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SSランクパーティでパシリをさせられていた男。ボス戦で仲間に見捨てられたので、ヤケクソで敏捷を9999まで極振りしたら『光』になった…… 作者:LA軍
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第29話「よぅ……。これを見たかったんだろ?(後編)」

 あ゛?


(……コイツらは何を言っているんだ?)

 リズと顔を見合わせたグエン。

 彼女も、軽く肩をすくめるだけ。


 そりゃそうだ。

「ぱ、パシリのグエンがニャロウ・カンソー倒したってよー!」

「あはははは! ちゃんちゃらおかしいわー!」

 バッチリのタイミングで、可笑しげに笑うマナックとレジーナ。

「──そんでもって、砂漠のA級以上のモンスター倒して、素材を持って帰ってきただぁぁあ?! ぎゃははははは!」

「──うっふふふふ、おまけにこの短時間で生還ですってぇぇえ?! おーっほっほっほっほ!!」


 ゲラゲラと笑う二人。


「「「ぎゃははははははは!」」」

 そして、ギルド中に響き渡る様に、わざとグエンの荒唐無稽な手柄を明け透けにする。


「そんなにおかしいか?」

「さぁ?」

 グエンとリズは顔を見合わせる。


 どうやら、マナック達はグエンの報告が自分たちのそれに負けず劣らずの虚偽報告だと思いこんでいるらしい。

 それをこれ幸いとばかりに、自分たちの虚偽報告と絡めて、どちらも有耶無耶にしてしまうつもりなのだろう。


 なるほど、

 追い詰められたマナック達からすれば、グエンの一見して荒唐無稽な話は僥倖に見えたのかもしれない。


(はは……。好きに笑えばいいさ)


 なにせ、マナック達のやったことは黒も黒。

 真っ黒だ。

 ただ単純にあの地で起こったことだけを端的に報告されてしまえば、彼らの冒険者人生は終わりだと思ったのだろう。

 なんたって、

 ──仲間を攻撃し、囮にして逃げたばかりか、ギルドに虚偽報告。

 しかも、誰も現場を確認できない魔王領の奥地であることを見越した悪質な犯罪だ。


 本来なら、それはそれは、とんでもない重罪になるはずだったのだが…………。

「ひゃひゃひゃ! おかしくって涙がでるぜ!」

「ほーんと、グエンさんお笑いのセンスあるわ」


 ───あーそー。好きに言ってくれ。


 グエンの呆れ顔をどう思ったのか、マナック達は顔をニヤニヤとさせると、勝ち誇る。

 そして、何をそんなに喜んでいるのかといえば、


 …………まぁ、おおよその想像はつく。


 マナック達視点でいえば、グエンが大法螺を吹き始めたのだ。

 ニャロウ・カンソーを倒しただけでなく、

 スキルを使って砂漠まで移動して、おまけのその地にいた凶悪な魔物を倒して素材を持ち帰ったという。


「「「ぶははははははははははは!」」」


 そんな荒唐無稽な話を誰が信じるというのか。

 それなら、まだマナック達の話のほうが信ぴょう性がある。


 グエンとリズが(・・・・・・・)生きていた(・・・・・)という一点を除けば──だけどね。


「ぎゃははは! 嘘をつくなら、もう少しましな嘘をつけよ!」


 ──お前が(・・・)、な!


「おほほほ! きっと、あの激戦ですもの──頭を打っておかしくなったんですよ。かわいそうに」


 ──頭がおかしいのは、お前(・・)だよ!


 マナック達はここが攻め時とばかりに、ゲラゲラと笑いながら次々にグエンを攻め立てていく。


 はぁ……。

「なんで、わざわざ俺が嘘をつかなきゃならんのだよ……?」


 グエンはあきれ交じりでつぶやくが、それを聞いていたマナック達はさも楽しそうに──、



「「「じゃーー。証拠みせろよー!」」」



 キャッキャ、キャッキャと喜ぶマナック達。


「はぁ~…………」


 あーそう?


「……駄目だわ、こいつら」


 んね。


 ──グエンは深くため息をつき、リズは大きく頭を抱える。


「おいおい、おーい! どうしたどうしたぁ? さっきまでの勢いはよぉ!?」

 まるで、自滅してくれてありがとう──と言わんばかりに喜色を浮かべたマナック。

「そーよぉ! こんなんじゃ、てっきり死んじゃったって勘違いしてもおかしくはないわよね? ばーか」


「そうだ、そうだ! 証拠だ。証拠ぉ!!」


 ゲラゲラゲラゲラゲラ!

 おほほほほほほほほほ!

 うひひひひひひひひひ!


「はーい!」

「はーい♪」

「はーーーい!!」


 パン、パン、パンパン♪ と手をたたきはやし立てるマナック達。


 っていうか、3馬鹿。


 パン♪

 パぁン♪

 パンパーン♪


 あ、そーれ。


「しょーこー!」

「しょーこー♪」

「ショーコー!」


 パン♪

 パぁン♪

 パンパーン♪


 おーおーおー!

 ノリノリだねぇ君たちぃ。


 はい♪

 はぁい♪

 はっは~い♪


 おーおーおー!

 のってきたー!


 しょーこ!

 しょーこ♪

 しょーこー!


「「「証拠を見せろ────!」」」


「───あいよぉ♪」




 ────ドンッッッ。




「「「しょ…………♪ ぅ、んこ?」」」


 マナック達の眼前に燦然と。

 そして、デーン! と、テーブルに置かれたのは巨大な生首だった。

 未だ鮮度を保ったそれは、ずっとグエンの荷物の上に布を巻かれて鎮座していたのだ。


「「「………………ふぁ??」」」


 デローンと、恨めし気に舌を垂らしたその首といえば…………。


「にゃ、」

「にゃろう……」


 ツヤツヤと光る鱗に、

 コンコンとよく響く分厚い骨。


 そして、なによりも巨大なリザードマンの特徴を残したそれは────!


 ま、まさか………………。



「「「ニャロウ・カンソぉぉぉおおー?!」」」




 ギルドの手配書にも描かれている、例の凶悪なモンスターの姿絵そっくり。


オフコース(その通り)

 ニッコリ。


 密かにリズとハイタッチを決めたグエンは、ニッコリと微笑む。


 マナック達が渇望してやまない証拠(・・・・・・・・・・)がそこに。


 SSS級指定の魔王軍四天王の一角。ニャロウ・カンソーその人の、生首であった…………。



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