挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
クラス「無職」になってしまい公爵家を追放された俺だが、実は殴っただけでスキルを獲得できることがわかり、大陸一の英雄に上り詰める。 作者:アマカワ・リーチ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
28/59

27.追放されたローガン

 竜の里で、リートが子龍と戯れていたその頃。



 ――とある名門貴族の家では、一人の男が頭を抱えていた。



 その名はローガン・ベントリー。


 騎士採用試験で、無職のリートに負けた上、不正をしていたことがバレたという男である。


 名門であるベントリー家の跡取りで、魔法使いのクラスも得て将来は安泰――のはずだった。

 だが、それも今となっては……



 騎士試験に落ちただけならまだよかった。

 だが、ことはそれだけでは済まなかった。


 当初、リートが、王女に「見逃してあげてくれ」と頼み込んだことで、ローガンはなんのお咎めも受けずに済んだ。


 しかし、結局第三者の手によって、不正の話が騎士団に広がってしまったらしいのだ。


 ローガンの父は、騎士団の人事院のお偉いさんだ。

 次期騎士団長とまで呼ばれた出世頭だったが、

 息子が騎士採用試験で不正をしたなんてことが広まってしまっては面目丸つぶれだ。



 ――だから、自分が不正をした事実が広まっていると聞いたローガンは、心臓が止まりそうになった。


 今、父親は仕事で家にいなかった。

 だが、噂を知れば必ず戻ってくる――。

 そうなれば――どうなるか、ローガンには想像もつかなかった。



 ――そして、その時は思いの外早くやってきた。


「ローガン様。ご主人様が御帰りになりました」


「――ッ!!!」


 ローガンは硬直する。

 それに対して、執事は冷徹に告げる。


「ご主人様がお呼びです。至急お部屋までとのことです」


 ローガンの喉は乾ききっていた。

 手足は震え、頭がクラクラする。


 だが、それでもなんとか父の部屋へと向かう。


「……父上」


 恐る恐る部屋に入るローガン。


 そんな息子を――父親は冷たい目で見た。


「試験に落ちだけでも一族の恥さらしだと言うのに、まさか不正まで働くとはな」


 父の言葉に、ローガンは地面に崩れ落ち、そのまま額が床にえぐりこむほどこすりつけた。


「どうかお許しを! もう二度といたしません!」


 ――だが、息子の必死の懇願を、父は冷徹に見つめるばかりだ。

 そして一言。


「お前は、今日からベントリー家の人間ではない。今すぐに出て行け」


「そ、そんな! 父上! どうか、お許しください!」


 ベントリーは父の元へとにじり寄っていく。


 だが――


「黙れ!! この恥さらしが!」


 父は剣を抜いて、ローガンに突きつけた。


「――ヒィッ!!」


 剣を突きつけられ、ローガンは後ろにひっくり返る。


「お前のせいで……騎士団長への道が閉ざされたわ!! 今すぐうちから出ていかないと、殺すぞ!!」


 血走った父の目を見て、ローガンは殺すと言う言葉が本気だと感じた。


 そのまま本能的に、全速力で部屋から逃げ出した。


 ――家の外は土砂降りだった。


 雨に打たれ、泥が足に絡みつく中、ローガンは必死に走っていく。

 だが、途中でぬかるみに足を取られて、顔面から泥混じりの水たまりに倒れ込んだ。


 冷たさが、恐怖を塗りつぶしていく。

 そして――代わりに生まれたのは復讐心だった。


 リート。

 あの無職の男。


 全部あいつのせいだ。


「絶対……殺す……」


 雨の中、ローガンはそう呟いた。





  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。