「おいしい浮世絵展」
森アーツセンターギャラリーで開催中の
「おいしい浮世絵展~北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい~」に行って来ました。

https://oishii-ukiyoe.jp/
浮世絵師たちによって描かれた「江戸の食」をテーマに色彩豊かな浮世絵の作品と当時の人々が舌鼓をうった江戸の味わいに思いをはせる「おいしさ」を切り口とした展覧会。
と言ってもイマイチどんな内容の展覧会なのかピンと来ないかもしれません。正直自分も観に行くまではさほど「食指」は動かなかったのは事実です。
ところが、やはり展覧会というものは実際に行ってみないとその面白さが分からないものです。公式サイトでは100分の1以下しか魅力が伝えられません。

歌川国芳「名酒揃 志ら玉」
江戸ガラス館蔵、通期
季節は丁度今頃でしょうか。水を張った大鉢から女性が笑みを浮かべながら白玉をすくい取っています。
日本初のお菓子に関する文献『古今名物御前菓子秘伝抄』にもここに描かれた紅白の白玉について記載されています。
曰く「色は黄くちなし以て染 白は其儘なり」

↑
展覧会図録には林綾野さんが実際に浮世絵に描かれた当時の白玉を作り、写真とレシピも掲載。会場内にも同様にパネル展示されています。
すし、鰻、天ぷら、蕎麦、豆腐、初鰹、貝、海苔、鍋、果物、白玉そして歌舞伎のお伴幕の内弁当などなど、単に浮世絵を展示するだけでなく、再現写真やレシピも同時に展示。

深川飯
新型コロナウイルスの影響で、2020年4月17日(金)から6月7日(日)までの会期だったものが今にずれ込んでしまいましたが、中止せずに開催してくれてありがとう!と言いたい展覧会でした。
和服から洋服への生活になった今でも、食文化は江戸時代に確立されたものをそのまましっかりと受け継いでいることを再認識できます。

月岡芳年「風俗三十二相 むまさう 嘉永年間女郎之風俗」
(7/15~8/13)味の素食の文化センター蔵
(8/15~9/13)浦上満氏蔵
通期
油断大敵という言葉がある通り、古来油はとても貴重なものでした。江戸時代に入ってからようやく食用にも油が使えるようになり「天ぷら」が生まれます。
火災が多かった江戸の街。室内で火を使うことは厳禁だったため、天ぷらは屋台で普及したという点は初耳でした。

歌川広重「東都名所高輪廿六夜 待遊興之図」(部分)
全図はこちらから
江戸時代の人がタイムスリップし丸亀製麺へ行っても迷うことなくスムーズに注文できそうですね。
展覧会の構成は以下の通りです。
第1章:季節の楽しみと食
第2章:にぎわう江戸の食卓
第3章:江戸の名店
第4章:旅と名物

「おいしい浮世絵展」展示風景
浮世絵に登場する食をどーんと紹介している「第2章:にぎわう江戸の食卓」だけが「おいしい浮世絵展」ではありません。
江戸時代の名店や各地の名物を取り上げたりしています。鞠子の自然薯を用いた「とろろ汁」や水口の「干瓢」、府中の「安倍川餅」など各地の名物を紹介する「第4章:旅と名物」も見どころ十分です。

「永代帳」剣菱酒造
1505年に伊丹に創業した酒造「剣菱」に残る米などの材料を管理していた帳簿。
寿司や天ぷらなど江戸独自の食文化が花開く中、日本酒だけは「下り酒」(上方で生産され、江戸へ運ばれ消費された酒)が尊ばれました。
徳川吉宗の御膳酒に指定されるなど「下り酒」の中でも銘酒とされた剣菱の永代帳は見逃せない逸品です。祖父も生前「酒は剣菱にかぎる」とよく言っていたのを覚えています。

歌川広重「江戸高名會亭盡(えどこうめいかいていづくし) 両国柳橋 河内屋」
味の素食の文化センター蔵、通期
「すし」「うなぎ」「天ぷら」「そば」など浮世絵に描かれた数々の食を追いながら、浮世絵そのものの魅力だけでなく、江戸の風俗史も感じとれるとても練られた展覧会です。
世界でも類をみないほど食いしん坊の多い日本。その原点を「おいしい浮世絵展」で見つけることがきっと出来るはずです。

