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クラス「無職」になってしまい公爵家を追放された俺だが、実は殴っただけでスキルを獲得できることがわかり、大陸一の英雄に上り詰める。 作者:アマカワ・リーチ
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35.黒幕



 狂化したローガンとの戦いに勝利したリートは、町の人間によって病院に運び込まれた。

 いたるところの骨が折れていたが、町の治癒士の腕が良く、翌日にはなんとか動ける程度にまで回復した。


 そして治療している間に、村長に頼みウルス隊長にことの経緯を簡単に伝えてもらっていたが、

 すると、ウルス隊長はその日のうちにコリンの町に飛んできたのだった。


 まさか隊長自らが来てくれるとは思わなかったので、流石のリートも驚いた。


「おい、大丈夫か?」


 ベッドに横たわるリートに、心配そうに駆け寄ってくる隊長。


「隊長、まさか来ていていただけるなんて……」


「当然だ。お前は命を狙われたのだ、別の刺客がくる可能性も否定できない。動けるようになるまでは護衛が必要だろう」


「すみません、ありがとうございます……」


「……幾ら何でも、できすぎているからな。架空の依頼があって、そこに狂化した人間が現れて襲ってきた。この二つに繋がりがないと考える方が難しい。何者かがリートを襲おうとしていても全くおかしくはない」


「でも隊長、襲ってきたのはローガンです。俺に恨みを持っている人間だった。だからたまたま彼が襲いかかってきただけという可能性も」


「いや、“狂化”のスキルは、ひとりで会得できるものではない。狂化の魔石と呼ばれる特別なものを使う必要がある。そしてこの魔石は、一般には流通していない貴重なものだ。それを手に入れられるのはごく一部の人間だけだ」


「つまり、ローガンが襲ってきたのも、誰かの協力があってのことと」


「協力というか、扇動した可能性がある」


 リートは、自分の命が狙われているかもしれないという話に、恐ろしさを感じた。


 そして――頭をよぎったのは、父親と異母兄弟の存在だ。

 あれだけ恨まれているのだ。ありえない話ではない。


 いや、でも、まさか。

 ――流石に命を狙ってくるようなことがあるのか?


「まだ断定はできないが……今回の騎士の派遣を要請してきた東方騎士団が無関係とは考えにくい」


 東方騎士団には、父親であるウェルズリー公爵の息がかかっている。


「おそらく簡単ではないが、こちらで調査を進める」


 ウルスがそう約束する。


「お願いします」


「と言っても、一隊長にできることは限られている。しかも自分が所属する騎士団でもないからな。できることは限られているが……最善は尽くすよ」


 †


 ――その頃、東方騎士団長室。


 団長は部下から報告を聞いて驚いた。


「なに? 狂化さえ打ち破ったのか!?」


 騎士団長は、リートに恨みを持つローガンに、狂化の力を与え刺客として送り込んだ。

 狂化を使えば理性は失われ、そこから情報が漏れることはない。しかも、バレても、復讐心に燃える男の“凶行”だったと、周囲に思わせることができる。

 騎士団長にとってリスクが小さい暗殺方法だった。


 だが、結果は失敗。

 リートは、ローガンを打ち破ってしまったのだ。


「まさか……狂化された魔法使いをも打ち破るとは」


 ここで東方騎士団長はようやく、ことがそう簡単には進まないことを理解した。


 だが――まだチャンスはある。


 ひとまず暗殺はもう無理だ。

 安全に動かせる駒がない。


 だから、やるべきことは、


「……小隊長試験で、奴を潰す」


 それが、前東方騎士団長、ウェルズリー公爵に報いるただ一つの方法だ。



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