登録日:2016/06/22 Wed 01:07:31
更新日:2020/07/01 Wed 17:46:25
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「僕は耳と目を閉じ口を噤んだ人間になろうと考えたんだ」
『笑い男事件』とは、TVアニメ『
攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』にて登場する事件。
第一シリーズの主軸となっている事件で、本編では単発エピソードを挟みつつ、一連の謎を追いかけていく構成になっている。
(「笑い男」関係のお話ではタイトルバックが青色、それ以外では緑色で描かれる)
作中世界では「脅迫を受けた会社の数だけで言えば、戦後最大といえる規模の企業テロ」と呼ばれるほど、有名な事件となっている。
(ここで言う「戦後」とは、攻殻機動隊シリーズの歴史で起きた『第四次非核大戦』のこと)
第一次笑い男事件
◆アーネスト・瀬良野氏の誘拐
本編の6年前である2024年、当時マイクロマシン新興メーカーだった「セラノ・ゲノミクス」社長、アーネスト・瀬良野氏が何者かに誘拐されたことから事件は始まる。
瀬良野氏本人が電脳をハックされ自宅から誘拐された直後、犯人は現金100億円と金塊100キロという莫大な身代金を要求。
しかしその後は何の音沙汰もなく、ふっつりと連絡が途絶えてしまう。
事件発生以前から、瀬良野氏の身辺では電脳をハックされた人物の口を使った犯行予告が何度か起こっており、誘拐そのものは瀬良野氏が状況を甘く見ていたため起こったものとされていた。
事件には報道管制が敷かれ、公開捜査に踏み切れなかったことから捜査は難航。瀬良野氏と犯人の行方はようとして知れなかった。
そして捜査当局が一片の手掛かりすらも掴めずにいた矢先、事件は予想だにしなかった展開を見せ始める。
◆犯人と笑い男マークの登場
誘拐発生から2日後、とある朝のニュース番組にて事件は起きた。
朝の街頭生中継リポートが行われる中、それまで行方が知れなかった瀬良野氏を、帽子とジャケットで顔を隠した男が追い立ててきたのだ。
犯人と思われる男は、そのまま瀬良野氏に拳銃を突きつけ、TVカメラの前で何かの告白をするよう脅迫をする。
???「だったら今、あのカメラの前で真実を語ってください!」
瀬良野「やめろ! 君には撃てんよ」
???「どうかな!」
(瀬良野に蹴りを入れて跪かせ、銃を向ける犯人)
瀬良野「あぐっ!」
???「さっきの約束が本当なら、ここで!」
瀬良野「今は無理だ! いっそ君が喋ったらどうかね?」
???「それじゃあ意味が無いんです! 瀬良野さん、貴方の口から真実を語らないと!」
瀬良野「それは、出来ん!」
???「何故ですか!?」
そして生中継の只中に乱入して瀬良野氏を脅迫したこの男は、カメラの映像は勿論の事、テレビ局のスタッフや近くに居合わせた通行人全ての電脳にハッキングをかけ、
目撃者の目に写る自身の顔に、笑った顔のマークを上書きしたのである。
結局瀬良野氏が口を割ることはなく、現場に急行した警察官を見た男は、瀬良野氏をその場に残して逃走。
その際にも犯人の姿を監視カメラや大勢の人間が目撃していたにも関わらず、男の顔は全て上書きされており、顔を見る事が出来たのは電脳化をしていなかった浮浪者2名のみ。
しかも電脳の認識部分にまでハッキングしていたため、男の顔を見ていた人間は全員それを「普通の人間の顔」と思い込んでおり、誰も顔がマークになっていることに疑問を覚えないという状態だった。
事実、男の顔を見たと証言していた殆どの人間が、モンタージュ作成の際に似顔絵としてこのマークを描いてしまうという有様で、有力な目撃情報は得られなかった。
こうして犯人と思われる男は高いハッキングスキルを用い、公衆の面前からの逃走に成功。
その後、この逸話は事件と犯人のハッカーとしての腕を語る上で外せないエピソードとなる。
この特異なマークから、いつしか犯人は世間で「笑い男」と呼ばれることとなる。
◆続く連続企業脅迫事件
衝撃的な初登場ではあったが、笑い男はその後、公の場に姿を現す事を避けるようになる。
笑い男は、セラノ・ゲノミクス社のマイクロマシン(MM)製造ラインにウイルスプログラムを混入するという手口で、セラノ社を引き続き脅迫。
使用者が死に至るウイルスをかまされ、主力商品である医療用MMの製造販売が滞ったことで、セラノ株は暴落。経営に支障が出始める。
すると笑い男はその事自体が目的であったかの様にセラノ社への脅迫を止め、今度は同様の手口で他のMMメーカーを次々と脅迫するという犯行に出る。
事件は、脅迫行為その物が目的なのか、と思わせるような新展開を見せ始めることとなった。
笑い男によって脅迫されたメーカーは同じように主力商品の生産が滞り、株価は暴落、甚大な損害を出した。
最終的に脅迫の被害にあったメーカーは、セラノ・ゲノミクスを含め全部で6社。いずれもMMを取り扱う企業だった。
脅迫の手口のほかに、笑い男マークを使った犯行予告がなされたため、これらは笑い男の犯行であるとされた。
