「目の黒いうちは韓国の土地」と、なぜか竹島にいるセーラームーン

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韓国の「反日感情」はいつ、どこで、どのように作られ、拡大・再生産されるのか?

 国の小・中・高の現場で起こっている信じられない「反日教育」。その暴力性は時に世界を驚かせてきた。そういった実態を紹介しながら、韓国人の「反日感情」はいつ、どこで、どのように作られ、拡大・再生産されるのかについて、日韓関係史が専門の評論家・李東原氏が検証する。

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【写真】世界を驚かせた反日教育の実態とは…

 2018年9月1日、インドネシア・ジャカルタでは、アジア大会の野球決勝戦が日韓戦で行われた。大会に韓国は10のプロチームから選抜した精鋭たちを出場させ、日本はアマチュア選手たちが主軸となっていた。客観的な戦力から韓国チームの優勢が予想され、兵役免除特例のために必死でプレーした韓国が無難に日本に勝って優勝をし、金メダルを獲得した。

「目の黒いうちは韓国の土地」と、なぜか竹島にいるセーラームーン

 国家間のスポーツ試合、とりわけ、サッカーや野球などの球技種目の日韓戦に限っては、必死に試合に臨む選手たちと、これを応援する韓国国民、そして露骨に反日感情を煽るマスコミ。

 案の定、この日も野球解説者は日本を意識した愛国的発言を連発した。そのなかでも特に衝撃的だったのは、「日本には、じゃんけんをしても勝たなきゃ」という発言だった。

 韓国全域に放送される地上波放送で、野球解説者という者が平気で口にした言葉だ。おそらく同日、野球試合を視聴したほとんどの韓国人は、この言葉に何の違和感も覚えなかっただろう。

日本に対するむき出しの対抗心のワケとは

 むしろ当たり前に思っていたかもしれない。しかし、私はしばらく呆然とした。そして考えた。これは病気だ。しかも重症の。

 日韓関係史を勉強している者として、韓国人の反日感情は一体いつ、どこで、どのようにして作られ、拡大、再生産されていき、しかも今も進行中なのか、そのメカニズムが知りたいのは当然のことだ。

学校教育の場で、多様な反日教育が行われている

 自分たちの利益のため、過度に民族主義的な歴史認識を助長することで、一般国民の反日感情を政治的に利用してきた正義連(旧挺対協)に代表される市民団体。

 民族主義的性向が強い文在寅左派政権、このような勢力のイデオロギーとして活動する一部の知識人たちによる意図的歪曲と誇張。そして、何の確認もなしにこれを盲目的に受け入れて拡大、再生産するマスコミ。

