所用で、イオン名取に行った。目的のショップはレストラン街を
通っていく必要があった。突然私は過呼吸をおこし、大粒の涙を流した。私はあわてて椅子に座り、頭の中の人格スイッチを切り替える。
「わお!パニック障害だ」
そして落ち着いた。イオン名取は、夫婦で家族で、よく食事や買い物に来た場所だからねえ。家族の思い出がいっぱい詰まっている。もう来ないことにしようと思った。
来週は子どもの授業参観だ。
「ごめんね。ママはみにいけない」
仕事のためではない。子どもの様子を楽しみにみにくるであろう
お父さんたちを、みていられないからだ。
実は夫の裏切りは、今回の逮捕の件が、はじめてではない。
夫は、自分が思い込んだことを絶対譲らないし、変えようとしない人だった。私だけでなく、周りのだれがいってもきかなかった。どれほど不義理をし、私が頭をさげてきたか。夫が私の方に歩み寄ることはなかったので、結婚生活を続けようとするならば、私が歩み寄るほかなかった。だから仕事をやめ、夫の開業を手伝ってきた。
夫は、自分がなにをやろうとも、妻の私がついてくる、尻ぬぐいをしてくれると、タカをくくっていたのではないだろうか。事件を起こしても、離婚されるとは思っていなかったんだろうなと思う。夫の両親がそうだったから。飲む打つ買うの三拍子のお父さんだけど、絶対別れなかったお母さん。それが夫の家族モデルなのだ。私の愛を、これでもかこれでもかと試し続けて、つくづくバカな男だと思うよ。ここまで尽くして合わせてなお裏切られたら、「もういいや」としか思わない。
今朝、長女になじられた。
「ママがパパを強く怒ったから、パパは逮捕されるような悪いことをしたんじゃないの?」
「強く怒るほど、パパと真剣に向き合ってきたんだよ」
と諭したが、子どもにわかるわけもない。私は少し考えてから、長女に言った。
「パパの肩をもつなら、京都の児相で暮らし、パパを待ちなさい。」
長女はあわてて取り繕おうとする。
「ママ酷いこといってごめんなさい。私、ママと暮らしたいから、もうママのことは責めないよ」
私は正直に言った。
「ママはね、パパが事件を起こしたことと、その後始末のために、心が病気になっている。ママはソーシャルワーカーだからわかるんだけど、本当は入院したほうがいいぐらい酷いと思う。だけど、おうちにはもうお金がないから、入院費用が払えないんだよ。それにママが入院したら、長女ちゃんと次女ちゃんは、児相にいかないといけなくなるよ。学校もお稽古事もいけなくなるでしょ。ママはね、長女ちゃんと次女ちゃんにご飯食べさせて、学校行かせるだけで精一杯なんだ。だから、児相の人にちゃんとお話しきいてもらいなさい。ママみたいに病気にならないようにしないとね。おうちにはもうお金がないから、病気になったとしても、治してあげられないんだよ。だから児相の人にちゃんとお話しきいてもらって、心が病気にならないようにしてね。」
お財布にデパスを忍ばせて、明日も営業にいく。