第23話「よぅ……! シェイラ……」
「――よう、シェイラぁ……」
「ひぃ?! ぐ、ぐ、ぐ……」
まるで
彼女は、入り口から堂々と二本の足で入ってきたグエンとリズの姿に気付くや否や、一瞬にして顔を青ざめさせて二の句が継げないようだ。
──あぁ、いい顔じゃないか。
そして、その顔を忘れるはずもない────『
そうとも。
この今にも漏らさんばかりのチビッ子こそがッ!!
命を懸けてまで救出してくれた恩人を、無情にも見捨てていったクソ恩知らず。
誰あろうか。
もちろん、『
もう、いっそのこと二つ名を改名し『恩知らず』にすればいい。
──なぁにが、「ごめんね、グエン……!」だ!
ゴメンで済んだら、衛兵はいらねぇんだよ!!
「……しばらくぶりだな」
「う、うそ…………」
グエンを下から上までながめ、そして再び顔を見つめて────真っ青になるシェイラ。
「うそ、うそうそッ!! ど、ど、どーやって?!」
先ほど取り落とし、足元に転がった魔法杖が騒々しい音を立てていても気づかぬほどだ。
「──……ほ。ほんとに、ぐ、グエン?」
顔色はもはや、蒼白から土気色。
そして、今は真っ白になるどの変わりようで、ガタガタと震えている。
「あ、あ、あ…………」
あ────。
ドサリと、しりもちをつくとズルズルと後ずさる。まるで、イヤイヤをするように力なく首を振るシェイラ。
足に力が入っていない様までがありありと見えた。
「……どぉ~したんだよ?」
グエンはわかっていつつも、聞く。
あえて聞くそれに、根性が悪いと言われればそれまでだが、こんなに動揺してくれるんだ。もう少し反応を見てもバチはあたるまい。
「ぁ、あぅあぅ……」
そのまま、何度も何度も首を振るシェイラ。
そして、
「グ……グエン、い、いいいい、生きて……?」
「────あ゛?」
生きてる……………………だと?
「ふ……ッ」
ふふふ。
ふふふふふふふふふふふふ……。
「ひっ!」
突如、怒気混じりの含み笑いを漏らしたグエン。その顔といったら───!
その表情をまともに直視してしまったシェイラが悲鳴をこぼす。
「ひぃぃぃぃぃい!」
いまにも失禁せんばかりに、顔を青ざめさせているが……、くくくく。
いいねいいね、その表情ぉお。
「あははははははは、」
あーはっはっは──────。
「ぐ、グエン? アンタ…………」
呆れたような顔のリズと対照的に、シェイラは滑稽なくらい怯えている。
「ひあぅ……!」
だが、リズは邪魔をしない。
彼女とて、見捨てられたのは同じなのだから……。
「──生きてるかってぇぇええええ?!」
はっはぁぁーー!!
そりゃあ~、生きてるともさ。
ニーーーーーーーッコリと、笑うグエン。
そして、その表情のまぁー凶悪なこと……!
その凶貌をまともに直視したシェイラは、ついに口をわななかせながら、
「ご、ごめ――」
「──あ゛?!」
ゴメンっつったか、今? あ゛あ゛あ゛ん?!
「おぅおう、おぅおう──聞こえねぇよ……!」
んぉぉう?
「だ、だから──ご……」
ははは、今さら何を言うつもりだ?
今さら、どうするつもりだ?
あははははははははははは─────……。
あーーーーーはっはっはっはっはっはっはっはっは!!
「はははははははははははははははははは!」
グエンの豹変ぶりに卒倒しかねないほど、シェイラは怯えている。
だが、グエンはむしろその様子を楽しみ、
舌なめずりせんばかりに見下ろすと、
───おう、ごらッ!
ダぁン!!
と、床を激しく踏み叩き。
「よぉ──…………シェイラぁぁあ。今さら何を
「ふええええッ…………!」
怯えたシェイラを追い詰める。
……さーて、どうしてくれようか?!