昨年、高校生が偏向した教師に立ち向かって訴訟にも発展した

 これらが複合的に作用していることが分かったわけだが、何といっても、学校教育の場で、多様な反日教育が行われていることが一番大きい。

 韓国の小・中・高等学校の歴史の授業、特に近代史の授業時間では日本の植民統治について、過度に事実を歪曲・誇張しているのだ。

 特に、民族主義的左派性向が強い特定教員団体に所属している教師によって、反日教育は主導されている。

 その結果、幼い学生たちは日本に対する偏った歴史認識を持つようになり、これは自然に敵愾心と憎悪心につながるということだ。

 こうした反日教育を受けて育った人々は、結果的に日本に対する強い劣等感と被害意識を持ち、他方では過度な優越意識を抱くようになる。

 2019年10月23日、ソウルのインホン高等学校で起きた出来事を紹介したい。

 ある校内イベントで教師らは一部の生徒たちに、「歴史を忘れた民族に未来はない」「安倍自民党は滅びる」などと叫んだ。

 当時、在学生だったチェ某生徒は、そういった反日スローガンを叫ぶ教師の姿を映像に収め、YouTubeやFacebookなどにアップロードした。

「一部の教師が生徒に反日思想を強要し、生徒を政治的な遊び道具に利用している」と、教師たちの政治的に偏向した教育の実態を暴露した。いわゆる「インホン高事態」だ。

 あの頃は日本の輸出規制措置に対する反発で、韓国内で反日ムードが少しずつ高まる時期だった。おそらく日本でも大きく報道され、ご存じの方もおられる思う。

学校側は教師らに対して「問題ない」という結論を下した

 そして、チェ君をはじめとするインホン高校の在学生らは、「インホン高校の生徒守護連合」というFacebookのアカウントを開く。

 そこで一部の教師らが授業時間に、日韓関係やフェミニズム、チョ・グク元法務部長官の関連ニュースはすべて偽物だと発言するなど、生徒らに偏った考えを注入していると暴露し、ソウル市教育庁に苦情を寄せた。

 学校側はすぐに真相調査に入り、教師らに対して「問題ない」という結論を下した。

 ソウル市教育庁は昨年11月23日、「一部の教師の不適切な発言は確認したが、前後の脈絡上、特定の政治思想の注入や強制、政治偏向の教育活動はなかった」と結論付けている。

 しかも学校側は、映像の中に映り込んだ生徒たちが要請したにもかかわらず、チェ君が映像を削除しなかったという理由で、彼に被害生徒に対する書面謝罪と社会奉仕15時間、特別教育5時間などの処分を下した。

 これに対しチェ君は、「このような処分は、公益通報者への弾圧の性格を持つ報復懲戒だ」と主張し、行政訴訟を起こした。

 そして、チェ君が訴訟と共に起こした執行停止申請は裁判所で一部認定され、懲戒の効力が停止された。

 韓国社会の意見はこの事件をめぐって二分された。ソウル市教育庁の市民請願掲示板の、「例の発言をした教師を処罰せよ」という請願に署名した参加者は、1週間で1万人以上の同意を得た。

 これは担当する教育監の答弁基準に達しており、今までソウル教育庁に寄せられたもののうち、もっとも多くの人が参加した請願となった。

 インホン高校をめぐる社会的関心が高まるにつれ、教師は「政治的中立性を守らなければならない」という意見と「表現の自由を制限するのは行き過ぎだ」という意見に分かれ、真っ向から衝突したのである。

「全国教職員労働組合」所属の教師による、露骨に変更した歴史観の強要

 また、政界でもこの事態をめぐって与党と野党が対立した。

 当時のナ・ギョンウォン自由韓国党院内代表は、「偏向した教育が横行するのは偏向した教育監が当選していることとも関係がある」と政治攻勢をかけた。

 また、「単純に政治的見解を表現するのではなく、子どもたちを政治的道具にするものとみられる」と批判した。

 また、同党のクァク・サンド議員は、「文在寅政権の左寄りの教育が現場の倫理と良心を踏みにじっている」と批判した。

「インホン高校事態」に触発された教育現場での反日教育、政治的思想注入などに対する問題は、韓国社会では、遅かれ早かれ提起されるべき問題だった。

 というのも、その中心に「全国教職員労働組合」(全教組)の問題が横たわっているからだ。幼少年を対象に行われる教育は、責任ある民主市民の姿勢、バランスの取れた歴史意識の涵養を目標としなければならない。

 にもかかわらず「全教組」所属の教師たちは、露骨に偏向した歴史観を生徒たちに強要すると批判されている。

 全教組は、教育の民主化と真の教育の実践、民族統一の主体的実践などを趣旨に、1989年5月、全国教師協議会が主軸になって結成した教師の労働組合だ。

 2014年10月時点で5万3208人が加入。2014年、全国の幼稚園と小中高校の教員数は、48万8000人余りで、全教組への加入率は10・9%だ。

 その後、組合員数の増加で巨大組織になったものの、スタート当時の教育民主化、政治的中立性などの教育基本権の伸張という設立目的を失ったまま、集団利己主義、不法行為、偏った理念教育など、偏った教師の集団になったという批判の声が大きい。

イデオロギー教育の先頭に立つ「全教組」のアイロニー

 今回の「インホン高校事態」に対しても全教組は、「生徒たちは、相手との対話録音、個人情報を含む映像をYouTubeなどに掲載した」とし、「教師と他の生徒たちの人権および教育活動に対する侵害があったことは明白だ」と、該当教師たちの肩を持った。

