ただアナタに会いたくて
- 2019/10/27
- 00:00
ただアナタに会いたくて「咲!」「えへへっ…ちょっと、失敗しちゃいました…」「えへへっ、じゃないでしょう!!」「…ごめんなさい。でも、やっと会えました…。やっとアナタに触れられた」「咲…」 咲は小さな笑みを浮かべ、今にも泣き出しそうな顔で自分をじっと見つめる女、竹井久にそっと腕を伸ばした。そんな咲を久は掻き抱く。そして、強く、強く抱きしめて、その髪を梳く。その瞳に宿るのは、腕の中で幸せそうな表情を浮かべ...
和ちゃんの子供を授かりました (一話完結)
- 2019/09/28
- 21:41
和x咲 当たり前のように妊娠してます。あと、これ苦手な人は苦手なやつかも…まぁ読みたくなくなったらサイトを閉じるなりyoutube開くなり各自で対応してください。―――…おめでとうございます、4か月です。その言葉と、目の前の白衣の白さにクラリと眩暈がする。私はナース服を着た女性の心配そうな声に何か返事をして、産婦人科の診察室を後にした。大学4年の冬、あと2か月もすれば卒業という時期だったのは幸いと言うべきか。少し...
同情と劣情
- 2019/07/03
- 23:56
実のところ、上手くいかないだろうと思っていた。思ってはいたけれど、彼女があまりにもしつこくて、諦めが悪いものだから、とうとうこちらが根負けした。――分かりました。そこまで言うなら、付き合います。付き合って欲しいと繰り返すから、付き合ってあげようと決めた。望み通りにして、破綻して、すっぱり諦められるなら、それが彼女の人生の為になる。のらりくらりはぐらかして、つかず離れずのままで、変に期待を持たせるより...
稲妻は降らない
- 2018/12/02
- 23:03
彼女は個室を持っていて、一番奥まっているせいか家族もめったに顔を見せない。聞けば軽く防音にもなっていて、楽器の演奏をしても近所に響いたりはしないらしい。そんな密封された空間であることもあってか、この部屋にいる時の淡はひどく穏やかだ。淹れてもらった紅茶とクッキーを食みながら、BGM代わりに麻雀の試合を流す。麻雀を介している時ばかりは、淡も咲も常態でいる。色恋を含めないこの時は、淡のテリトリーでも、咲は...
稲妻は遅すぎた
- 2018/11/25
- 22:39
夜から雨が降る、という予報だった。閉じてあるカーテンを見遣り、それでも、雨音がし始めたことがなんとなく不思議だ。未来を予測する、その精度は、人には応用できないのだろうか。人を観察していて、何らかの法則性を掴めそうな時がある。一番予測がつかないのは私、とも思った。 ベッドの上に体育座りにうずくまっている。鳴り続ける携帯電話に、ぼんやりと視線を流した。 携帯をアクティヴにしていないせいで、さっきからLI...