斧を肩に担いだドゴラがあたりを見回す。石畳を敷き詰めた、石造りのダンジョンだ。何が明るくしているのか分からないが、全く暗くない。



「ああ、だが、罠もあるからな。慎重に移動しよう」


 皆には念のために解毒剤を渡してある。前もって飲めば1日効果があるという。銀貨3枚したのでそんなに安くはない。


 鳥Eの召喚獣を先行させて道を探し始める。共有で道を探りながら、以前冒険者ギルドで受けた説明を思い返す。


一般的なB級ダンジョンについて

・B級ダンジョンは10層から12層

・B級ダンジョン1階層の移動時間は12時間程度

・ダンジョン上層はDランクの魔獣、下層に行くにつれCランクの魔獣が出る

・最下層ボスはBランクの魔獣


(えっと、ここは12階まであるダンジョンだっけか。最短移動時間は12時間ってことは、時速5キロメートルで歩いたとして、11階まで660キロメートルの距離があるのか。1か月以内に攻略したいな)


 どれくらいで攻略できるか整理する。今回は道が分からず、またミミックも狩る予定だ。Cランク召喚獣の性能など検証したいこともいくつかある。


「道が大体分かった。じゃあ、出てこい。フラン達」


『『『キュウウウウイ!!!』』』


 特技「駆け抜ける」を使わず進み始める。Dランクの魔獣しか出てこないが、罠の対処などもあるので、最初から飛ばして進んだりはしない。



 そして、お昼になる。

 時計の魔導具は金貨50枚もするが、もう少ししたら買う予定だ。

 今は、なんとなくの時間で判断する。さすがに毎週ダンジョンに行けば、腹の減り具合で大体分かる。

 それでも時速50キロメートルという速さで進むので、朝の8時頃にダンジョンに入って昼前には2階層先まで進んだ。


「あまり宝箱とか見ないわね」


 セシルがパンを食べながら、話をする。セシルお嬢様もこの2ヵ月で外での食事にずいぶん慣れた。


「まあ、何だかんだ言っても、ダンジョン攻略を優先しているからかな。この感じだと各階層にそんなに宝箱は多くないかな」


 最短距離で60キロメートルはある各階層に宝箱は数個ずつしかないと予想する。最短ルート上に宝箱が無ければ発見できそうにない。

 C級ダンジョンの宝箱は無視してきたが、やはり何度も見かけた記憶はない。


 そして、午後も1階層攻略して4階層目にしてとうとう見つかる。


「おお! 宝箱だ!!」


 小部屋の奥にある宝箱を見て、キールが叫ぶ。前のめりになるキールを皆が制止する。一応毒の対策はしているのだが、ミミックかもしれない。


「さて、じゃあマリアちょっと開けてきてくれ」


『はいデス!』


 霊Cの召喚獣がフワフワと宝箱の元に向かう。

 罠解除ができるものがいないアレン達パーティーは、召喚獣に宝箱の罠チェックをしてもらう作戦だ。


 アレンの召喚獣には手足があるものは他にもいる。石DやCの召喚獣にだって手足がある。しかし言葉が話せない。それに、霊Cの召喚獣は壁通過ができるので、宝箱を開封しなくても中が分かる。罠だったら開封せずに済むのではということだ。


 皆がドキドキしながら、宝箱に向かう霊Cの召喚獣を見ている。キールが回復魔法を掛けられるよう待機している。キールの回復魔法は当然召喚獣にも有効だ。

 また、召喚獣は市販の回復薬でも体力が回復する。


 キールもレベル30にまで成長した分、アレンが持っている命の草などを使う機会はずいぶん減った。

 減ったというより、ここまでは出現する魔獣のランクが最高でCでしかなく、アレンが魔石を消耗して仲間の体力を回復することは、キールが来てからすっかり無くなった。


 【名 前】 キール

 【年 齢】 12

 【職 業】 僧侶

 【レベル】 30

 【体 力】 397

 【魔 力】 749

 【攻撃力】 298

 【耐久力】 421

 【素早さ】 479

 【知 力】 661

 【幸 運】 603

 【スキル】 僧侶〈2〉、回復〈2〉、堅固〈2〉、剣術〈3〉

 【エクストラ】 神の雫

 【経験値】 26,550/30,000


・スキルレベル

 【僧 侶】 2

 【回 復】 2

 【堅 固】 2

・スキル経験値

 【回 復】 28/100 

 【堅 固】 15/100


(スキルも順調に育っているな。たしか、教会に行って祈りを捧げて回復魔法を覚えるんだっけ)


 キールは仲間にした時僧侶レベルも回復レベルも1だった。セシルと同じくレベルが10を超えたところで僧侶レベルが2になった。


 回復魔法も攻撃魔法もレベルキャップがあるようだ。


 そして教会に行き、祈りを捧げ堅固スキルを手に入れた。なお、通常ならお布施が必要なのだが、教会も学園をバックアップしており、学生のスキル獲得のための祈りについては無料となっている。


 なお、回復スキルの回復量は知力依存だという。検証はできていないが、キールが午後の授業で習った。なぜ検証できないかというと、誰もそこまでダメージを受けないからだ。


 アレンがそんなことを考えている間に霊Cの召喚獣が宝箱に到達する。アレンも共有した霊Cの召喚獣によりまじまじと宝箱を見る。


 なんの変哲もない木箱だ。これが以下の3つのうちどれかになる。


 1 宝箱

 2 罠

 3 ミミック


 見分け方であるが、宝箱の中を開封せずに見てみようと思う。霊Cの召喚獣は物質をすり抜けることができる。ダンジョンの壁がただの物質かどうかわからないが普通にすり抜けることが出来た。


 中が宝箱なら開けたらよい。罠ならそのまま放置だ。そしてミミックならどうなるのか。


 霊Cの召喚獣が木箱に手と顔を埋めていく。


『ガルルル!』


 少し顔を突っ込んだところで突然、宝箱の口がガバッと開く。縁にはのこぎりのような大きな歯が無数に並んでいる。


「ミミックだ!!」


『ふぁ! し、死ぬデスよ!! サイコ!!!』


 いきなり、宝箱が襲い掛かってきて驚く。霊Cの召喚獣の手から灰色の丸いバレーボール大の球体が発生し、ミミックに向かってすごい勢いで向かっていく。


『!? ガルアア!!』


『死ぬデス! 死ぬデス!』


 ミミックが霊Cの特技「サイコ」を食らう度に吹き飛ばされる。一切容赦なく霊Cの召喚獣は撃ちまくる。壁際まで吹き飛ばしても攻撃は止まず、とうとうミミックは動かなくなった。どうやら死んでしまったようだ。


『ミミックを1体倒しました。経験値20000を取得しました』


(ふむふむ、強化したマリアなら魔力を半分使ったくらいでBランクの魔獣を倒してしまえるのか)


 霊Cの召喚獣の強さを考察する。霊Cの召喚獣の魔力は6時間あれば満タンに回復する。


「おいおい、まじかよ。ミミックってBランクの魔獣だったよな」


 ドゴラが驚愕している。そんな中、ミミックはBランクの魔石とミスリルの槍に変わったのだ。ミミックは倒すとたまにアイテムを落とすというのは本当だったようだ。


「わあ! 槍が出た!!」


 クレナが鳥Cの召喚獣から降りて槍と魔石を拾う。この槍なら金貨50枚くらいで売れそうだ。


 こうして、B級ダンジョンの攻略が進んでいくのであった。






  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。
書籍版「ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する」
  著者:ハム男
レーベル:アース・スターノベル
 発売日:2020年7月15日
ISBN:978-4803014334

ヘルモード特設サイト

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。