- 本社ビルの管理システムをハッキングし、窓の明かりでドット絵風に笑い男マークを描く(ジャパン・マイクロ・インダストリー)
- ターゲットの企業本社の屋上に笑い男マークに事務机を並べる(佐川電子)
- TV番組の出演者をハッキングし予告。その際に笑い男マークで顔を塗りつぶす(ナノプラント社、薩摩メディテックス)
- 会社社長宅の庭師ロボットをハッキングし笑い男マークを描く(マイテル社)
◆終息
この脅迫事件は約3ヶ月続き、事態を重く見た政府は、脅迫を受けたメーカーに公的資金を導入することを決定。
すると、これがきっかけとなったのか笑い男は犯行の終了を宣言。
その後は一切現れなくなり、一連の事件は一応の終息を見ることとなった。
その後も笑い男事件に関する捜査は続けられたものの、犯人の特定にはいたらず、第二次笑い男事件まで大きな進展を見せることなかった。
笑い男ブーム
誘拐された被害者とその犯人が生放送中に姿を現すというあまりに衝撃的な事件は波紋を呼ぶこととなり、
その後に続くメディアを使った企業脅迫や犯人である笑い男の目的が不明であった為、世間では笑い男に対する注目が集まることとなった。
いわゆる劇場型犯罪ということもあって、笑い男の正体やその目的に対しての考察や論争が高まり、笑い男事件はある種の一大ムーヴメントを巻き起こすこととなる。
特A級のハッキングテクニックを持っているにも関わらず、最初は自らの肉体を敢えて危険に晒すという無謀とも取れるパフォーマンスは、若者の間で共感を呼び、
中には「彼は搾取型企業の疑惑を暴こうとした英雄」と讃える者も現れるなど、ネットの中では多数の笑い男マニアが誕生。
犯行に使われた、衝撃的な事件内容とはアンバランスなポップな笑い男マークは、若者やサブカル系評論家の間で人気を呼ぶこととなった。
笑い男マークはバンドのライブのロゴや映画の一場面、果てはグッズも売り出されることとなり、この事件によってもたらされた経済効果は約20兆円とも言われている。
この時マークを考え「笑い男」にこれを盗まれたとされたデザイナーがいたのだが、その後結果的に彼はデザイナーとして注目されるようになった。
これにより、犯人である笑い男の正体や目的に関しては数々の説が登場。
そもそも笑い男が単独犯なのか複数犯なのか、便乗犯の可能性はなかったのかという点から既に意見が割れており、目的に関しても
- 電脳化や義体化技術を推し進める多国籍企業に敵対する過激派による犯行
- 企業間競争から生じた陰謀
- 純粋な金目当ての恐喝
- 搾取型企業の欺瞞を暴くための英雄的特攻
- 企業の株価操作を目的としたパフォーマンス
- セラノ社と笑い男の共謀による公的資金導入まで見越した企業アピール
など、数多くの説が取りざたされ論争も絶えず行われた。
笑い男そのものが事件から姿を消してしまった為、主流となる有力な説は出ることはなく、論争は続くこととなった。
捜査を行っている警察上層部でも犯人に対する見解が割れており、笑い男に関する意見で唯一つ一致しているのは、犯人が特A級のハッカーであるという事のみだった。
第二次笑い男事件
◆笑い男事件捜査本部の「インターセプター」不正使用疑惑
ここからテレビシリーズ本編。事件の発生から6年。
笑い男事件捜査本部で、インターセプターの不正使用疑惑がマスコミの間で浮かび上がる。
「インターセプター」とは視聴覚素子デバイスのことで、仕掛けられた人が眼で観たものを、そのまま第三者が盗み見るために使用するMMのこと。
当然使用には許可が必要なのだが、これが情報収集のために不正に捜査員の目に使用され、プライバシーの侵害が行われているとの疑惑が一部週刊誌やマスコミで取り上げられる。
このインターセプターを製造しているのが、笑い男事件の被害企業であるセラノ・ゲノミクス社であったため、
セラノ社と警察上層部との癒着や、笑い男事件に関して何か取引があったのではないかという噂も流れることとなった。
この疑惑を受けて、警察は警視庁において大堂警視総監自らによる記者会見という異例の形で対応。
会見にて、インターセプターの不正使用による知覚傍受法違反について事実であることを認め、これを行った刑事課長を懲戒免職処分にし上層部の責任問題は近日中に知らせるとの発表を行う。
会見場のマスコミからは、上層部の責任やセラノと上層部の癒着について質問が殺到。
さらに記者の一人が、大堂総監が引退後にセラノの親会社のあるオランダに移住することに関して、これをセラノ社にインターセプター導入の見返りに用意させたものではないかと指摘。
これに総監が冷静さに欠いた返答を行ったことで会見場のマスコミの質問はさらに過熱し、会見は大荒れの様相を呈し始めていた。
◆笑い男の再登場と警視総監暗殺予告
その時、総監の隣席に着いていた竹川刑事部長に異変が起きる。
竹川部長?「相変わらずですね、大堂総監。初めまして、ですけど、僕が誰だか分かりますよね?」
警察幹部「お、おい! どうしたんだ竹川!」
???「僕はね大堂さん、最早貴方達の世界に関わるべきではないと考えていたんですよ。
その掃き溜めの様な世界に付き合っていると、本当に嫌になっちゃうんだ。
だから、あんたらの茶番劇にだって、あれからずっと口出ししなかったでしょ?
