第9話「すいません、こいつ等に期待するだけ無駄です!」
ズンズンズンズンズン!!
《ギシャァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!》
ビリビリと震える空気に、グエン達の背中が凍り付く。
そしてそれは、
逃げたくせに、いまだ前方でモタモタしていたマナック達にも伝わったらしい……。
「げ!! 嘘だろ?!」
「な。ば、バカな!! こ、こっちに連れてきやがった……!」
「じょ。冗談じゃないわよ!!」
マナック、アンバス、レジーナ。
この、新3バカの連中と来たら…………。
「ちょ、ちょっと……。な、何やってんのよ、アンタ等!」
リズがそこでようやく気付いた。
グエンは知っていた。
もちろん、シェイラも──────。
「何を……。何を! 何を
そう。
マナック達は迎撃態勢など取っていなかった。
どうやってリズを送り出したか知らないけど、彼ら基準では
それを、あろうことかグエンが放棄した荷物の仕分け直しに使っていやがった。
しかも、その最中で揉めたのだろう。
誰が重い荷物を持つかどうかで、あーだこーだと……。
ただ明確にわかるのは、散乱した荷物とマナック達が
だから当然、
「ば、ばばばばば、バカ野郎! 何で連れて来た!! せっかく時間を稼いだのによぉお!!」
「くそ!! に、逃げるぞ、俺は逃げるからな!!」
罵倒するマナック。
見っとも無く、荷物を放棄して逃げ出そうとするアンバス。
「だから言ったのよ! さっさと逃げましょうって!!」
そして、そんな甘い考えをニャロウ・カンソーが見逃すはずがなかった。
《ギシャァァアアアアアアアアアアアアアアア!!》
「──く。無理ね……。これじゃ逃げられっこない、このままじゃみんな死ぬわ」
一人吐き捨てるように
「な?! そ、そんな! どうすんだよ!」
「くそ、グエンの奴!! 余計なことを!!」
はぁ? 余計な事だぁ?!
仲間を助けるのが余計なことだって───?!
「──ふざけんな! このくそ野郎どもがぁぁっ!!」
ようやく追いついたグエン達。
一度足を止めて肩で息をするも、マナック達に掴みかからんばかりの勢いで迫る…………。
が、
「あーあ……。なんでこうなるのかしら」
憤怒の表情で駆け寄るグエンを見て、首を振ったレジーナ。
天を見上げ、ポツリとこぼす。
「しょうがないわね。……………こうしましょ?」
そして、視線を元に戻すとゾッとするほど冷酷な目をみせるレジーナ。
「──こうなったら、誰か一人が犠牲になるの。……そうすれば今度こそ時間を稼げるわ」
いけしゃあしゃあと、言い放ったレジーナ───。
「な?! お前、一度目ならともかく───……ゲフっ」
え?
「へ。そうだな。なら、
グエンの腹に突き立つマナックの拳。
一瞬で肉迫され、容赦のない一撃がグエンを襲う。
内臓が圧迫されて思わず口から血が……。
「ぐ、グエン……?」
「ブフ……」
パタタっ、と血が地面に飛び散り、ガクリと膝をつく。
そのまま、シェイラを抱きしめていた手が離れ、彼女が地面に降り立ち──彼女のその視線がオロオロとマナックとグエンの間で交差する。
「お、おま…………グフッ」
「お、しぶといな───アンバス!! やれッ」
「あらよっと!!」と、さらに追撃の一撃が。
……アンバスの野郎がニヤ付きながら、グエンの足に剣を突き立てていた。
「ぐああああ!!」
「へ、へへ。ち、ちゃんと餌は動けないように、し、ししし、しとかないとよ」
意外にも少し声が強張っているアンバス。
さすがに、仲間に直接に刃を刺すのは抵抗があったのかもしれない。
だが、小者らしく強がり震えた口調を隠すアンバス。
そして、ついに───。
「あっぐ───」
…………ドサリ。
「ぐ、グエン? グエン?!」
驚いた表情のシェイラだが、その肩をグイっと引き寄せたマナックによって引き離される。
そして、一連の惨劇を茫然と見ていたリズがついに叫ぶ。
「な、な……」
信じられないものを見る目で…………そして、
「何やってんのよアンタたちは──────!!」