「失踪しようと思うんだけど、誰か仕事を紹介してくれませんか」−。日本国内にいるベトナム人が参加するフェイスブック(FB)のグループで、違法行為を示唆する投稿が常態化している。不法残留者への仕事のあっせんや預金通帳の売買などがやりとりされ、ネット上でコミュニティーを形成。専門家は、新型コロナウイルスの影響による失業など、支援の網から漏れた技能実習生や留学生が置かれた境遇の厳しさも指摘する。(那谷享平)

 在日ベトナム人らがフェイスブック上でつながる犯罪は、兵庫をはじめ全国で起きている。利益優先のあっせん業者は、日本での生活の実情を伏せて渡航を勧めるといい、現実との落差で挫折する若者も生んでいる。

 兵庫県警は今春、西宮市のドラッグストアから商品約100点を万引した疑いで、ベトナム国籍の20代の男女2人を逮捕。県内で15件、計約170万円相当の被害を裏付けたとした。

 県警組織犯罪対策課によると、男はフェイスブックで「盗品を買い取る」とする投稿を見つけ、指定された化粧品などを盗むようになった。報酬は定価の3割で生活費に充てたという。

 2人は留学生として来日したが勉強についていけず退学し、在留資格を失った。捜査関係者によると、男はベトナムで「日本で勉強をしながら月30万円を稼げる」と誘われた。だが、留学生の労働時間は週28時間が上限で、実際はそれほど稼げなかった。

 渡航のため150万円を借りたという男は「借金を残したまま帰国したくなかった」と供述。捜査員は「甘い夢を見させられていたようだ」と語る。