全部解ってたのに。言ってみれば、大いなる無駄に疲れちゃったんです。残念ながら」
突如、刑事部長が立ち上がり、奇妙な発言を始めたことに会見場は騒然となる。
そしてTVモニターを始め、その場全ての人間の目にも、刑事部長の顔が笑い男マークに切り替わった。
???「でもね、今日のは酷いよ、酷過ぎる。こんな茶番なのに、ちっとも笑えませんよ。
だから極めて不本意だけど、僕はまた、貴方方に挑戦しなくちゃならない。
3日後、茶番劇団の卒業生達と同窓会をしますよね?
そこで今度こそ、本当の事を話して下さい。
…今度また嘘っぱちの演技をしたら、貴方をこの舞台から消去しなくちゃあならない」
そこで刑事部長は、大堂総監に拳銃で撃ち抜くジェスチャーを行い、昏倒。
その後、中継していたすべてのTV局の画面が笑い男マーク一色に塗りつぶされてしまう。
企業脅迫事件から実に6年。
最初の瀬良野氏誘拐と同じようなメディアを使ったパフォーマンス。
姿を消していた笑い男がメディアの前に再び姿を現し、今度は警視総監の暗殺を宣言するという新たな事件が起きた瞬間だった。
◆警視総監暗殺未遂事件と大量の笑い男の発生
警視庁内部での記者会見中に警視総監暗殺を宣言されるという前代未聞の事件。警察は厳戒態勢を持ってこれに対応することになる。
警察関係者の式典当日。式典の途中、警備を行うSPに分割型の遅行性ウィルスが笑い男によって蒔かれ、電脳汚染が発生。
その結果、SPの指揮官が何者かに操られ、大堂警視総監を襲撃するという事態が発生する。
これは周囲のSPと、警備に参加していた公安関係者2名が制圧。総監の身に怪我は無く、笑い男の犯行は阻止されたかに思えた。
が、SP指揮官の身柄を拘束し、他のSPが事後処理を行おうとしていた矢先、会場にさらなる混乱が起きる。
会場内のマスコミやヤジ馬にまぎれて潜伏していた、多数の笑い男の仲間と思われる者たちが出現し、次々と大堂警視総監への攻撃を強行するという事態が発生したのである。
茶髪男「我は笑い男ぉ! 総監のお命、頂戴!」
警官「大堂ぉ! 真実を語れえ! さもなくば死を!」
大男「消去するぅ!」
長髪男「大堂、覚悟ぉ!」
その内の一人の発砲によって、大堂総監は負傷。
その後も続く笑い男の仲間と思われる者たちの襲撃をかわし、SPは怪我をした総監を救急車で搬送。総監は搬送先にて入院することとなった。
まもなく、警察は会場にウィルスを送り込んだと思われる笑い男の自宅を特定、突入したものの、そこにいた男は既に射殺されていた。
会場を襲撃した笑い男の仲間と思われる者は、全員が拘束される。自分が笑い男だと名乗る者3名、笑い男に憧れて犯行に及んだ者2名、あの暗殺予告が自分に向けられて発せられた啓示であると言う者3名、その他式典会場周辺で不審な行動をとっていて逮捕された者、計39名にも及ぶ逮捕者を出すこととなった。
しかし、会見場に現れた笑い男の仲間と思われた者は、いずれも笑い男事件とは何の関係も繋がりもない、単なる模倣犯である事が判明。
しかも全員互いに示し合わせた訳でもなく、宗教的な繋がりもない完全なる赤の他人同士で、洗脳やハッキングの痕跡も見られなかった。
「笑い男の警視総監暗殺を仄めかす様な声明を見た」というだけで、赤の他人同士が一斉にテロを起こした……という事実は大きな謎として残されることとなった。
◆疑惑
負傷した大堂警視総監は、入院したまま任期を満了する事なく退職する。
警察は事件について、笑い男と目されていた容疑者「ナナオ・A」の組み上げたウィルスによる、同時多発電脳汚染が原因と発表。
容疑者のナナオは何者かに既に殺害されており、これにより笑い男事件は複数犯によるもので、犯行グループ内で何らかのトラブルにより殺されたとの見解を示し、
今回の犯行予告の目的は定かでは無いものの、本部は笑い男事件の捜査状況に新たな進展が見られたという事で、引き続き捜査を続行していく方針を固めた。
しかし、笑い男マニアの中には、この警察の発表に疑問を持つ者もいた。
- ナナオこそが、本物の笑い男だったのではないか
- ナナオも、事件当時大量発生した笑い男の模倣犯の一人で、本物の笑い男に殺されたのではないか
- 逮捕された大量のニセ笑い男の中に、本物の笑い男がいたのではないか
- そもそもこの事件そのものが警察の用意したシナリオで、インターセプター不正使用疑惑や進まない笑い男事件捜査に対しての世間の風当たりをそらすための茶番だったのではないか
などなど、またしても事件の真相に関して議論が交わされることとなった。
◆公安部の暴走
そんな折、警察の保護下にあったはずのセラノ・ゲノミクス社社長、アーネスト・瀬良野氏の誘拐未遂事件が発生する。
この事件に内務省直轄の武装組織「公安9課」のメンバーが関与していた疑いがマスコミで報道され、
「笑い男事件に政府内の陰謀が関わっているのではないか」との疑惑が取りざたされる。
更にその後、一部の急進的公安メンバーらによる武装蜂起計画が発覚し、政府はこれを未然に防ぐため自衛軍による武力行使によってこれを制圧。
