意欲作過ぎる・・・伝説の漫画『YAWARA!』の裏で行った実験とは

漫画界のヒットメーカーとして知られる浦沢直樹。90年代を代表し、浦沢直樹の最大のヒット作『YAWARA!』は、今の作風からは考えられない『実験作』だった。

更新日: 2016年11月12日

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実験①作品内容は、当時マイナーだった柔道を題材

編集担当者との打ち合わせも行き詰まってきたときに,スポーツもので誰も手がけていないテーマとして,急に思いついたのが「女子柔道」だった

球技を題材とした作品が多い中、柔道をテーマとするのはさすがです。

結果①作品が大ヒットし空前の柔道ブームに

連載され当時まだ女子柔道は競技として認知されておらずこの漫画によって女子柔道ブームが起こった

漫画のヒットにより、それまで柔道をする女性を「女三四郎」と呼んでいたが「YAWARA!」のヒット以降「やわらちゃんが」定着した。

作品の連載された80年代は「男女雇用機会均等法」が制定され、女性の社会進出が叫ばれた時代でもありました。
男性的なスポーツと思われていた柔道を題材にし、華奢な子が柔道で男子顔負けに活躍する。そういった時代背景が見える設定もヒットの要因かもしれません。

有名選手のニックネームにも

田村亮子が柔道で快進撃を続けてきたときと、アニメ放送の時期は重なっていたと思う。そのうち、ニュースで「ヤワラちゃんこと柔道の田村亮子選手が…」と呼ばれるようになった

谷亮子(連載当時は田村亮子)の愛称の元

出典ameblo.jp

シドニー五輪、アテネ五輪の金メダリスト。
「YAWARA!」の主人公である猪熊柔と同じ48Kg級ということもあり、マスコミはこの愛称を付けた。

実験②スポーツ漫画=スポ根という常識を破壊

弱小チームが甲子園を目指したり、才に劣る(ハンディを背負った)主人公が必死の努力で、天才に立ち向かうのが典型的ないわゆる「スポ根」であった。

出典YAWARA!

巨人の星やあしたのジョーも典型的な「スポ根」漫画でした。

結果②全く新たなスポーツ漫画の主人公像を確立。

「YAWARA!」では主人公が努力をしない

「YAWARA!」が凡百のスポーツ漫画と一線を画した理由は、「主人公が柔道がキライ」というトンデモナイ設定

「あしたのジョー」や「巨人の星」の様なスポーツ漫画にしないのが浦澤の真骨頂。

普通の女の子になりたいのに、柔道が強すぎて困る
主人公の猪熊柔が新鮮で、チャーミング

作中、猪熊柔は柔道で負けたことはありません。(不戦敗を抜かす)
スポーツ漫画にありがちな競技への挫折がないのです。あるのは、葛藤、葛藤・・・
等身大の猪熊柔は身近な存在だった。

天才的な柔道少女であるが主人公の猪熊柔。
今までのスポーツ漫画で男性作家が女性を主人公にしたスポーツ漫画は異例だろう。

圧倒的な柔道の腕前があるのに、柔は「普通の女の子」として暮らしたいという柔が、高校、短大、社会人と年月を重ねるごとに柔道に対する思いが変わっていくのが作品の魅力。

実験③主人公より個性的すぎる家族、ライバルたち。

基本的に主人公以外のキャラが非常に個性的であり、愛すべき設定で誰が欠けてもいけない世界観は素晴らしい。

柔の祖父。
全日本柔道選手権大会5連覇の偉業を成し遂げた伝説の柔道家。孫の柔に稽古をつけ「オリンピック金メダル」と「国民栄誉賞」を取らせるために奮闘する。
自信家であり、大食漢、頑固者である。
著書「柔の道は一日にしてならずぢゃ」は劇中世界のバイブルとして柔道家に読まれている。
「ぢゃ」が口癖。

本阿弥財閥のお嬢様。テニス、乗馬、水泳など数多くのスポーツでトップを取った天才アスリート。偶然、柔と出会った事から柔道の道に。
他のスポーツでは天才であった彼女も、柔との勝負のため努力を続ける。
コーチである風祭と柔と恋のライバルでもあった。

勝つためなら手段を選ばない冷徹な選手。
ジョディにけがを負わせ、激昂した柔と激突する。

柔の親友。柔がはじめて柔道で「つよい」と思った相手。柔と出会い、以後ライバルとして共に成長。

三葉女子短大に進学し、柔と知り合う。幼少からバレエを習っていたが、背が高くなりすぎて断念。柔を通じ、自らも柔道をすることに。
天才肌のYAWARA!と違い、努力型タイプのいわゆる「スポ根」ヒロインタイプである。
劇中で、柔の高校の同級生、花園薫と結婚。

結果③サブ役を主人公にした作品を出すほど人気に。

YAWARA!」の作品の中で絶大な人気を誇る猪熊滋悟郎。普通の女の子に憧れる柔を柔道に強引に向かわせるその性格、柔とのやり取りはオモシロすぎます。
なんと、主人公になった漫画も出てます。

実験④作者の作風からは、ありえないラブコメ要素が満載!