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SSランクパーティでパシリをさせられていた男。ボス戦で仲間に見捨てられたので、ヤケクソで敏捷を9999まで極振りしたら『光』になった…… 作者:LA軍
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第16話「ライトニング! これがライトニングパンチだッ」

「な、なんじゃこりゃぁぁあああああああ!!」

「きゃぁ!!」



 ─────なんじゃこりゃぁあああああ!!


 ──なんじゃこりゃぁぁああああ!!


 なんじゃこりゃぁぁああああ!!



「な、なにこれ……?!」

 うわ……!

 敏捷の値がやべぇ……───。


「やばいのは、グエン。アンタよッ!!」


 飛び上がって驚くリズのジト目すら気にならない。

 だって───……。


(なんだよ、敏捷だけが9999って!)


 その他のステータスなんか、Lv初期のそれだぞ?!


 どーりでリズの張り手一発でぶっ飛ぶわけだ。

 これが、『再振りの丸薬』の影響か……。


 二度と割り振りが出来ない呪いの薬。


(いや、それは覚悟していたこと)


 それよりも…………。

 あれ?


 なんだろ、

 称号が、なんだか変な気が──────。


(う、ううん? 俺ってたしか「パシリ」だったよな? 無我夢中でステータスを割り振ってる時、なんか色々称号が目まぐるしく変わったような気がするけど───……)


 パシリから音速へ


 そして、

 音速から───……。



「ひ、光?」



 なにか、気を失う前に変な称号を見たような気がするんだけど……。

 なんだったっけ?


「光、光……。ひかり───」


 ステータスオープンっ!



 ───ブゥゥン……。



名 前:グエン・タック

職 業:斥候

称 号:音速(スピードオブサウンド)(ライトニング)(NEW!!)

(条件:敏捷9999を突破し、さらに速度を求める)


恩 恵:光速を得る。光速は光の速度、まさに光そのもの

(光)アナタは光の速度を越えました。

 ※敏捷ステータス×30800000

 ※光速時の対物理防御無限

 ※光速時は、攻撃力=1/2×筋力×敏捷の2乗


体 力:  32

筋 力:  14

防御力:  20

魔 力:  29

敏 捷:9999(UP!)

抵抗力:  12


残ステータスポイント「+588」(UP!)



 うん、うん、うん。


 敏捷9999!……我ながら、相変わらずゴキブリなみの素早さだな。


 いやいや。むしろ、ゴキブリよりも速い自信だけはある…………。


 こう~……カサカサカサカサカ! ってね。


 それにだ。

 よくみれば、残ステータスポイントも少し上がってるぞ。レベルがあがって、獲得したということか。


 これは、ニャロウ・カンソーを倒した経験値の恩恵か……。


 で────……。

 で、だ。


 うーーん??

 うん……なんだろ。変だな?



 うん……──────。


 うーん……。


 うんんんん?!


「……って! あ、あああ、あれ? やっぱり見間違いじゃない。何か、ステータスが───」




 ステータス確認……………………。

 称号「光」




 ほう。

 光………………。



「……………………………………()(ライトニング)?」


 た、たしかにあのとき。

 ニャロウ・カンソーと相対したあの刹那に、グエンはそれをみた……。


 光の速度と書いて、「光」「速」の世界。


 称号。(ライトニング)



 ……って。



(ライトニング)だぁぁ───!!??」

「きゃあ! もう!! なんなのよー?!」


 妙な称号を得ていたグエンは素っ頓狂な声をあげる。

 その声にビックリして目を丸くするリズ。

 心臓を押さえて、バックンバックン……!


「ど、どどどど、どうしたの? な、ななななに? え、なに?」

「あ、ごめ───」


「え、ええ、え?! お、襲われちゃうの?!」


「い、いや。その─────……」


 ()(ライトニング)???

 称号「光」ってなんだよ!?


「いやーん。や、やばいわ……! こんな僻地で男と二人?!」

 なんか変な妄想してる残念エルフ娘と、

「えっと、な、何て言えばいいのか。その……なんだ、ブツブツブツ───」

 キョドリまくりの残念オッサン。


「………………り、リズ!」

 びくぅ!!

「な、なんなななな、なによ?! へ、変なこと考えてないでしょうね!」


 キュッ、と体を抱きしめるリズ。


 周囲には何もない砂漠だ。


 たしかに、

 変なことを考えてもおかしくは───……って、ないないない。


 そーいうのはない!!


「いや、そう言うんじゃなくて──そ、そのぉ、ステータスがおかしくてさ」

「はぁ? アンタのステータスは元からおかしいでしょ?」


 うん。

 おかしいけど───って、

「言い過ぎだっつの! そうじゃなくて」


 そうだ……。

 これだ──────!!


 おかしいのは、新称号。


 称号名は…………。

 ()

(ライトニング)──────??」


 なんじゃこりゃ……!?

 た、たしかに見覚えはあるけど!!


 そう、あの刹那の世界中で、

(俺はこの称号を得たあの一瞬で──……)


 そうとも。

 意識を失う寸前にぶちかましたあの一撃ッ!