計画の首謀者とされ国家反逆罪に問われた公安9課の構成員は、軍により拘束、逮捕、送検、略式裁判による迅速な結審をみることとなった。
◆進展
公安9課が壊滅してから3ヶ月後。
一部週刊誌においてセラノ・ゲノミクス社を巡る厚生疑獄事件の疑いが流れ、これにより笑い男事件当時の厚生労働大臣であり、現連合与党幹事長・薬島薫氏に疑惑が集中する。
さらに瀬良野氏の証言により、疑惑を裏付ける証拠が党本部内にある事が判明。
事態は検察による党本部への一斉捜査にまで発展する。
捜査の結果、薬島幹事長は逮捕され、笑い男事件による被害企業の株価の下落と公的資金導入による回復を見越して、莫大な利益を得ていたことが発覚する。
そのため笑い男事件とは「政治家による株価操作のためのプログラムだったのであり、その計画の秘匿のために様々な事件が発生したのではないか」との見方が強まることとなった。
事件の中心にいたアーネスト・瀬良野氏は、笑い男事件に関して法廷で証言をすることとなっており、そこでこの事件の真実が語られることに期待がかかっている。
以下、核心に至るネタバレのため注意
真相
かなり長くなるので最初に記してしまうと、世間で言う特A級のハッカー・笑い男の正体は「アオイ」という青年。
しかし彼の起こした事件は、瀬良野社長誘拐とTVカメラ前での脅迫・警視総監暗殺予告のみで、それ以外は「笑い男」を騙った別の人間たちの仕業だった。
◆電脳硬化症と村井ワクチンをめぐる陰謀
そもそもの事の起こりは、不治の病「電脳硬化症」の特効薬である「村井ワクチン」が薬として認可されなかったことが発端となっている。
電脳硬化症とは、電脳化を施した部位が次第に硬化し、最終的には脳死にまで至る病気で、発症する確率は極めて低いものの電脳化している者なら誰でも罹る可能性があり、
一度発症すれば根本的な治療法が見つかっていなかった事から「21世紀の不治の病」と言われていた。
この電脳硬化症に対する薬として、医学博士・村井千歳によって「村井ワクチン」という抗腫瘍抑制剤が開発される。
効果は覿面でまさしく不治の病に対する特効薬であったものの、その誕生は偶然の産物であり、何故効くのかは不明であった。
なぜ効果が出るのか。そのメカニズムが明確に解明されなければ、薬として認可はされない。
そのため村井ワクチンはその効果は認められたものの、当時の医師会の判断で薬としては不認可となってしまう。
しかし、この不認可になった件には裏があった。
当時の医師会はMM(マイクロマシン)治療法の推進派が多数を占めており、旧来のワクチン治療である村井ワクチンを容認することでMM治療の開発・発展に影響が出るとの懸念があったのである。
さらにMM治療推進派で厚生労働省中央薬事審議会理事だった今来栖尚(いまくるす ひさし)の、不治の病を治す功績を村井に先を越された事に対する嫉妬心も重なることとなった。
本来、薬事審議会は厚生省の窓口を通った新薬に認可の判を押すだけの部署で実質機能していないも同然であり、判も「認可」のものしかなかったのだが、
今来栖は村井ワクチンを潰す為、わざわざ新しく「不認可」の判を作ってまで妨害を行っており、村井ワクチンはこれらの醜い足の引っ張り合いで潰されたようなものだったのである。
その代わりに、薬事審議会はセラノ・ゲノミクス社のMM治療法を認可する。
これは当時、村井ワクチン潰しのためにMM療法の優位性をアピールする為の代わりが必要だったためで、たまたまその時申請が出されていたセラノ・ゲノミクス社のMMを認可したというのが実情だった。当時のMMは理論上のアイディアだけのものであり、治療効果そのものは殆どない状態だった。
(セラノ社の名誉の為に付け加えると、セラノ社自体はMM療法開発の一環として「アイディアにとりあえず特許の申請をかけておく」というごく普通の営業戦略をとっただけで、癒着などがあったわけではない)
その後、今来栖が理事を務めるマイクロマシンインダストリアル社のMMも、治療効果が殆どないにも関わらず認可され、同社はこれによって年間1兆円程の利益を上げている。
これにより、本来効果のある村井ワクチンは届けられず、当時は何の効果もないMM療法が電脳硬化症患者に提供されるようになってしまう。
ちなみに、セラノ社のMMは申請より3ヶ月、MMインダストリアル社は1ヶ月と、どちらも“異例の早さ”で認可を受けている。
ワクチン療法を最後まで夢見た村井博士は、2021年2月、薬事審議会の裁定を見届ける事なく68歳で無念の死を遂げた。
ところが、2021年4月、一度は不認可とされた村井ワクチンは急遽、特定指定者有償治験薬として認可される事になる。
この認可は一般的には発表されておらず、村井ワクチンを使用している患者も表向き存在しない事になっている。
上流階層に不治の病である電脳硬化症に対する特別な治療を提供することで、この件に関わった人間は更なる利益を上げることとなった。
