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SSランクパーティでパシリをさせられていた男。ボス戦で仲間に見捨てられたので、ヤケクソで敏捷を9999まで極振りしたら『光』になった…… 作者:LA軍
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第25話「光の戦士(笑)は、驚愕する」

 ところ変わって、ギルドの応接スペース。

 ギルドの喧騒を少し遠ざけたここには、ギルドの女性職員とマナック達だけがいた。


 ここでは、ボロボロの格好のまま、命からがらニャロウ・カンソーの領域から逃げ帰った『光の戦士』の面々はシェイラを除き、全員でギルドに報告していた。


 彼らは沈痛な面持ちで、ソファーに深く腰掛けたマナックたち。

 今は、膝を付き合わせての事情聴取の最中だ。


「───というわけなんです……」

「なるほど……」


 クエスト失敗(・・・・・・)のいきさつを話すマナック達。

 VIP専用のソファーに深く腰掛けつつ、深く頷き、深くため息をつく。


「私たちも全力をつくしました……」

「うんうん」


 レジーナとアンバスも相づちをうち、マナックに同意する。


「そうですか、事情は分かりました……」


 調書を作成中の女性職員の声に「うぅっ……」と、涙をにじませたマナック。

 それを追うようにレジーナも、ヨヨヨと目を覆って悲しみの姿……。


 パーティ一の豪傑男のアンバスだけは、護衛のように壁際に立ち、仲間を見渡せる位置に。

 そこで仁王立ちになり、一言も発せず下を向いている。

 ……プルプルと肩を震わせているのは──悲しみのせいだろうか??


「そうですか……。グエン氏とリズさんが――」


 マナックにつられるように「ウウッ……」と涙ぐむ女性職員は、目を真っ赤にしながらも調書を取りまとめていく。


「はい。ぐすん……。──先ほどお話しした通り、俺たちも全力は尽くしました。で、ですが、どうしてもグエン達を救うことはできませんでした……」


「えぇ、えぇ……」


 顔を覆って、ポロポロと男泣きを見せるマナックに、ギルド職員も嗚咽を漏らす。

 どうやら、彼女は個人的にリズと親交があったらしい。

 ハンカチを取りだし涙を拭う。


 その隙をついて、依頼失敗の顛末書にチラリと目を走らせるマナックは、すばやく文面を読み取り、内心でにやりと笑った。


(へ……。ぜんぶ信じてやがるぜ)


 調書に踊る文面はマナックの供述通り。


(うまくいきそうね……)

(あぁ、リズのミスなら、俺たちの落ち度じゃねぇ。これで違約金は払わなくていいだろう。それに、隠蔽もばっちりだ)


 ひそひそと言葉を交わすマナック達。


 ……どうやらギルドが斡旋したリズ(・・・・・・・・・・)役立たずのグエン(・・・・・・・・)に全責任をおっ被せることでうまくまとまりそうだ。


(うふふ。まさか、グエンがこんな形で役に立つなんて)

(ちげぇねぇ。リズだけの死亡ならギルドも疑いをもっただろうけど、旧来の仲間が死んだんじゃ嘘とは思うまい)


 ギルド職員に気づかれないように薄く笑いあう、マナックとレジーナ。

 アンバスは一層肩を震わせている。


 それにしても彼らはなぜ嘘の供述をしているのだろうか?

 それは単純な理由。

 お金と信用の問題が念頭にあるからだ。


 なぜなら、

 ……依頼失敗は違約金を伴うの常である。


 依頼料の何割かと、

 そして、ランクアップに繋がる貢献度。

 ここに大きく影響を及ぼすのだ。


 しかし、事情があればその限りではないという。その事情というのが、ギルドの落ち度や、やむを得ない不測の事態などなど。

 この場合、マナックが画策しているのは、ギルドの落ち度というものだった。

 そのため、リズとグエンに依頼失敗の責任を押し付けようとしているのだ。


 だが、ギルドとて甘くはない。

 キチンと取り調べて判断を下すのだ。

 それがゆえの事情聴取。


 しかし、マナックたちは巧妙だった。


 つまり、グエンかリズだけ(・・・・・・・・)が死んでいたなら、『光の戦士』の依頼失敗は明白であっただろうが、古株と新人が同時に死んでしまったのだ。

 マナックたちの話の信憑性はいやがおうにも増す。

 そして、マナック達は自身の保身のためにでっち上げ工作を行っているのだ。


 ───どうせ証拠はない(・・・・・)


 この調書だけが明確な証拠(・・・・・・・・・・)というわけ。


 目論見が成功しそうな雰囲気に、ニヤニヤとした雰囲気を隠せないマナック達であったが、そこに──。



 ザワッッ!!!



 突然、ギルドの広場が大きな喧噪に包まれる。

 その喧騒は収まらず、さざ波のようにギルド中に響き渡った。


「(ち、うるせーな……)」


 マナックが、思わず呟いた一言にギルド職員は顔を上げると、


「はて?──何かあったのでしょうか? 今、グエンさんの声が聞こえたような気がしたのですが……」


 目を腫らしながら、首をかしげるギルド職員。


「え? は、ははっ! そんなはずありませんよ、二人の最期はこの目でしっかり──」

「ええ。私もあり得ないと神に誓えますよ。あの二人は勇敢に……そして、惜しくも天に召されました。私もこの枢機卿(カーディナル)の名において──」


「うんうん」


 マナックとレジーナがそろって、あり得ないと言い切り、アンバスもうなづき同意する。


 ───そう!


「「「大事な仲間の(我らの)グエンは勇敢な最期でした!」」」


 目をキラキラと輝かせながら、グエンを思う『光の戦士』たち!

 そのパーティの示す名の通り、まさに光。

 輝かしい実績と、光のごとく清らかな───。




「────誰が勇敢な最期だって?」




 にょきっと顔を出した、

 我らがグエン………………。



 って───?! グエン!!??


「「「え゛?」」」



「よぉ!」

「ただいまー」



 と、



 死んだ男がひょっこりと。

 ついでに、死んだ女もちょっこりと。



 カチーンと硬直したマナック達の前に五体満足で現れた。

 勇敢な最期を迎えた我らがグエンの帰還……。


 パッカーと口を開けた三人は、思わず。


「ま、ままままままま、マジ? うそぉ?!」

「え、ええ?! じ、じじじじょ、ジョーク?」

「ほ、ホワィ?! リアリィ?? ふぉぉ?!」


 おーおーおー。

 三者三様。楽しい反応だねー……。


 くくくく……。

 マナックよぉ───。


「よぉ……」


 これから、なんて(さえず)ってくれるかな。


「───帰って来たぜ……。光の果てからな」



 ま、


 ま、


「「「───ま、マジまんじぃぃ?!」」」

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