2020年9月5日(土曜日)
「納豆とシジミに朝寝 起こさる」
江戸時代の川柳です。
長屋の朝は、「納豆~ 納豆~」「シジミ~ シジミ~」の売り声でスタートします。
納豆には、叩き納豆と糸引き納豆があります。
叩き納豆は豆腐と野菜を刻んで納豆に添えてあり、火にかけた味噌汁に叩き納豆を入れると納豆汁が出来上がりました。
独身者の多くは、糸引き納豆に醤油を入れてかき混ぜ、ご飯と一緒に食べたと言われています。
行商の棒手振りは、煮豆や漬物、田楽、麦飯も売っていたので、独身者の朝食は、惣菜が欲しければ棒手振りから買えばよかった。
通りに出ると屋台店が並び、何を買っても80円くらいで収まった。
当時の江戸は人口100万人以上で、世界最大の都市だったのです。
100万人の約70%が庶民で、住まいは借家の集合住宅(長屋)でした。
時代劇によく出て来る“明六つ(あけむつ)”に、路地口にある町の木戸が開けられます。“明六つ”とは、午前6時のこと。
この頃、人々は起き出し、朝が始まるのです。
長屋は6畳一間と台所、井戸とトイレは共同でした。
江戸と上方とではご飯の炊き方に違いがありました。
平日の飯は江戸では朝食に炊き、上方では昼食に炊いていたと言います。
元和、寛永の時代は1日2食でしたが、「明暦の大火」からの復興の時、体力が保たなくなった庶民の間で1日3食が広まりました。
政治体制が安定していた江戸時代は、経済力も高まり、グルメブームが到来していたと言われています。
「食を楽しむ」ことは現代人と同じですが、人々の食へのこだわりは強く、現代人よりも料理に手間をかけていただけに、味わい深かったように思います。
長屋から家族の笑い声が聞こえて来る気がいたします。