……更に言うと、村井ワクチンを潰した今来栖は、その後自身も電脳硬化症にかかり、その際MM療法ではなく村井ワクチンによる治療を受けている。
この一連の村井ワクチンとMM治療法認可の影で暗躍していたのが、当時の厚生労働大臣である薬島薫。
彼は今来栖とも親密な関係であり、このためこれらの認可の裏には、厚生省トップの薬島の圧力が関係していたと思われる。
これらのワクチンをめぐる陰謀に気が付く者もおり、2021年にアーネスト・瀬良野氏は、MM治療法の無効性と村井ワクチンの事をネタにした脅迫メールを受けている。
この時の脅迫メール自体は大きな影響を及ぼすことなく終わり、メールは無意味な情報として膨大なネットの海に消えるはずだった。
ところが、このメールをネットを巡っていたハッカーの青年・アオイが偶然拾ったことで、事態は大きな変化を起こすこととなる。
【20話 消された薬 RE-VIEW】
【21話 置き去りの軌跡 ERASER】
【26話 公安9課、再び STAND ALONE COMPLEX】
◆「アオイ」による瀬良野氏の誘拐
メールによってアオイは電脳硬化症の特効薬である村井ワクチンの不認可とMM療法認可の裏側を知り、これらの国家的詐欺とも言える出来事を知ることとなる。
これに大きな怒りを覚えたアオイは、事の真相を白日の下に晒すことを決意。
そのためにこれらの事実を把握しているであろう瀬良野氏の電脳をハッキングし誘拐、MM療法の真実を公表するよう迫る事件を起こす。
これがアーネスト・瀬良野氏誘拐事件の真相。つまり一部マニアで言われていたとおり、本当に世の中の欺瞞を暴くための行動だったのである。
何度かの犯行予告にも拘らずまともに取り合わなかった瀬良野氏に対し、アオイは誘拐という実力行使を決行。
2日間にわたり瀬良野氏とMM療法の不正に関する激論を交わし、事実の公表をするように説得する。
結果、瀬良野氏はアオイの脳潜入に疲れきっていたこともあり、その場を逃れたい一心で自社のMM療法の現状を発表することを約束する。
しかしTVカメラの近くで解放された段になって、瀬良野氏は約束を反故。
それに激高したアオイは、手にしていた銃で瀬良野氏を脅迫し、TVカメラの前で真実を語るように要求する。
アオイ「だったら今、あのカメラの前で真実を語ってください!」
瀬良野「やめろ! 君には撃てんよ」
アオイ「どうかな!」
しかし脅迫は失敗に終わり、アオイは周囲をハッキングし自身の顔を笑い男マークに改竄し、その場から逃亡する。
世間からアオイが「笑い男」と呼ばれるようになった瞬間だった(アオイ自身は自分のことを一度も「笑い男」とは名乗ってはいない)。
【23話 善悪の彼岸 EQUINOXL】
◆「笑い男」による企業脅迫
アオイから解放された瀬良野氏は、自分の失踪が世間を騒がす重大な誘拐事件に発展していた事を、面会に来た専務から聞かされることとなった。
そこで初めて、現金100億と金塊100kgという要求が犯人からあった事を知る。
アオイの若者らしい青い正義感を見ていた瀬良野氏は、この要求はアオイのものではないと考えたが、
警察は身代金目的の誘拐犯だと断定し、「心当たり」は無いかと執拗に尋問を繰り返した。
瀬良野氏は尋問されるうちに、この要求の本当の意味は「何者かによるセラノ社のMM治療技術の秘密を人質に取った身代金要求」だということに思い当る。
しかし自社の秘密を守るため、専務と共に一切思い当たる節が無いと言い張る事に決める。
ちなみに、実際ここで身代金を要求していたのはアオイではない。
そして笑い男は、セラノ・ゲノミクス社に対して製造ラインに殺人ウィルスを混入させるという手口で次の企業脅迫をスタート。
さらに、他のマイクロマシン製造会社にも同様の手口で脅迫を続けていった。
これにより脅迫された企業は破綻寸前まで追い込まれ、それはセラノ社も同様だった。
その後、政府からは被害企業に公的資金が導入され、そして暴落していた株価が徐々に戻り始めたのと時を同じくして、ある代議士の私設後援会会員を名乗る男がセラノ社を訪れる。
男は企業脅迫を止めさせる事が出来る人物を知っているので、もし無事に犯行終結した暁にはその代議士への「献金」してほしいと瀬良野社長に要求。
この時提示された額は、政府から導入された公的資金と誘拐事件のときに犯人から脅迫された要求金額を合わせたものだった。
ここで瀬良野氏は、この企業脅迫の本当の犯人に思い当る。
しかし笑い男事件によって暴落する株とMM治療の秘密を握られていた為逆らうことは出来ず、この要求に屈することとなる。
この代議士というのが、何を隠そう当時の厚生労働大臣だった薬島薫。
薬島とその一派はかねてより、MM治療の秘密を使った企業脅迫を企てており、今回の瀬良野社長誘拐事件発生と同時に計画の一部を変更して脅迫を実行。
その後、瀬良野社長がアオイに解放されたことで身代金の入手ができなくなるとさらにシナリオを変更し、笑い男を騙った企業脅迫を実行に移したのである。
