正社員前提「紹介予定派遣」の雇用拒否、任天堂を提訴へ…地位確認求め保健師2人
正社員採用につながる「紹介予定派遣」だったのに、産業医と協力関係を築けなかったことを理由に直接雇用を拒否されたのは不当として、「任天堂」(京都市)の派遣社員だった保健師の女性2人(20、30歳代)が同社側に社員としての地位確認などを求め、近く京都地裁に提訴する。
原告弁護団によると、紹介予定派遣の雇用拒否を巡る訴訟は全国初。
訴状によると、2人は2回の面接後、半年間の派遣が決まり、2018年4月から人事部で勤務。社員の健康指導などを担当したが、同9月、人事担当との面談で「産業医と協力体制を構築できなかった」として直接雇用を拒否され、派遣契約を打ち切られた。
原告側は、業務連絡のささいな行き違いをきっかけに2人が産業医から無視されるようになったほか、カルテ整理以外の仕事を与えられなかったり、ミーティングに参加させてもらえなかったりするパワーハラスメントを受けたと主張。「産業医との関係は雇用拒否の理由にあたらない」としている。
さらに「派遣会社抜きで任天堂だけが面接しており、派遣制度を逸脱した実質的な採用行為」として、直接雇用するよう訴えている。
任天堂はこれまでの話し合いで、パワハラを否定する一方、解決金50万円の支払いを提案したが、2人は応じなかった。同社は「現時点でコメントすることはない」としている。
紹介予定派遣について、「正社員採用前提」と説明する求人情報サイトも少なくないが、厚生労働省によると、2018年度に同制度で派遣された約3万7000人のうち、実際に雇用されたのは約1万9000人。原告弁護団長の岩城
◆紹介予定派遣=派遣労働者として派遣先の企業で最長6か月働き、本人と派遣先企業が合意すると、直接雇用される労働者派遣法の制度。企業と労働者が互いを見極める「お試し期間」との触れ込みで2000年に導入された。通常の派遣と異なり、派遣先は派遣会社と一緒に労働者を面接するなどして選考できる。