3日午後1時現在のひまわりの衛星画像。日本の南の海上に台風10号の雲が見える=共同
台風10号は5~7日にかけて沖縄や、九州を中心とした西日本に接近する見通しだ。猛烈に発達し、伊勢湾台風などに匹敵する過去最強クラスの勢力で近づく可能性がある。九州は7月の豪雨で被害を受けたばかりで、被災地は新型コロナウイルス対策をとりながら備えを急いでいる。
気象庁によると、10号の中心気圧は沖縄などに近づく5日には915ヘクトパスカルにまで下がる予想。死者・不明者計5千人以上を出した1959年9月の伊勢湾台風の上陸時勢力(929ヘクトパスカル)を超える水準だ。同庁は「これだけの勢力の台風が近づくことはそうない。特別警報級の恐れがある」と警戒する。
記録的な強さの原因は海面水温の高さだ。海面水温がセ氏27~28度になると蒸発する水蒸気の影響で台風が発達しやすくなる。琉球大の伊藤耕介准教授は「7月に台風が発生しなかった影響で10号の勢力が強まっている」と分析する。台風が海水を循環させなかったため水深50メートルほどの内部水温も高いといい「長時間太陽から降り注いだエネルギーを海が潤沢に蓄えている」という。
台風の進路に当たる九州は警戒を強めている。7月の豪雨で20人が犠牲となった熊本県人吉市では、未明の雨で住民の避難行動が遅れた教訓を踏まえて早めの準備を進めている。避難所は台風接近前日の明るいうちに開設し、新型コロナ対策の間仕切りや、食料などの物資も事前に搬入する。市防災安全課の担当者は「豪雨と違って台風は進路の予想がしやすい。万全の準備をしたい」と気を引き締める。
早期避難が求められる高齢者施設も備えを急ぐ。同県八代市の「グループホームまどか」は6日から夜勤の職員を1人増やし、2人態勢とする。従来の避難先へは球磨川に架かる橋を渡る必要があったが、橋が流失する可能性を考慮し、橋を渡らずに済む市内の別の福祉施設を新たに避難先として確保した。
避難時に車に乗せる入所者の順番を決めるなどの対策も進めており、7月の豪雨でも入所する18人全員が無事避難した。担当者は「あらゆる可能性を考え、入所者を素早く移送できるようにしたい」と話す。
JR九州は台風に備えた運休や人員配置などの検討を始めた。直前の台風9号接近時も事前に運休などの運転計画を公表した。同社は7月の豪雨で、線路内への土砂流入や鉄橋流失など700カ所以上で被害を受けたばかり。担当者は「被害を最小化するため対策を検討している」と話す。
九州電力も電線などの復旧作業に必要な資機材や作業員の確保に向けて「準備・実施に動いている」という。台風9号では福岡、佐賀、長崎、熊本各県の一部地域で停電が発生し、復旧作業にあたっている。