これにより薬島一派は脅迫した企業に導入された公的資金を含む多額の金をMMメーカーから巻き上げ、さらに公的資金導入による株価変動を見越した被害企業の株の空売りで莫大な金を手にする事となる。
ちなみに薬島の同じ防衛大の後輩に、笑い男事件当時の県警本部長で後に警視総監となる大堂がおり、その後のインターセプターの顛末も見ると警察の一部上層部もこの件に関与していたものと思われる。
瀬良野氏の説得に失敗したばかりか、自分の行動がまんまと利用されたことにアオイは愕然。
世の中に潜む悪に敗れたという失意の中、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の一文にあるように「耳と目を閉じ口を噤み」、ネットの闇に姿を消してしまう。
事件の中心に居た瀬良野氏も、保護の名目で警察の監視下に置かれ、事件の真相について余計な事を喋らない様に事実上の軟禁状態に置かれてしまうこととなる。
笑い男事件捜査本部や瀬良野氏の警護についている者には、セラノ社との癒着納入で手に入れたインターセプターが秘密裏に仕掛けられ、真相が明るみに出ないよう警察の捜査と瀬良野氏は厳重に監視されることになった。
【23話 善悪の彼岸 EQUINOXL】
◆インターセプター疑惑と笑い男事件に幕を引こうとした警察の陰謀
誘拐から6年。
事件が徐々に風化しつつあった頃、笑い男事件捜査本部の一人・山口が、捜査員の目に不正にインターセプターが仕掛けられていることに気が付いてしまう。
山口の上司・丹生から報告を受けた警察上層部は、車の走行中にインターセプターを使って視界を奪うことで山口を事故死に見せかけて殺害する。
しかし山口は公安9課の捜査員・トグサの知り合いであり、謀殺される直前、トグサに連絡を取り警察内部の不正に関して相談しようとしていた。
山口の死を不審に思ったトグサの捜査によってインターセプターの不正使用にたどり着いた9課は、さらに警察上層部の不審な動きに勘付き行動を開始する。
政府直属の部署である9課に圧力はかけ難く、さらに9課の作戦でインターセプターの不正使用疑惑がマスコミに取り上げられる中、警察上層部は一つの茶番を行うことを決める。
元々、笑い男事件に何らかの幕引きを考えていた上層部は、偽の犯人をでっち上げてそれを逮捕することで事件を終息させることを考えており、
それを今回のインターセプターの不正使用疑惑から世間の目を逸らすことの意味も含めて、再び笑い男を表舞台に上げることを画策。
その犯人役のデコイにナナオ・Aを用意し、情報を改ざんして彼を笑い男に仕立て上げる。
そして不正使用疑惑の会見の席で再び笑い男は登場し、目論見通り世間の目からインターセプターの不正使用疑惑はそれる。
作中、公安9課長の荒巻は、警察の動きから「笑い男による警視総監暗殺予告は警察による自作自演の茶番」だと推理して捜査の指揮を執るが、この推理はほぼ当たりだった。
只一つ、この時思わぬ誤算が起きる。
本物の笑い男であるアオイが登場し、警視総監暗殺予告を行ってしまったのである。
何かしらの方法を用いて笑い男を再び舞台に上げることを考えていた犯人役であるナナオ・Aは、これを自分の仕業と上層部には説明。
用意していたプランを全て取り消し、知らない「笑い男」が行った警視総監暗殺予告を使って自分を逮捕させる計画に練り直すことに。
その結果、他のプランのためにあらかじめ用意してあった遅行性ウィルスを式典会場のSPに流し、自分を「笑い男」として警察に逮捕させる茶番を行う。
これが警視総監暗殺予告事件の真相。
その後、ナナオ・Aは口封じのために警察上層部の息のかかった刑事によって殺害される。
しかし笑い男事件そのものは、警視総監暗殺予告によって触発された大量の笑い男の模倣者が発生したことで複数犯説が濃厚になってしまった為、幕引きには失敗してしまう。
またこの件で大きな陰謀の影を感じた公安9課は、笑い男事件を独自に捜査することを決定することとなった。
【4話 視覚素子は笑う INTERCEPTERL】
【5話 マネキドリは謡う DECOYL】
【6話 模倣者は踊る MEME】
【9話 ネットの闇に棲む男 CHAT! CHAT! CHAT!】
+ | 本編後半のネタバレ |
◆再び活動を始めるアオイと、事件を追う公安9課
自身が作り出すこととなった「笑い男」という偶像がまた悪党に利用されることを察知したアオイは、もう一度行動を起こすことを決意。
警視総監暗殺予告を行い、再び彼らに挑戦することを宣言する。
その後、厚生省のデータバンクにハッキングし村井ワクチンの接種者リストの存在を知ると、そのオリジナルのファイルを職員の電脳をハッキングすることで入手。
事が明るみになることを期待して、「今来栖尚」名義で村井ワクチンの情報開示を求めている市民団体に送付する。
さらに仲間から裏切られたと誤解され追われる身となった今来栖と接触し、事実を公表するように迫った。
しかし市民団体は薬島の息のかかった厚生労働省医薬局局長・新美が派遣した、麻薬取締強制介入班(厚生労働省医薬局麻薬対策課の凶悪犯罪担当組織。通称・麻取)によって壊滅させられ、今来栖も9課が確保する寸前で麻取に射殺されてしまう。
