第32回東京国際映画祭 ケリング「ウーマン・イン・モーション」トークイベントをリポート

寺島しのぶ、蜷川実花、スプツニ子!が登壇。「#MeToo」以降の女性たちのクリエイションを巡る現状や、よりよい環境作りのための提言が活発に飛びかった。

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2015年、カンヌ国際映画祭のオフィシャルパートナーとして発足した「ウーマン・イン・モーション」は、映画界に貢献する女性たちに光を当て、男女平等の実現に向けた取り組みを推進するためのプラットフォームとして世界的に認知されている。先日、第32 回東京国際映画祭にて「ウーマン・イン・モーション」のトークイベントが開催され、女優の寺島しのぶ、写真家・映画監督の蜷川実花、アーティストのスプツニ子!が映画界、ひいては日本の女性全体の地位向上に向けたディスカッションを行った。映画評論家の立田敦子が進行を務めた当日の様子をリポート。

 

#MeToo以降、女性たちをめぐる状況はどう変わった?

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蜷川実花:写真家/映画監督。木村伊兵衛写真賞ほか数々受賞。映画『さくらん』(2007) 、『ヘルタースケルター』(2012) 、『Diner ダイナー』(2019)、『人間失格 太宰治と3 人の女たち』(2019)監督。映像作品も多く手がける。

まずは2017年の秋、ハリウッドの大物プロデューサーのセクハラ問題に端を発した「#MeToo」運動の後、映画界やクリエイティブな業界で働く女性たちの環境はどのように変わったかという話題に。蜷川は「写真家としてデビューしたとき、“女流”という言葉がとてもついて回っていて、そのたびになんとなくイラっとしていたんですけど。今年は一度もそういったことは言われなかったですね。そういう意味では、ゆるやかにいろんなことが変わってきたんだなあと思います。それよりも私は『蜷川幸雄の娘』ということがすごく重く、呪いのようにのしかかっているので(笑)。とくに新作『Diner ダイナー』は藤原竜也くんと一緒にやったので。とにかくそれを聞かれた年、という感じですね。あと、私の組はとても女性のスタッフが多くて。Netflixの『Followers』は半数以上が女性スタッフでした。もしかしたら少し特殊な環境なのかもとは思います」。続いて寺島は「やはり“女優”が圧倒的主役、というのは難しいですし、数少ないと思います。まして日本は“カワイイ文化”が根強くて『大人の女性の話』というのがなかなか映画としては成立しないのかな、と思ったり。私も出産して、気づいたら役が『〇〇のお母さん役』だったり。貰う台本などから『こういうのが現状なんだな』と思いながら……。でも、女性の技師さんやカメラマンさんが増えていたり、男と女という括りじゃない作品が作られれば、より感性が広がる気がします」。

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人口の半分が女性なのに、女性から見た世界や気持ちの動きなどをしっかりストーリー化してこなかった

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スプツニ子!:アーティスト/東京藝術大学准教授。東京都生まれ。ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学部卒業後、英国 ロイヤル・ カレッジ・オブ・アート(RCA)修士課程修了。2013 年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教としてデザイン・ フィクション研究室を主宰し、2019 年より東京藝術大学准教授。

アート界から変化を見てきたスプツニ子!は、「映画に限らずどの業界も女性が声を上げられるような雰囲気ができてきたと思います。ソーシャルメディアの『誰でも言える』という土壌があったから、女性が抱えて来た声も見えるようになってきたと思います。映画界は男性監督や脚本家が圧倒的に多い。結果、人口の半分が女性なのに、映画でもアートでも、女性から見た世界とか女性の気持ちの動きなどをしっかりうまくストーリー化してこなかったのかなと思います。だから監督や写真家に“女流”という言葉が付くのも、ただ人口の半分である男性からの視点を描いているのにもかかわらず、それが珍しかっただけなのでは」と指摘した。

 

産むタイミングとキャリアはどう両立する?

