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クラス「無職」になってしまい公爵家を追放された俺だが、実は殴っただけでスキルを獲得できることがわかり、大陸一の英雄に上り詰める。 作者:アマカワ・リーチ
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12.リートの実力


「――私の負けだ」



 敗北を宣言したのは、ウルスの方だった。


 その言葉に周囲は驚く。


 リートの剣が叩き切られている。誰の目から見ても負けたのはリートだった。

 しかしウルスが自らの負けを認めた。


 その理由をウルスはゆっくり語る。


「――今、私はスキルを使った」


「え?」


 他の者が驚きに声を漏らす。


 勝負はスキル禁止の取り決めだった。

 それなのにウルスがスキルを使った。


 ウルスは、勝負事でズルをするような男ではないと誰もが知っていた。

 だからウルスの言葉に驚いたのだ。


「――正確には、使わざるを得なかった」


 ウルスは、リートの方をまっすぐ見ながら続ける。


「最後の一撃――あれは確実に俺を殺していた。防げないと直感した。だから、スキルを使った」


 ウルスの説明が意味すること。

 それは、リートの最後の一撃が、ウルスの鉄壁を突き破るだけの威力があったということ。


「そんな……ウルス隊長の鉄壁を破るなんて……」


 ラーグの言葉が、その場にいた騎士たちの驚きを代弁する。


 ウルスの防御力は、近衛騎士団で一番とも言われている。

 だが、それを騎士になりたての少年が打ち破ったのだ。

 いくら聖騎士のスキルを持っているにしても、信じられないことだった。


「彼は間違いなく強い。王女様の目は確かだ」


 近衛騎士最強の男がそう宣言したことで、全員が認めざるを得なかった。


 リートという青年の実力を。



 †


 リートとイリスが闘技場を去った後、ラーグがウルスに聞く。


「隊長、手加減したんじゃないんですか?」


 ラーグは、スキルなしの模擬戦とはいえ、近衛騎士最強と言われるウルス隊長が新人に負けたという事実が信じられないでいた。

 だが、ウルスは冷静に事実を受け止めていた。


「確かに様子見をしたのは間違いない。先手を取っていれば、互角には戦えていただろう。でも、あいつの攻撃を受け止めきれなかったのは事実だ。俺の本気の防御をあいつは打ち破るところだったんだ」


「で、でも……、流石にスキル有りだったら、隊長が勝ちますよね?」


 ラーグはすがるようにそう聞く。


 ラーグは、ウルスの実力を誰よりも評価していた。

 ウルスが「自分よりもはるかに強い男」だと知っていたのだ。


 その、“自分よりはるかに強い男”が、新人のリートに負けた。


 自分よりはるかに強いウルスを負かしたリート。


 それはすなわち、ラーグがリートの足元にも及ばないということを示していた。


 だからこそ、リートよりも自分が尊敬するウルスの方が強いという証明が欲しかったのだ。


「流石にスキル有りなら俺が勝てるだろう――少なくとも今はな」


「――今は?」


「器が違いすぎる。俺とあいつとでは」


 ウルスの――近衛騎士団最強の男の――言葉にラーグは戦慄したのだった。


 

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