9課は新美を市民団体一斉捜査時における殺人、並びに今来栖尚殺害教唆の容疑で逮捕するが、
獄中で新美が電脳自殺を図り、記憶の一部が意味消失してしまったため、手掛かりと証拠を失ってしまう。
一連の事件の中で9課の存在を知ったアオイは、信頼できる機関であると判断し、9課に手持ちの情報を渡すことで全てを白日の下に晒すことを決断。
草薙素子と接触し、笑い男事件の真相を全て伝え、事件の全容の解明を遠まわしに依頼する。
ちなみにこの時、アオイは「僕が仕出かす最後の挑戦を、黙って見ていて欲しいんです」と言っているが、結局その後は何もしていない。
素子の方も黙らずに行動を開始しているので、両者にとって双方の行動はある程度織り込み済みの出来事だったと思われる。
これまでの事件から推理し、アオイから得た情報も併せて、一連の事件の黒幕はであると9課は断定。
最後の重要参考人である瀬良野氏の身柄を保護し、情報を入手する捜査を行う。
厳重な警察の警備の中から瀬良野氏と接触し情報を得るため、素子は笑い男に化け、瀬良野氏を再び誘拐する作戦を決行。
軟禁場所から瀬良野氏を連れ出し、瀬良野氏の情報によるアオイの情報の裏取りと薬島一派を告発する為の証言の約束を取り付ける。
しかしこの作戦がどこからか漏れ、薬島によって9課が今回の瀬良野氏の誘拐未遂事件に関与していたことと、
一連の笑い男事件に関与していた疑いをマスコミによって報道されてしまう。
【11話 亜成虫の森で PORTRAITZ】
【20話 消された薬 RE-VIEW】
【21話 置き去りの軌跡 ERASER】
【22話 疑獄 SCANDAL】
【23話 善悪の彼岸 EQUINOX】
◆公安9課の壊滅と薬島逮捕
世間に存在が漏れたことと笑い男事件への関与を疑われ、9課は窮地に陥る。
荒巻課長は薬島幹事長の笑い男事件への関与をまとめた極秘文書を総理大臣に提出し、9課への疑いを晴らすと同時に存続を訴えるものの
衆議院選前の党のトラブルを嫌った総理は、現時点での幹事長更迭を見送ってしまう。
そこで荒巻は敢えて9課を悪者に仕立て上げる策を取り、表向き9課を壊滅させ、衆議院選後に検察を動かして薬島幹事長を逮捕する取引を総理と行う。
公安9課本部は自衛軍の攻撃を受け、構成員も離散。
彼らは各地でメディアに情報を撒き、薬島幹事長逮捕への根回しを行ったあとに逮捕され、「この世に存在しない人間」となった。
そして衆議院選後、瀬良野氏の証言と9課からもたらされた情報によって、検察は薬島幹事長への一斉捜査を決行。
結果、薬島幹事長は幹事長の職から更迭され、逮捕されることとなった。
その裏で、公安9課は再び世間には存在しない攻性の組織に再結成された。
その後も瀬良野氏の証言で、この件に関わった多数の人間が裁かれることになることが予見されている。
【24話 孤城落日 ANNIHILATION】
【25話 硝煙弾雨 BARRAGE】
【26話 公安9課、再び STAND ALONE COMPLEX】
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つまるところ笑い男事件とは、一つの事件をきっかけに、そこから生まれた多数の模倣犯が引き起こした連鎖的事件だったのである。
「STAND ALONE COMPLEX」とは
「スタンドアローン」は「孤立」、「コンプレックス」は「複合」の意味。
個別に動いているはずなのにいつの間にか全体としては一個の組織になっている「端末複合体」の意味と、人間が命令系統もないのに何故か組織立った行動をしてしまう心理現象「孤立コンプレックス」の2つの意味を持つ言葉。
簡単に言うと自分の考えで動いているはずなのに、知らず知らずのうちに全体やその他と同じような行動をとってしまう現象のこと。
今回の笑い男事件で多数の模倣者が発生した現象がまさにそれであり、アオイや素子もこれによって「笑い男」の模倣者となった。
ちなみに現実でもありえる話で、
尖閣ビデオ流出事件や
タイガーマスク現象の際の模倣者の大量発生などはその一例という声も多い。
情報インフラが発達し、情報の共有・並列化が当たり前のように行われる社会となったため起きるようになった現象とアオイは考えており、
これによっていつの間にか「個性」が失われ皆が単なる全体の一部となって動くようになることを、アオイは
「絶望の始まりに思えてしょうがない」と語っている。
これに対し、素子は情報並列化の果てに個性を獲得した思考戦車・
タチコマ達を思い出し、並列化の果てに個を取り戻す可能性は「
好奇心」にあるのではないかと答えている。
登場した「笑い男」たち
CV:
山寺宏一
特A級クラスのハッキング技術を持つ青年。
若者らしい青臭い正義感の持ち主で、彼がネットで村井ワクチンに関するメールを拾ったことが全ての始まりとなった。
最初の犯行当時は学生で、その後は図書館の司書を務めており、出版物の保存の仕事をしている。