次に、キャリアと出産、育児というクリエイターには避けて通れない話題へ。育児をしながら制作を続ける蜷川は「今は30分時間が空いたらここで!というふうにやるしかないですね。自分だけの時間を使ってクリエイションできる人はとてもまぶしい。そういう人とどうやって戦ったらいいのか、ということはよく考えますね。物理的にはあきらめの連続です。その足かせがクリエイションにプラスになって高く飛べるときもあるけど」。現在34歳のスプツニ子!にとっても、出産は現実的な問題だ。「一番仕事が楽しい時期である30代って、女性の妊娠・出産タイムと丸かぶりなんですよね。仕事やクリエイションが大好き、という女性たちには(キャリア上の不安で)怖くて踏み切れないという同世代が多い。人類はテクノロジーやサイエンスでいろんな問題を解決してきたけど、妊娠・出産だけは野放しだったといういらだちがあって。そこをアーティストとして変えたいと思っています。男性は古来からずっと女性に“代理”で産んでもらっていますよね。だから私もなんで産んでもらえないの?と思います」と、最近卵子を凍結したことも交えながら語った。

 

育った環境、育てる環境、そして教育について

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寺島しのぶ:女優。京都市出身。『赤目四十八瀧心中未遂』(2003/荒戸源次郎監督)、『ヴァイブレータ』(2003/廣木隆一監督)で日本 国内外で10 以上の映画賞を受賞。『キャタピラー』(2010/若松孝二監督)で、日本人として35 年ぶりにベルリン国際映画祭・ 最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞。

続いて3人が育った環境や育児にまつわる話に。寺島は「子どもにとって環境がすべてだという気がしてならないんですよね。私は少なくともそうでした。弟が生まれて『みんな男が生まれることを望んでたんだ』というのを5歳の時に知りました。でも私は歌舞伎を見て育ったし表現することも好きだし、どうしたらいいんだろう?と悶々として。それでも弟と一緒に稽古は全部やっていましたけど、彼が初舞台を踏んだときに全部やめたんです。『使えないじゃん』って。反発もありましたし。そういうコンプレックスが積もり積もって女優になれたと思っています。19歳の時、蜷川幸雄さん演出の舞台『血の婚礼』の主役に抜擢され、その稽古場で蜷川さんに『コンプレックスの塊だな』と言われたんです。『そのコンプレックスはいつか絶対いいモノになるから』、と。19歳の頃に言われたことがずっと心のなかにある。それは本当にすごく救われた一言でしたね。すごく感謝しています」という逸話を披露した。その蜷川幸雄に育てられた蜷川は、「0~5歳までは父に育てられました。父が主夫をやっていて母が働いてという。いつも『男性を通じてしか社会とつながれない女になるな』と小さい頃から言われていましたね。経済的にも精神的にも自立した女になれ、とずっと言われて育ってきた」と、幼少期を振り返った。一方、スプツニ子!は大学教授の両親のもとで育てられた。「私は父も母も数学の研究者で共働き。母がイギリス人なので、日本とイギリスの状況をクリアに見ることができたので恵まれているなと思う。中学のときの同級生は、みんなとても凝ったお弁当を持ってきていて。うちはわりとピーナツバターサンドイッチみたいな簡単なものでした。でも母は私に『みんな豪華なお弁当を作っているけど、私は大学でバリバリ教えててカッコいいお母さんだからうれしく思いなさい!』って(笑)。だからカッコいい!って思っていました」と、三者とも教育の重要さを強調しつつ笑いを交えながら語った。
 

これから、女性がより一層活躍するためには?

 変化の途上にある現在、女性たちはどのように現実に向き合っていけばよいか、ということに対してスプツニ子!は、「今はソーシャルメディアで連帯でき、女性が勇気を持ちやすい時代になった。インターネットを通じて、複雑な女性像も描かれるようになってきています。道のりは遠いけれど、作り手に女性を増やすこと、そうすれば若い女性が入りやすくなるのでは。女性にサポートしてもらって当たり前と男性が考えたりするような風潮が変わっていかなければなりません。女性が勇気を持つことと、男性が変わっていくことですね」。蜷川は「私は『大人の女性って楽しいよ』ということを作品を通じて大々的に、勇気を持って宣伝していこうと思います。自主規制をしなければならないことなどない。好きな服を着ていいし、誰と恋愛をしてもいいということを、きちんと伝えよう、そういうことを描いた物語を紡ぎ続けようと思います。写真ももちろんそうですが、映像作品を作る時は、観に来た女性が映画館を出た時に肩で風を切って歩けるようなもの、来た時より帰りが少し早足になるような感情を残せるようなものにしたいと思っています」とポジティブなメッセージを送った。

 

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