原発の使用済み核燃料を最長50年にわたって保管する中間貯蔵施設「リサイクル燃料備蓄センター」(青森県むつ市)について、原子力規制委員会が新規制基準に適合するとの審査書案を了承した。
原発の敷地外で使用済み燃料を保管する施設が認められるのは初めてだ。東京電力と日本原子力発電の共同出資会社が、来年度の事業開始をめざす。
各地の原発では使用済み燃料があふれつつあり、それらを中間貯蔵施設へ移すことは原発の運転を継続するのに役立つ。だからといって、原子力政策の抜本的な見直しを先送りすることがあってはならない。
何より再考すべきは、長年にわたって原子力政策の柱とされてきた核燃料サイクルだ。
原発の使用済み燃料は青森県六ケ所村に建設中の再処理工場に運ばれ、そこで抽出されたプルトニウムを再び発電に使うことになっている。これを核燃料サイクルといい、政府は国策として推進してきた。
だが、再処理工場はトラブルが相次ぎ、完成が当初の予定から20年以上も遅れている。7月に規制委が新規制基準に適合すると認めたものの、運転開始は早くても再来年の見通しだ。
このため各原発で搬出を待つ使用済み燃料は増え、プールの総容量の75%にもなっている。満杯になると燃料交換ができなくなって原発が止まるため、窮余の策として中間貯蔵施設での一時保管が考え出された。ほかの電力会社も、原発の内外での中間貯蔵を計画している。
とはいえ見すごせないのは、核燃料サイクルそのものが行き詰まっている現実である。
プルトニウム消費の本命だった高速炉は、原型炉もんじゅの廃炉で頓挫した。プルトニウムをウランと混ぜて普通の原発で燃やすプルサーマルも、再稼働の停滞によって当初の計画通りには進んでいない。
一方で政府は、核拡散を防ぐためプルトニウム保有量の削減を公約している。プルトニウム消費の手段が限られる以上、再処理工場が完成してもフル稼働は望めず、原発のプールにたまる使用済み燃料を大きく減らすのは容易ではなかろう。
中間貯蔵することで、行き場のない使用済み燃料の問題を当面は取り繕えるとしても、いずれは運び出しを迫られる。それまで核燃料サイクルの破綻(はたん)を放置するのは無責任だ。
放射性廃棄物の最終処分や余剰プルトニウムの取り扱いのように、すぐには答えを出せない問題も多い。将来にツケを回さぬよう、こうした課題に正面から取り組み、問題の解決に向けた議論を急ぐべきだ。
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