いま現在、つるの剛士のTwitterのリプライ欄には、今回の件に乗じたヘイトツイートを投稿しているアカウントが多数見られる。もし外国人労働者がパクチーを盗んだ犯人であったとしても、それをTwitterに書くことが、フォロワーのどういった反応を引き出してしまうか、つるのはもっと思慮深くなるべきだったはずだ。
「外国人に野菜を盗まれた」ことが事実であるとして、その事実をそのまま伝えれば「日本で暮らす外国人全般」への人々の憎悪を煽りかねないことや、日本でマイノリティとして生活する一般の「外国人」をどれだけ苦しめることになるかを、よく考えてみてほしい。それでもなお、「自分は被害者だ、事実を口にして何が悪い」と言うのだろうか。
「外国人の犯罪率は高い」はデマ
現在、日本には排外主義的な考えが浸透してしまっている。「外国人の犯罪率は高い」「外国人が増えて街の治安が悪くなった」という意見を、さも事実であるかのように信じ込み、伝えようとする人も少なくはないようだ。
だが実際には、「外国人の犯罪率は高い」「外国人が増えて街の治安が悪くなった」という話はデマである。
2019年3月に警察庁が出した資料「平成30年における組織犯罪の情勢」によると、平成30年間で刑法犯検挙人員が最も多かった2004年が8898人だったのに対し、2018年は5844人と緩やかながら減っている。また、刑法犯検挙人員に占める来日外国人の割合は平成30年間を通じて2%前後を推移しており、顕著に上がったというデータは見られない。
こうした数字が出ているにもかかわらず、前述したような外国人への差別意識はなくならない。だからこそ、SNSを通じてパクチー盗難被害を訴える際には「外国人」というレッテル貼りをすることに対して注意深くならなければならない。
歴史を振り返れば、約100年前の同じ9月、関東大震災の際に「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「朝鮮人が暴動を起こしている」というデマが飛び交い、多くの人が尊い命を奪われた。「犯罪」と「外国人」を安易に結びつけることはこういった悲劇を再び生む危険性も孕んでいる。
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