中小企業支援 「コロナと共に」前提で
2020年9月7日 07時39分
新型コロナウイルスの影響が長引けば、中小企業の十二社に一社が廃業を検討する可能性があるという。地域の雇用を担う中小への支援は急務だが、その際にも「ウィズコロナ」の視点が欠かせない。
コロナ感染症の「第二波」は収まりつつある。「三密」を避ける生活スタイルの浸透が奏功したのは間違いないだろう。しかしまだ当面は、友人との飲み会も、家族との外食や旅行も「以前と同じ」とはいかない。気を使って、恐る恐るというのが「ウィズコロナ」の社会のあり方のようだ。治療薬やワクチンがない以上、第三、第四の波も覚悟せねばならず、当然、しばらくは経済活動も以前の水準には戻らないだろう。
そういった観点からみると、東京商工リサーチが全国一万三千社余りを対象に七〜八月に実施したアンケートの結果は深刻だ。コロナ禍が長引けば、中小企業の8・5%が「廃業を検討する可能性がある」という。中小は全国で三百五十七万社だから単純計算で三十万社が該当する。中小は雇用の七割を支える。現実になれば「雇用崩壊」と言っていい事態だ。
廃業には至らなくても、多くの企業が生き残りのために人件費の削減や従業員の解雇に手を付けている。厚生労働省のまとめでは、コロナに関連する解雇や雇い止めは八月三十一日時点で見込みも含め五万人超と、増加に歯止めがかからない。
少なくない数の中小が政府の持続化給付金や金融機関を通じた資金繰り支援でなんとか息をつないでいる。全国の金融機関の貸出金残高は七月に前年同月比6・3%増を記録した。苦境に陥った企業の資金需要に全国の銀行や信金が懸命に応じた結果だ。もう一段の支援として、返済順位が低く資本に近い性格を持つ「劣後ローン」の貸し出し拡大などを求めたい。
政府に求められるのは、いつまで続くか分からないウィズコロナの時代を、やる気のある中小が生き延びるための支援策だ。店舗や事業所の「三密」を解消する改装やオンラインで提供できる新サービス開発への補助金、リモートワーク導入に対する補助金の充実などが考えられるだろう。
日本の経済成長には中小企業の労働生産性の向上が不可欠だし、それにはデジタル投資が近道だ。コロナ対策とも重なり合うこうした動きを行政も後押しすべきだ。中小零細企業はコロナ禍を逆手に取り、思い切った取り組みでなんとか未来をたぐり寄せてほしい。
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