歌川国芳「五行之内 西瓜の水性」
個人蔵
梅雨明けしようやく西瓜を美味しく食べられる時季となりました。ところで、西瓜に塩や砂糖をかけて食べますか?
江戸時代の西瓜は今のように甘みがなかったそうで、砂糖を付けて食べたそうです。そうそう会場の料理パネルにあった「水物」がシンプルながらとっても美味しそうでした。夏にピッタリ!
「おいしい浮世絵展」は9月13日までです。森美術館の「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」とセットで是非~

「おいしい浮世絵展 ~北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい~」
会期:2020年7月15日(水)~9月13日(日)
※会期中、展示替えがあります
休館日:8月14日(金)
開館時間:10時~20時 ※入館は、閉館30分前まで
※7月21日(火)、7月28日(火)、7月30日(木)、8月28日(金)のみ17時まで
会場:森アーツセンターギャラリー
(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階)
https://macg.roppongihills.com/jp/
主催:博報堂DYメディアパートナーズ、TBS、森アーツセンター、産経新聞社
後援:BS-TBS、JAPAN Forward、TBSラジオ
特別協賛:くら寿司株式会社
協賛:カンロ、JR東日本、NISSHA
企画協力:林綾野(アートキッチン)
特別協力:公益財団法人味の素食の文化センター
協力:全国鰻蒲焼商組合連合会、東京都麺類協同組合
監修:安村敏信(北斎館館長、萬美術屋)
展覧会公式サイト:https://oishii-ukiyoe.jp/



