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SSランクパーティでパシリをさせられていた男。ボス戦で仲間に見捨てられたので、ヤケクソで敏捷を9999まで極振りしたら『光』になった…… 作者:LA軍
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第18話「すいません、水出しすぎだと思います(前編)」

 ───ザバァァァアアアアアアアアッ!



「キャッホーーーーーイ!!」


 バッシャーン!!


「いやっほーーーーーーー!」


 ドッポーン!!


「「(ぶくぶくぶくぶく……)」」


 一面に広がる水面に飛び込む、リズとグエン。


 島のようにプカプカと浮いているのはかつて砂丘だった場所らしい。

 だがそれらは、いまや湿った砂の小島でしかなく、あたり一面は澄んだ水で覆われていた。


「「(ぶくぶくぶくぶく……)」」


 そして、水面に浮かびあがった二人の頭。

 勢いよく水を割ると───。


「ぷふーーーー!!……生き返るぜぇ」

「ふはー!!……水っておいしいぃ」


 ゴクゴクと、

 体ごと水に浸りながら、リズが思う存分水を飲んでいた。

 もちろん、グエンも微笑みながら手で水を掬い直接飲む。


 ぶはぁぁ……!


「あー…………助かったー。まさかトリアイナに水を出す能力があるなんて」

「ほんと、ほんと。ニャロウ・カンソーを倒してなきゃ、死んでたわ」


 ドプンッ! と、再び水に潜り、縦横無尽に泳ぐリズ。

 それを水面から見つめるグエン。


 人魚のようにスイスイと元気に泳ぎ回るリズ。

 キラキラと輝く透明な水と、青く静かな水中。


 その中を楽しげに泳ぐ彼女は実に美しかった。


(綺麗だな……リズ)


 彼女が泳ぐ水はどこまでも広がっている。

 そして、水深は深い……。


 この水はどこから来たのか?


 ……そう。あれから──────ポーションで傷を癒したあとは、乾燥死(ドライアップ)を待つのみなった二人。


 一時は覚悟もしていた。


 だがそんな時、

 リズが『トリアイナ』の効果を思い出したのだ。


 ニャロウ・カンソーからドロップした超レアアイテム。

 伝説の海洋神が持っていたとされる、これまた伝説の銛───……トリアイナ。


 その能力は、なんと水を生み出す能力だった。


 (いわ)く。

 その昔、海洋神の怒りに触れた人類がトリアイナから沸きだす水によって都市ごと沈められたと言われる伝説。

 それが真実であると証明せんばかりに、呆れた性能を持つ伝説のアイテムだった。


 なぜなら、見ての通り。

 実際にその効果は、すさまじいものであった。


 今、砂漠の一角を満たした水は全てトリアイナが生み出したものだ。


 最初は、半信半疑ではあったグエン。

 だがリズのいうとおりにトリアイナの能力を解放すると、出るわ出るわ! まー出るわ! あきれるほど、水がどっぷんどっぷんと湧き出した。


 そして、この乾いた大地をあっと言う間に水源に変えてしまうほどの水量で覆いつくし水没させた。

 もしグエンが止めなければ、砂漠全体がこのまま水没してしまうほどの勢いであった。


 だが、お陰で二人は大量の水を手に入れ、そして思う存分にありつくことができた。


「ぷはぁ!!」


 そうして一命をとりとめ、優雅に水泳としゃれこんでいるわけだ。


「綺麗だな……」


 キラキラと輝く水面と、人魚のようにスイスイと水を泳ぐ褐色肌の少女。


「ぷぅっふぅー!」


 ざばっと水面を割って顔を出したリズがニコリとほほ笑む。

 その顔を直視して柄にもなく赤面したグエンは思わず視線を逸らす。


(お、落ち着け俺───……こんな何歳も年の離れた子に何をドキドキしてるんだ)


 オッサンゆえ、どうしても若い子との距離感に慌ててしまう。


 下手なことを言ったりして、変態だの、ロリコンだの、なんだのと言われて、ギルドに訴えられたら堪ったものじゃない──────って、あそうか。


(リズはダークエルフだから、俺より年上か)


 ゴンッッ!


「あだ!」

「なんか失礼なこと考えてたでしょ」


 プクゥと頬を膨らませたリズが、ジト目でグエンを睨む。


「か、考えてねーよ! そ、それより、そろそろ上がろうぜ。この日差しとはいえ、長く浸かってると全身がふやけそうだ」

「ぶー。絶ッ対、失礼なこと考えてたしー」


 ブツブツと言いながらもリズが砂丘の上によじ登り、服を大雑把に絞った。


 あとは太陽に任せれば、すぐに乾くだろう。


 彼女の健康的な褐色の肌が、太陽と水滴にキラキラと輝き一種幻想的ですらあった。


 そして、

 グエンも『トリアイナ』を砂丘のてっぺんに突き刺し、いまや狭い小島となったその上に腰を下ろす。

「すげぇ光景だな……」

 そうすると、二人の目の前にはキラキラと光る水面だけがあった。

「ほんとに……」

 まるで、小さな無人島に流れ着いた二人のようだった。

 日差しで少し上気したリズの横顔が、しっとりと輝いている。

 それをじっと見ていると、フト彼女と目が合う。

 ドキリ───。


「…………ところでさっき、アタシのこと年増だとか思ったでしょ」


 ギクリ!!

(う……。鋭い)


「アタシ、そーいうの敏感なんだから」

 ぷー。と唇を尖らせて不機嫌そうな顔のリズ。


「ご、ごめんって。悪気はなかったんだ……それより、」

「あ、あからさまに話題を変えたなー。まぁいいけど、なに?」



 あー……なんだっけ?

 あ、そうそう。



 ───なぁ、リズ。



「えっと……。あの時、どうして俺の味方をしてくれたんだ?」

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