 続いて、「該当学生たちは被害者たちに謝罪して反省するどころか、学暴委の結果を不服として、行政訴訟とともに学暴委委員たちを相手にした損害賠償訴訟を準備中」とし、「被害者たちに対する心からの謝罪と反省が先だ」と、問題の本質を濁らせている。

 この事件が起きた2019年末は、日本の輸出規制措置に対する反発で、韓国内で反日ムードが高まりつつあった時期だった。だから幸か不幸か、教師の反日扇動は特に注目を浴びなかった。

 しかし私には、教師たちの政治的な中立性問題もさながら、偏った歴史認識がより深刻に思われた。

 特に、全教組所属の教師らは、インホン高校の事件からも分かるように、露骨な反日を扇動するのだ。

 もし、歴史を教える教師が全教組所属の教師なら、その授業がどのように行われるかは火を見るより明らかだ。

 今日、韓国社会の反日思想は徹底的に計画され、意図された官制反日教育による産物だ。

 70、80年代の官制イデオロギーに対抗し、真の教育実践をキャッチフレーズにして始まった全教組の教育運動が、2020年現在、イデオロギー教育の先頭に立っていることはアイロニーと言わざるを得ない。

世界を驚かせた「韓国の子どもたちの絵に表れた暴力性」

 少し昔のことだが、2005年に仁川のある地下鉄駅で開かれたケヤン中学校の学生たちの絵画展。ここから読み取れる反日感情には、驚愕を禁じえなかった。

 絵の主題の大半は、過去を繰り返してはならないということと、日本軍国主義者の蛮行、そして自己反省のない日本に対する報復だった。

 偶然これらの絵は海外に紹介され、大きな波紋を呼んだ。

 この絵を見た外国人の反応は、「やりすぎだ」という一言に尽きる。何よりも外国人は、幼い生徒を対象にする公教育の場において、盲目的な憎悪を募らせる方式で反日教育が行われていることに驚愕した。

 韓国在住のあるドイツ人は、自分のブログで「韓国の公教育で行われていることは愚かで無責任過ぎだ」と非難し、「韓国の教育システムには確かに問題がある」と指摘した。

 そして何よりも外国人を驚かせたのは、韓国の子どもたちの絵に表れた暴力性だった。

 日本に核爆弾を投下する絵、血のついた刀で日本を脅かす絵、日本地図を韓国人が足で押さえている絵、日本が燃えている絵等々。

 これを見た一部の海外ネチズンたちは、公教育の現場であれほど暴力的な描写が認められていることに驚きを隠せなかった。

動員された反共、反日イデオロギー

 実に恥ずかしいことだ。絵の内容もさることながら、このような展示会を企画して絵を描かせた教師たちに、より問題があるのは間違いない。由々しきは、これがこの学校の授業に限られた問題ではないことだ。

 国定教科書、学習指導要領などに代表される国家の統制による偏った教育と各種メディアの歪曲と扇動を通じて人為的に作られた国家観、民族観、歴史観。韓国人は過去、これらを背負っている時期があった。

 このような社会では、個人が理性的自己決定権者としての主体になれないだけでなく、歪んだ価値観を形成し、最終的には特定理念に対する倒錯的盲信を生み出す。

 反共イデオロギーと反日教育がまさにそれだった。

 35年に亘る日本統治で、自ら国民国家を作れなかった韓国が、遅ればせながら近代国民国家としての形態を整える過程で、教育は「国民」という新しいフィクションを創造する道具として活用された。

 そして祖国の近代化を成し遂げるためには、国民の「総和と団結」が必要であり、そのために動員されたのが反共、反日イデオロギーだった。

 韓国社会で反日はもう信念を越えて宗教になった。それでもまだ希望的なのは、宗教は信じたい人だけが信じるものだ、ということだ。幸いに、私は信じない。

李東原(イ・ドンウォン)
日韓関係史が専門の評論家

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月7日 掲載