Photo : Yuki Katsumura edit & text:Katsuki Shimizu (REBIRTH PROJECT)
牛山 翔太/うしやま しょうた
1991年東京生まれ。リバースプロジェクト プロデューサー。2014年明治学院大学国際学部国際学科卒業後、リバースプロジェクトに入社。代表的なプロジェクトとして全日本制服委員会、WORK4 BANGLAなどを担当。
藤井貴行/ふじい たかゆき
1977年 神奈川県生まれ。早稲田大学卒。30歳で株式会社山陽グローバルパートナーズを設立。自らが代表を務める会社を含め5つの会社経営に携わり、高齢者介護・自費リハビリ・保育・オリジナルアロマ・リフォーム・産廃と多岐にわたり活躍している。
CLIENT INTERVIEW
藤井 貴行/ふじい たかゆき
「ユニフォームは施設の景観」ということ
我々の会社の理念は「人は財である」です。
介護事業をメインとしている企業としては“超”がつくほど抽象的なことだと思うんですが、僕は関わる人でサービスを作りたいと本気で考えているんです。
そこで現場で輝くスタッフをもっと良く見せたい、という気持ちが漠然とありました。簡単に言うと、これまでのスタッフ用ユニフォームって、パッと見ただけで介護業界の人だなっていうのがわかるようなデザインなんですよね。だからこれまでは、仕事が終わると皆すぐに着替えていたんです。
それを見たときに、『なんで着替えるの?』って聞いたことがあったんですよ。そしたら、『これだと買い物に行きにくい…』という正直な答えが返ってきたんです。それってどうなのかなって考えたときに、このままだとマズイなという問題意識が芽生えました。
また、3年くらい前からおもてなしに力を入れ始めたんですが、元ホテルマンの経験のある介護士講師の方に来てもらったことがありました。その方の立ち振る舞いがとにかく素晴らしくて。でもその方は、『常日頃こんな振る舞いではないですよ。元ホテルマンというプライドで演じてるんです(笑)』と言ってたんですね。それを聞いて、おもてなしする上でもやっぱり格好=身だしなみってとても重要だなって思ったんです。
そんなときに、前々から認知していたリバースプロジェクトさんと何かできないかというふうに考えたのがきっかけでした。実際に、彼らが販売していたエシカルダウンジャケットを僕が持っていて、全日本制服委員会の存在も知っていたのが大きいですかね。やはり彼らのPR力にも惹かれました。
担当してくれたプロデューサーの牛山さんは、最初に『ユニフォームは一つの“景観”である』ということを教えてくれました。「これを着ていたらうちのスタッフだ」ということを一目でわかってもらうこともうちの強みになると確信しました。
一緒に働く仲間こそが“財”。
経験がない人とこそ、仕事をしてみたい
この新しいユニフォームをお披露目するにあたって、今までは全く介護業界に携わったことのない人にも認知してもらい、働いてみたいと思ってもらえたらとても嬉しいです。
介護業界は人材難と言われているのですが、その理由の一つとして介護業界に新たに飛び込む人が少ないということがあります。我々の施設でも募集をしたときにやっぱり介護を経験した人の応募はあるのですが、未経験の方の応募は少なくて。僕としては、やっぱり未経験の人にこそ興味を持ってもらって、一緒に仕事をしてみたいと思ったんです。
それこそ、うちの施設ではヨガスタジオを作ってそこでスタッフが一部のヨガを利用者に教えていたり、スタッフが作ったアロマオイルを施設内で使ったりしてるんですけど、そんなふうに自分の強みを生かして働ける場を提供できるので山陽グローバルパートナーズという会社にも興味を持ってもらえたら本当に嬉しく思いますね。
PRODUCER INTERVIEW
牛山 翔太/うしやま しょうた
今回の制服作りでこだわったポイント
異例だったのは、介護ユニフォームにおいて「ジャケットスタイル」を提案したことですね。
一般的にスタッフさんが作業する際ってジャケットを着用していることはほぼないと言ってもいいくらいだと思います。それは、やっぱり「ジャケットよりもポロシャツの方が動きやすいでしょ?」と感じる方が圧倒的に多いと思うんです。その中で、藤井社長がそこを振り切って採用してくれたことが一番大きかったと思います。
