自民総裁選告示 「安倍政治」の総括から

2020年9月9日 07時19分
 自民党総裁選がきのう告示された。党員・党友による投票は見送られ、国会議員と都道府県連代表のみの投票で決まるが、各候補は「安倍政治」を総括し、理念・政策を明確に掲げて戦ってほしい。
 総裁選は石破茂元幹事長(63)、菅義偉官房長官(71)、岸田文雄政調会長(63)による三つどもえの構図で投開票は十四日に行われる。都道府県連ごとに予備選を行うものの、石破氏が支持を期待した全国一斉の党員・党友投票は見送られ、国会議員の大勢が支持する菅氏が優位に立つ展開だ。
 三候補はきのう、所見発表演説会と共同記者会見に臨み、菅氏は「安倍首相が進めてきた政治を継承し、発展させる」と重ねて強調した。第二次安倍内閣以降の七年八カ月間、官房長官として安倍晋三首相を支えた菅氏が政権継承を掲げるのは、自民党政治の世界では当然なのだろう。
 しかし、主権者である国民には当たり前ではない。内閣が総辞職し、首相指名選挙が新たに行われる以上、現政権の政策や政治姿勢を総括し、何を引き継ぎ、何を引き継がないのか明確にすべきだ。
 「納得と共感の政治」を掲げる石破氏は、内需主導型経済への転換を主張している。「分断から協調へ」を唱える岸田氏は、経済格差是正を訴える。
 政策論争は当然だが、憲法や国会を軽視し、国民と真摯(しんし)に向き合わない「安倍政治」を厳しく問う機会でもある。短い選挙期間の中でも、三候補は「安倍政治」を巡る自らの立場を明確に語り、徹底的に議論すべきだろう。
 野党側でも立憲民主、国民民主の合流新党の代表選が始まり、立民の枝野幸男代表と、国民の泉健太政調会長の一騎打ちとなった。
 「安倍一強」の政治情勢を許した一因は、旧民主党の分裂による野党多弱にもある。野党勢力の結集が国民の政権選択肢を増やすことにつながるのなら歓迎したい。
 野党視点での「安倍政治」の総括にとどまらず、政権交代後にどんな政治、政策を実現しようとしているのかも国民に示すべきだろう。
 現職衆院議員の任期はすでに三年近くが過ぎ、解散・総選挙がいつあってもおかしくない時期に入っている。自民党の新総裁が首相就任直後に国民の信任を得るためとして、解散に打って出るかもしれない。
 一刻の余裕もない。野党側も代表選後直ちに、政権選択肢となり得る体制づくりや政権公約の策定など選挙準備を急ぐべきである。

関連キーワード

PR情報