孤高の天才空手家、山崎照朝の半生を本人、関係者の証言を交え描いている。
その生き様はまさに「武士」。極真系のこの手の本の多くは読了感のスッキリしないものが多かったが、清々しい気持ちにさせてくれる。
自身のエピソードは天才ゆえに、さらっと結果が出てしまいすぎてあっさりな印象だが、
師大山倍達や先輩芦原英幸を語るくだりに山崎自身の努力のあとを感じずにいられない。
▼大山倍達の自宅を訪れた時にビール瓶が無数に転がっていた。ビール瓶切りをするための練習をしていたのだ。
「10円玉を曲げる大山館長の指の力。普通の人は手首を持たれただけで(骨が)折れて、喧嘩が終わっちゃう。牛と闘ったときだって、ねじ伏せた。いろんなことを言う人がいるけど、普通はできない。館長は実戦でどう闘うか。喧嘩になったらどうするかを常に考えていた。武道家として考えた場合、大山倍達の右に出る者はいない。俺はそう思う。近くにいればいるほど、そう感じたんだ」
▼皆が恐れてやりたがらない芦原英幸と進んで組手をした。
「芦原先輩の凄さを(みんなは)知らない。道場では当てっこなんだよ。顔面、金的、急所でもいい。反則というのは技なんだよ。反則だから使わないというのはその人の考え方。だけど、反則も技と考えたらそれを極めるのが一番強い。そういう論理。組手を教えてくれたのが芦原先輩。顔面や金的をスパッと蹴る。百発百中でできる人はいない。相手は「汚いことをやりやがって」と向かってくる。そのリスクも計算の上でやるから、そういうのをさらっとやるのが芦原先輩。普通の技のようにやるんだよな」
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