それもただスタッフの意見を無視して振り切ったのではなく、ちゃんとデザイナーの岡さんにも施設に来てもらって、スタッフからヒヤリングをした結果ここに落ち着いてるということもあります。
現場で働く人のリアルな声を聞くために、先ずはいくつかのデザインを提案させていただきました。ユニフォームには大きく分けて、ワーキング/サービス/メディカル/オフィス、という4つの領域がありますが、介護はメディカルに値するのが一般的なんです。しかし、藤井社長は『本来メディカルではなくて、サービスだよね』とおっしゃっていて、僕も同じ考えだったことから、エプロンではないけど割烹着をオシャレにしたようなものや、はっぴのような旅館の女将さんが着ているようなものをジャケット化したものも候補に含めましたね。その結果、藤井社長とスタッフさんに選んでいただいたのがこのブルゾンジャケット(ブルジャケ)ということです。
ジャケットだけれどもガチガチにするイメージはなく、僕らの中では“柔らかさ”を残したかったんです。だから衿の部分はリブ仕様にして色は白を採用しました。
この施設で働くスタッフさんの仕事は、まずは車で利用者さんをお迎えにあがることから始まります。そういう意味では、この施設に来る前から利用者さんとのコミュニケーションは始まっていて、しかも冬場もユニフォーム姿なわけですから、衿は立てられて首元が温まる仕様にしました。
ユニフォームデザインを担当
岡 義英/おか よしひで
文化服装学院卒業後、ユニフォーム会社に入社しデザイナーとしてのキャリアをスタート。20年以上デザインの仕事に携わり、これまでに制作を手掛けたユニフォームの数は500を超える。 賞歴/1990年Weデザインコンテスト・リクルートUFコンテスト入選。ビルメンテナンス協会クリーンクルーファッションコンテスト大賞受賞。
僕の考える“ユニフォーム(制服)”は、「企業アイデンティティ」「デザイン」「機能」の融合です。この3つの要素がなければ企業としての制服は成り立たないと思っています。さらに企業のジャンルによって、どんなディテールが必要になってくるかで機能の入れ方が変わってきます。
「企業がこう在りたいというメッセージをイメージして、デザインに落とし込む」。こんな思いを軸に、これまでには様々な業界のユニフォームデザインをさせていただき、「ナチュラルスマイル」という介護師向けユニフォームのカタログも立ち上げました。
今回、山陽さんの施設を訪問した際に、「ここは普通の介護施設じゃないな」って感じたんです。それは、介護士さんと利用者さんが一緒に何かを作ったり、同じ時間を共有しているところにサービスの本質があるなと思ったから。
確実に“医療感”は皆無でしたし、おじいちゃんおばあちゃんが本当に楽しそうで。そんな出来事から、山陽さんならではの「クラブブレザー」を僕は作りたいと思いました。
生地自体が伸縮性の高いので十分動きやすいんですが、さらに動きやすく快適にするために背中に配置したメッシュ付きタックを付け加えました。
今回の制服で特徴的なのは、右ポケットに付いているネーム&ペン差しですね。これは新しい発見でした。
従業員の方は自分の名前がわかるように名前を強調できた方がよくて、ペンもよく使う。介護の場合、胸ポケットに名札やペンがあると、利用者さんを傷つけてしまう恐れがあるため、腰位置のポケットに配置することにしたんです。
ただ、施設以外に立ち寄るときに名前がもろに出ているのは避けたいという希望から、ポケットの中にしまえる仕様になっているのも特徴です。
そもそもデザイナーの自分へのミッションとしては、『革新的なものを提案してほしい』だったので、この“ブルジャケ”を採用してもらうことができてとても良かったと感じています。
GALLERY
株式会社 山陽グローバルパートナーズ
山口県周南市にて、三丘温泉デイサービスセンター、ショートステイ ウィンクル三丘、三丘温泉指定居宅介護支援事業所、TOMONi保育園、脳梗塞リハビリステーション山口の設置・運営を行うだけでなく、介護事業者向けソフトウェア開発・販売も行う。
所在地 | 〒745-0641 山口県周南市小松原1233-3 |
TEL | 0833-91-7200 |
URL | sgpnet.co.jp |