当時は上記の正義感から物静かながらも熱い感情を持つ人物だったが、6年後では世の中の悪に敗北した経験からかどこか悟ったような人間となっていた。
実は、アオイ自身も「S.A.C」を引き起こした模倣者の一人で、「偶々知りえた情報の確認と伝播を、自身の使命と錯覚し奔走した」とこの時のことを語っている。
世間での笑い男のイメージ通り、ハッカーとしての腕前は超一流で、相手の視覚に侵入して光学迷彩を使わずに自分の姿を消すことなどもできる。
劇中、アオイに瞬時に視覚を奪われた
バトーの
「俺の目を盗みやがったな!?」という台詞はこの腕を端的に表す名台詞。
最終回で世間的には「笑い男」のオリジナルは居ないということになったため、荒巻課長から「我々9課の9人目のレギュラーにならんか?」とスカウトを受けるが、
突然の申し出に動揺しながらも「残念ながら僕、野球が下手ですから」と言って断っている。
連合与党の幹事長を務める党内No1の実力を備える政治家で、笑い男事件発生当時の厚生労働大臣。
電脳技術の活性を通産省から厚生省に移して、今の地位を築いたバリバリの厚生族。
防衛大出身の元・海上幕僚長で、そのため今でも海自との繋がりや防衛大の仲間とのパイプを持っている。
かなりの額の支度金を以って政界入りしたが、過去にその支度金の出所を巡って海自の経理担当官が機密費横領の告発を受けている。
しかし担当刑事が線路脇で轢死体となって発見され捜査はストップ。結局疑惑は解明されぬまま、不起訴処分になっている。
企業脅迫事件の黒幕。
薬島の他にも彼につながる様々な人間が企業脅迫に関わっており、多額の金を稼いだものと思われる。
CV:
成田剣
元セラノ・ゲノミクス社社員。
「笑い男事件」の最重要参考人。
学生の時に左翼運動に参加しており、それがバレてセラノ社から解雇されて逆恨みで笑い男事件を起こした
――とされているが、情報は改ざんされたものであり、どこまで本当だったのかは不明。
自身は笑い男のファンであり、「笑い男」として歴史に名が残ることを喜んでいたが、警察上層部の手のものに殺害されてしまった。
その後、笑い男事件の裏の陰謀が暴かれ薬島が逮捕されてしまったため、歴史に名が残ることはなかったと思われる。
「S.A.C」によって、笑い男の模倣者になった者たち。
アオイの警視総監暗殺予告を見て、自分が笑い男となろうとした者、笑い男に憧れた者、笑い男から自分に向けたメッセージだと思った者と様々。
それぞれ洗脳やハッキングを受けていないにも関わらず、自分の意志で他の人間と同様に笑い男と同じ行動をとろうとした。
最初にセラノ・ゲノミクス社を脅迫しようとした人物。
セラノ製マイクロマシンの無効性と、村井ワクチンの効能とを比較検討した理論でセラノ社を脅迫しようとしたが、実は結ばなかった模様。
しかし、この脅迫メールを偶々アオイがネット上で拾ったことで笑い男事件が起きることとなった。
どういった人物だったのかは最後まで不明。
結局彼自身は何もできていないため、オリジナルというのも「しいて言えば」程度に留まっている。
主人公。
瀬良野氏から笑い男事件の情報を聞き出すために、彼女も笑い男の模倣者となることに。
最終回にて笑い男化。
9課や仲間が犠牲になり、それでも何も変わらずに流れる世の中に怒りを持ち、笑い男と同じ行動を取る。
笑い男の服装で愛用のマテバを持ち、薬島のいる党本部に足を伸ばすが…
余談
- 企業脅迫に関してはグリコ・森永事件、三億円事件、机「9」文字事件。
薬害問題に関しては薬害エイズ事件、丸山ワクチン問題をモデルにしている。
- 原作攻殻機動隊の十年ほど前に当たる「紅殻のパンドラ」ではセラノ・ゲノミクスが登場しており、薬害事件の発端となった電脳硬化症も存在しているが、その後の日本でこの事件で起こるかは不明。
S.A.Cシリーズが人形使いと素子が出会わなかったというifのため、人形使いが活動している今作では起きない可能性も十分にある。
後日談
部下とボディガードを連れ、アオイとの約束を果たすため笑い男事件の初公判に臨む瀬良野氏。
しかし、車のドアノブに手をかけた瞬間……。
何かの仕事を終え、駐車場を後にした男が一人つぶやく。
???「曲がらねば世は渡れず、正しき者に安らかな眠りを」
なお小説版「攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY」では、車に仕掛けられた爆発物によって瀬良野社長は暗殺されてしまったことが書かれている。
???「僕は耳と目を閉じ口を噤んだwiki籠りになろうと考えたんだ」
???「だが、ならざるべきか」
画像出典:攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX
© 2002年10月1日 - 2003年11月30日放映/全26話
© Production I.G・攻殻機動隊製作委員会
最終更新:2020年07月01日 17:46