男性で親権を取得できるのはどのような場合ですか?

執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会 

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

弁護士の回答
育児をする男性のイメージイラスト昔と比べて、男性でも親権を取得できる場合も見られるようになりました。

しかし、子どもが小さい場合、男性が親権を取得できるのは限られた場合です。

一般に子どもが小さい場合の親権者の指定においては、次の点を総合的に考慮し判断されると言われています。

 

育児をする男性のイメージイラスト

  • これまでの監護状況
  • 監護に対する意欲と能力
  • 経済的・精神的家庭環境
  • 居住・教育環境
  • 子どもの意向、年齢、性別、兄弟姉妹関係、心身の発育状況
  • 監護補助者の有無

 

特に、子どもが小さい場合は、監護実績が大きなウェイトを占めます。

日本では、男性の場合、通常、仕事の時間が長いため、育児にかけることができる時間が女性よりも短いのが通常です。

したがって、特段の事情がないと、男性が親権を取得するのは一般的には難しいといえます。

子どもの意向

考える子供のイメージイラスト子どもが小学校高学年くらいになると、ある程度の判断能力を備えるので、子どもの意思も無視できません。したがって、これくらいの年齢の子どもが父親についていきたいという意思を持っていると、男性でも親権を取得できる可能性が高くなります。

妻側が親権者として相応しくない場合

薬物のイメージイラスト妻が親権者として問題がある場合、男性が親権を取得できる可能性があります。
ただし、妻が重度の精神疾患を患っている、薬物に依存している、といった極端な事情が必要となると考えられます。

男性側からのご相談で多いのが、妻が他の男性と不貞行為を行っている場合に、親権者となれるかという質問です。

しかし、夫婦の問題と親子の問題は、切り離して考えられます。したがって、妻が不貞行為を行ったとしても、親権者の判断に直接の影響はありません。ただし、不貞行為が子どもの監護に悪影響を与えたといった事情があれば、親権者の判断にも影響します。

このように、男性が親権を取得するのは基本的には難しいです。

しかし、当事務所では、男性でも親権を取得できた事案がたくさんあります。

 

男性が親権を取得する場合の問題点

男性が親権を取得する場合、共通した傾向が見られます。

以下、男性が親権を取得する場合の問題点について解説するのでご参考にされてください。

①監護実績の立証が難しい

近年は、父親でも育児に積極的に関わる方が増えています。

中には、母親よりも育児を行っているようなケースも珍しくありません。

しかし、このようなケースでも、親権を争うと負けてしまうことが多い傾向です。

これは、監護実績について立証することが難しいという問題があるからです。

父親側が「自分のほうが育児を行っていた。」と主張しても、母親側が否定すると立証しなければならなくなります。

また、日本では、「育児は母親側が行うもの」という先入観があり、父親側が監護実績を立証できないと、母親側の方が主たる監護者であったと認定される傾向です。

②子どもの意向を伝えることが難しい

子どもが「お父さんと一緒に暮らしたい」と希望していても、それを裁判所に伝える方法が限られています。

15歳以上であれば、子どもの意向を聞くことが法律上の義務となっておりますが(家事手続法152条2項)、15歳未満の場合はそのような義務がありません。

そのため、子どもが父親と一緒に生活することを希望していても、それを裁判所に伝えることが難しいという問題があります。

子どもの希望を叶えてあげることができない、父親にとって、これほどもどかしく、つらいことはないと思います。

③相手方の監護不適格が認められる可能性は高くない

母親側に親権者たるに相応しくない事情があると、父親側が親権を取得できる可能性があります。

しかし、裁判では、母親側の監護不適格が認められる可能性は高くありません。

例えば、裁判において、「母親であるにもかかわらず、家事を行わなかった」「自分のほうが家事を行っていた」と主張したとします(実際にこのような主張はよくあります。)。

これに対して、母親側が事実関係を争い、「家事を行っていた」と反論した場合、証拠がない以上、裁判所は父親側の主張を認める可能性は低いです。

 

母親の不貞行為は親権者として失格?

また、「母親が不貞行為を行っており、母親として相応しくない」と主張する事案も多くあります。この場合、不貞行為については証拠があることが多く、不貞行為の存在自体は認められる事案はあります。しかし、母親側からは「不貞行為は夫婦の問題であって、親子の問題とは関係がない」などと反論がされ、裁判所も、不貞行為と親権者の適格性は別物と考えています。

執筆者の感覚ですが、裁判実務においては、不貞行為の事案では、母親が不貞行為を行った結果、「子どもに悪影響を及ぼすなど監護に問題があった」ことまで立証が必要だと考えます。

例えば、子どもを不貞行為の相手方と会わせて、その結果、子どもが嫌悪感を持ち、情緒不安定になったような状況です。

 

このように、不貞行為の事案では、監護への悪影響についてまで立証できなければ、親権者の判断に大きな影響はないと考えらます。

男性で親権についてお悩みの方は、こちらをぜひご覧ください。

 

 

 

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親権
執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

専門領域 / 個人分野:家事事件 法人分野:労務問題  

実績紹介 / 離婚の相談件数年間700件超え(2019年実績)を誇るデイライト法律事務所の代表弁護士。離婚問題に関して、弁護士や市民向けのセミナー講師としても活動。KBCアサデス、RKB今日感テレビ等多数のメディアにおいて離婚問題での取材実績がある。「真の離婚問題解決法」「弁護士プロフェッショナル」等の書籍を執筆。


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