 今。いま、思い出した!!


 あのとき……。

 あ、あの時ぃッッ!!



 ※ 回 想 ※



《ウジャアアアアアアア!!》


 グエンを挑発するニャロウ・カンソー。

 その手には吐血してグッタリとしたリズ。


 そして、対峙するのは満身創痍のパシリ野郎こと、グエン!


 いま、ふらふらのグエンに訪れたのはステータス画面が異常をきたしたまさにその時であった。


 最後に一矢報いんとして───!


「こんちくしょぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 実績(アーカイブメント)解除(コンセレーション)───!!


 カッッッ─────────!!


 新称号付与───!!



 称号「音速(スピードオブサウンド)」⇒「(ライトニング)」(NEW!!)



「な、に───?!」


 なんだよ、

 何が起こった?

 今、何が起こったんだ?!


「なんだ、この称号は……! なんで今?!」



 ()(ライトニング)だと───…………?!


 だったら、


  だったら!


   だったらぁぁあ!!


    「俺のパンチは────………」


 グエンが新たな称号を得た瞬間。

 目の前の景色がグニャリと歪む。


      「───光を超える!!」


 グエンの踏み込みと同時にグニャリと歪む。


 今まさに、ニャロウ・カンソーに食い破られんとしていたリズの姿もブレて……。

 そして、ニャロウ・カンソーの姿もブレて……。


 景色が……、

  遅れて……、

   見えて……、

    くるよ───。


 ブワッッッッ!!

 一瞬にしてグエンの視界が闇に閉ざされる。


 それは可視光を置き去りにした光の世界!


 そう。グエンパンチが!

 光速のパンチが!!

 光が、運動エネルギーを攻撃力に変える!!


 それは音速の比などではないっっっっ!!



 その瞬間、グエンの攻撃力は──攻撃力=1/2×14×敏捷(9999×3080000)の2乗


 ……つまり、無限を超越した「何か」だ。


 ───うおおおおおおおおおおおおッ!!!


 当然、

《ギシャァァアアアアアアアアアアア!?》

 ニャロウ・カンソーに知覚できるはずもなく。



       「──光速パンチ(ライトニングパンチ)だぁああ!」



 カ─────────!!!



 光と化したグエンのパンチ。

 そりゃぁ、もう……。、


《ウジョッッ──────……コ?》



 ……ボぉぉぉおおンッ!!



 べちゃべちゃと、体の残骸が降り注ぎ。

 断末魔の叫びを残して、ニャロウ・カンソーが弾け飛んだ。


 そして、

 何もかもが背後に置き去りになったような景色の中───そして、その空間の中心にグエンはいた。

 ……リズとともに!


「……ッッッ!」


 空に輝く星々が点から線へと糸を引き。

 森の木々は塗りつぶした絵画のようにグニャリと潰れて色のみが後を引く───。


 世界はまるで失敗した絵画のごとく。


 描き途中のそれを、腕で横に擦り付けてしまった失敗作のように──────!!


 それは一言でいうなら光の世界。


 神々のおわす領域で、人の達しえない天上の世界だ。

 だが、ここにグエンはいる!

 そして、


「リズ──────!!」

「グエン!」


 そのなかで、光輝く「物理防御無限」の防核に包まれたグエンとリズ。

 それはグエンの体を中心として球体の形で広がっており、

 そこに触れたあらゆる物理法則を無視して、全て弾き、削ぎ落し───ぶち抜いていった。


 そして、ようやく景色が速度を取り戻したとき。


 まるで空気の膜を抜けたように、グエンは先ほどと一転した景色の先にいた。


 徐々に、徐々に。


 光を感じ、

 熱を感じ、

 音を感じるにつれ、

 徐々に速度が落ちていく───。


 そして周囲の風景が。……空気が。……空間が変わる。


 無敵の防核はうっすらと溶けていき、

 肺に酸素を感じるように分厚い空気の膜を叩き抜けると遂にグエンは地面に降り立った。



「うっ!」

「目が……!」


 ようやく降り立ったのは、ろくに名も知れぬ砂漠地帯。


 あの魔族の支配する湿地帯からは何マイル離れていることだろうか。

 すくなくとも、数マイル、いや、数十、数百という単位ですらない。


 もしかすると、大陸すら違うのではないだろうか?


 だが、それほどの「跳躍」をしたにも関わらず、グエンとその腕に抱締めたリズは無事だった。


 ボロボロになった手足は変わらず、


 マナックの拳に潰された臓腑と割けた肋骨の刺さったそれ。

 アンバスに刺された足の傷からは今も血が流れている。



 …………だが生きている。



 あの死地から二人は生きて逃れたのだ。


「ど、どこだ。ここ??」

「アタシが知るわけないでしょ!」


 抱えられたままプリプリとリズが怒る。

 ああ、よかった二人とも生きていて……。


 それにしても、

「グエン……ひどい恰好」

 見ればグエンの体は全身血まみれだ。

「リズもだろ」

 二人とも血塗れだ。


 ……否。


 これは、グエンとリズの血ではない。




 これは……。

 この緑色の血は──────?


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