第22話「よぅ……! ここであったが百年目……」
ざわざわ
ざわざわ
あっという間に辺境の街まで戻ってきたグエン達。
リズに至っては、いまだに事態が呑み込めないのか、目を白黒させつつも、時折グエンに掴みかからんばかりに質問したり、意味もなく体をぺたぺた触ったりしているが……。
おぅおぅ……。大丈夫かこの子?
「うそ、うそ……。まさかそんな……。ええ? い、一瞬で街に??」
うん。せやで?
「いーえ、嘘よ。……嘘。きっと、嘘よ──。アタシはとっくにニャロウ・カンソーに食われて、カラフルな排泄物になってるのよ」
いや、ちゃうって。
グエンさんのスキルでんねん。
っていうか、排泄物て……君ぃ。
「それとも、砂漠の熱でやられて?……いえ、」
「おーい。そろそろ戻ってこーい」
ぶつぶつ……。
ぶつぶつ……。
あー……────。
だめだ、この子。
頭が状況についていかないらしい。
だけど、リズさん? そろそろ……。
「……ついたぞ? 中に入るけど、大丈夫か?」
グエンたちが到着したのは冒険者ギルド───リリムダ支部。
だが、リズがいまだにぼんやりしているので、グエンは仕方なく荷物を担いだまま、リズの手を引いて目的地である、その建物の入り口をくぐった。
※ ※
カラン、カラーン♪
軽やかなカウベルの音を響かせるそこは、言わずと知れた冒険者ギルドの中。
その、辺境の街リリムダ支部である。
あのニャロウ・カンソー討伐の依頼を出した街のギルドといえばわかるだろうか。
つまり、クエスト完了報告先&グエンの背負っている荷物の納品先なわけで────。
ざわッ!!!
グエンが踏み入れた瞬間、ギルド中が波打ったように喧騒が伝播する。
(ん?? なんだ……?)
「お、おいおい……! 見ろよ、皆ッ! グエンだぞ?!」
ざわざわっ!!
「え? あ、あれ? グエンって……それにあのリズって新入りも?」
「嘘だろ?! し、死んだって、ついさっき……?! え? どゆこと?」
ざわざわ
ざわざわ
「な、なんか注目されてるな……。いや、それにしてもリズ、いい加減───」
「え? あれ? ここ、ギルド??」
しーーーーーーーーん
一瞬だけ静まったギルド内が、再び喧騒に包まれる。
その空気を敏感に感じ取ったのか、ようやくリズの目に光が戻る。
しばらくキョロキョロしたかと思うと――。
今の状況をなんとか認識したらしい。
「大丈夫か? 状況理解できてるよな?」
「え、ええ。完璧とはいえないけど、アンタが規格外の奴だってのはなんとか、ね」
頭を押さえながらリズがうなづく。
色々言いたそうだが、深く考えないようにしたらしい。
うん、結構結構。
じゃあ、そろそろギルドに報告に───。
「あ」
誰かの小さな声と困惑。
そして、
「ひ、ひぃっ!」
ドサリと尻もちをつく気配。
さらにはカランカラ~ンと、
「ん?」
「あらまぁ……」
その時にはグエンも、
そして、
ようやくエンジンのかかってきたリズも気付いた。
ひとりでボンヤリと入口脇のクエストボードを眺めていたらしい、小さな影……。
新調したらしいローブに、
見た目も幼いその少女は────……。
シェイラ………………。