『浮世絵に見る 江戸の食卓』
林綾野(著)
この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=5942
「おいしい浮世絵展~北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい~」に行って来ました。
https://oishii-ukiyoe.jp/
浮世絵師たちによって描かれた「江戸の食」をテーマに色彩豊かな浮世絵の作品と当時の人々が舌鼓をうった江戸の味わいに思いをはせる「おいしさ」を切り口とした展覧会。
と言ってもイマイチどんな内容の展覧会なのかピンと来ないかもしれません。正直自分も観に行くまではさほど「食指」は動かなかったのは事実です。
ところが、やはり展覧会というものは実際に行ってみないとその面白さが分からないものです。公式サイトでは100分の1以下しか魅力が伝えられません。
歌川国芳「名酒揃 志ら玉」
江戸ガラス館蔵、通期
季節は丁度今頃でしょうか。水を張った大鉢から女性が笑みを浮かべながら白玉をすくい取っています。
日本初のお菓子に関する文献『古今名物御前菓子秘伝抄』にもここに描かれた紅白の白玉について記載されています。
曰く「色は黄くちなし以て染 白は其儘なり」
↑
展覧会図録には林綾野さんが実際に浮世絵に描かれた当時の白玉を作り、写真とレシピも掲載。会場内にも同様にパネル展示されています。
すし、鰻、天ぷら、蕎麦、豆腐、初鰹、貝、海苔、鍋、果物、白玉そして歌舞伎のお伴幕の内弁当などなど、単に浮世絵を展示するだけでなく、再現写真やレシピも同時に展示。
深川飯
新型コロナウイルスの影響で、2020年4月17日(金)から6月7日(日)までの会期だったものが今にずれ込んでしまいましたが、中止せずに開催してくれてありがとう!と言いたい展覧会でした。
和服から洋服への生活になった今でも、食文化は江戸時代に確立されたものをそのまましっかりと受け継いでいることを再認識できます。
月岡芳年「風俗三十二相 むまさう 嘉永年間女郎之風俗」
(7/15~8/13)味の素食の文化センター蔵
(8/15~9/13)浦上満氏蔵
通期
油断大敵という言葉がある通り、古来油はとても貴重なものでした。江戸時代に入ってからようやく食用にも油が使えるようになり「天ぷら」が生まれます。
火災が多かった江戸の街。室内で火を使うことは厳禁だったため、天ぷらは屋台で普及したという点は初耳でした。
歌川広重「東都名所高輪廿六夜 待遊興之図」(部分)
全図はこちらから
江戸時代の人がタイムスリップし丸亀製麺へ行っても迷うことなくスムーズに注文できそうですね。
展覧会の構成は以下の通りです。
第1章:季節の楽しみと食
第2章:にぎわう江戸の食卓
第3章:江戸の名店
第4章:旅と名物
「おいしい浮世絵展」展示風景
浮世絵に登場する食をどーんと紹介している「第2章:にぎわう江戸の食卓」だけが「おいしい浮世絵展」ではありません。
江戸時代の名店や各地の名物を取り上げたりしています。鞠子の自然薯を用いた「とろろ汁」や水口の「干瓢」、府中の「安倍川餅」など各地の名物を紹介する「第4章:旅と名物」も見どころ十分です。
「永代帳」剣菱酒造
1505年に伊丹に創業した酒造「剣菱」に残る米などの材料を管理していた帳簿。
寿司や天ぷらなど江戸独自の食文化が花開く中、日本酒だけは「下り酒」(上方で生産され、江戸へ運ばれ消費された酒)が尊ばれました。
徳川吉宗の御膳酒に指定されるなど「下り酒」の中でも銘酒とされた剣菱の永代帳は見逃せない逸品です。祖父も生前「酒は剣菱にかぎる」とよく言っていたのを覚えています。
歌川広重「江戸高名會亭盡(えどこうめいかいていづくし) 両国柳橋 河内屋」
味の素食の文化センター蔵、通期
「すし」「うなぎ」「天ぷら」「そば」など浮世絵に描かれた数々の食を追いながら、浮世絵そのものの魅力だけでなく、江戸の風俗史も感じとれるとても練られた展覧会です。
世界でも類をみないほど食いしん坊の多い日本。その原点を「おいしい浮世絵展」で見つけることがきっと出来るはずです。
歌川国芳「五行之内 西瓜の水性」
個人蔵
梅雨明けしようやく西瓜を美味しく食べられる時季となりました。ところで、西瓜に塩や砂糖をかけて食べますか?
江戸時代の西瓜は今のように甘みがなかったそうで、砂糖を付けて食べたそうです。そうそう会場の料理パネルにあった「水物」がシンプルながらとっても美味しそうでした。夏にピッタリ!
「おいしい浮世絵展」は9月13日までです。森美術館の「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」とセットで是非~
「おいしい浮世絵展 ~北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい~」
会期:2020年7月15日(水)~9月13日(日)
※会期中、展示替えがあります
休館日:8月14日(金)
開館時間:10時~20時 ※入館は、閉館30分前まで
※7月21日(火)、7月28日(火)、7月30日(木)、8月28日(金)のみ17時まで
会場:森アーツセンターギャラリー
(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階)
https://macg.roppongihills.com/jp/
主催:博報堂DYメディアパートナーズ、TBS、森アーツセンター、産経新聞社
後援:BS-TBS、JAPAN Forward、TBSラジオ
特別協賛:くら寿司株式会社
協賛:カンロ、JR東日本、NISSHA
企画協力:林綾野(アートキッチン)
特別協力:公益財団法人味の素食の文化センター
協力:全国鰻蒲焼商組合連合会、東京都麺類協同組合
監修:安村敏信(北斎館館長、萬美術屋)
展覧会公式サイト:https://oishii-ukiyoe.jp/
『浮世絵に見る 江戸の食卓』
林綾野(著)
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JUGEMテーマ:アート・デザイン
日本の文化に対する国内外から関心が高まる中、日本独自の文化が花開いた江戸時代に多くの注目が集まっています。その江戸の文化を、類まれな表現力と技術で生き生きと描き残し、今に伝え、世界中から高い評価を得ているのが「浮世絵」です。
この浮世絵の世界には、江戸の風俗史として「日本の食」が度々描かれてきました。「和食」が無形文化遺産へ登録され注目を集める昨今の流れも受け、「浮世絵」と「食」を掛け合わせたオリジナル展覧会『おいしい浮世絵展 ~北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい~』を2020年7月15日より六本木ヒルズ 森アーツセンターギャラリーにて開催いたします。
本展では、浮世絵そのものの魅力を伝えるだけではなく、描かれた食のシーンを追いながら、当時の料理を再現しそのレシピを解説することで、現代のくらしにもつながる江戸の食文化を紐解き、江戸時代ならではの料理方法もご紹介します。
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