「40過ぎてからが人生最高に楽しい!!」の方も
前置きが長くなりましたが、こっちが聞いてもないのに「40過ぎてからが人生最高に楽しい!!」と言う女に遭遇したときも「嘘ついてんじゃねえよ」と思う。
だって「40過ぎてからが人生最高に楽しい」と言う女の主張をまとめると「痴漢とかセクハラとかされにくくなるし、『若い女』としての役割を求められなくなるから」になるからだ。 性的加害や軽視をされる確率が下がったってことを、「まだマシになった」程度で表現するんならわかるんだけど、「最高に楽しい!!」の根拠とするのって、ちょっと悲しすぎやしませんか?
まあなんつーか世の中は「◯歳以上はババア!!」「ババアは価値がない!!」「ババアは若い女に嫉妬している!!」というような言説が蔓延していて、そんなことを言う頭の悪い男に性的欲望の対象とされてもオエッ! やめてくれ!! という感じなので、彼らの性的対称から外れてラッキ〜☆ という気持ちはわかるのだが、裏を返せば「ババアは価値がない!!」「性的価値が落ちて不幸!!」系の加害をされる機会は増えるので、それを未然に防ぐために「40過ぎてからが人生最高に楽しい!!」と声高に叫ばなくてはいけない別の種類の地獄に足を踏み入れているだけに見える。
40代になるのがわりとイヤだ
私個人の意見を言えば40代になるのがわりと結構イヤだ。単純に体力が落ちるし、再就職もしづらいし、親の老後も不安だし、10代だったらスーツにしつけ糸がついたままでも、お焼香のやり方がいまいち分かってなくても「まあ若いから仕方ないよね〜」と流してもらえてたのが40代になるとマジモンのアホだと思われるようになるし。昔の記憶も薄れていくので、髪を染める自由すらなく靴下の色まで指定され、ニキビだらけの顔は肉でパンパンなわりに食欲が異常で、金はないわ男を見る目もないわ、コンドームをつけようと言うだけで彼氏に嫌われてしまうのではないかといちいちマジで心配していたとかいう若かりし頃の苦い思い出も、都合良くどんどん忘れていってしまうし。
まあなので私は30代になるのもイヤだったし、20代になるのもイヤだったし、なんなら6歳の誕生日を迎えたときも「もう幼児扱いされなくなってしまう……」と鬱になっていた。 こういう気持ちを略してうっかり「歳とりたくない」とか発言してしまうと「ババアは価値がない!!」と言いたいだけの人がほら見たことかと言わんばかりに鬼の首取ったかのように鼻の穴を膨らませ口角泡飛ばしテンションアゲアゲになってしまって大変ウザいので、女は相手を黙らせるための自衛として「40過ぎてからが人生最高に楽しい!!」と嘘をつく。でもそれってババアいじりされるのを防ぐために「いや〜私ももうおばさんなんで(笑)」と先に自分で言って牽制しなきゃいけないのとあんまり違いなくないか?
そもそも男が性的対象ではないとか、性欲がないので一生セックスをするつもりがないなどの理由でちんこのサイズをまったく気にしない女が存在することは否定しないのと同じくらい、40代女性が個人的に「どっちかっつーと昔より今のほうが楽しいかも〜☆」と思っているのを否定したいわけではないが、「ちんこの大きさなんて関係ありません!」とか「40過ぎてからが人生最高に楽しい!!」とかいう、自衛のためにつかされている嘘が女の代表的な\正しい\ポジティブな意見として扱われている世の中は不気味だ。
「40過ぎてからが人生最高に楽しい!!」という呪文を聞けば聞くほど、こんなアホくさい嘘をつかなくてはいけないほど40代というのは過酷なのか、いつか私もこのセリフを繰り返す哀しいモンスターと化してしまうのではないか、という不安が日々大きくなっていく。
Text&Illustration/峰なゆか
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