おんぼろ車

オリジナル小説『スカーレット・ウィンド』や版権小説を書いてます。

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雪の降る夜は⑤

遅筆ですみません!!
今回のシリーズが本当に長くなってしまいましたが
本当はもっと長い物語だったのでいくつかカットさせていただきました!
えへへw
計画的じゃないね(・。・;

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「じゃあ、答えろよ未夢ちゃん?」

おどけたように振る舞う姿と対照的に額に流れる汗が自分の首元に落ちてきた。
今まで驚きが強すぎて気づかなかったが、真冬というのに防寒具をつけず必死に走ってきたのがわかるほど息を切らしている。

なんで…
お願いだからもうこれ以上期待をさせないで…

「お願いだからもうやめてよ…辛すぎるよ。彷徨。」
「ダメだ。ちゃんと話を聞いてくれるまでは絶対に離さない。」
涙がほほを流れる。
胸が痛むがそれでも逃がすつもりはない。

この一生分といえるほどの想いを伝えられたら…
彼女はどういう風な反応をするか…

「お前に遠まわしで言っても通じないってわかってるからもう迷わない。」

「お前だよ。未夢」
「え…」
「俺が好きな奴はお前だってこと。」
「嘘…」
「”でも”とか”嘘”とか無し!俺の言葉そんな信じられない?」
「だってそんなこと簡単には信じられないよ。」
「じゃあ、信じさせてやるよ…」

顔と顔が近づいていく
一瞬の出来事。

「これで分かった?俺の好きな人」
覗き込んだ顔は火を吐きそうなぐらい真っ赤になっていた。

「で?お前は?」
「へ?」
「俺が告白したんだから、答えてもらわなくちゃな?まぁ答えといっても一つしか許さないけど。」
「で、でも」
「また、でもって言った。もう一回言ったらまたキスするからな。」
「うぅ~…。彷徨のいじわる…。」
震えながらもどうこたえようか思案する彼女を見ながら力いっぱい幸せを感じ抱き寄せる。

そして、彼は今までないような甘い声で彼女にしか聞こえないようにささやく。

「ほら、早く。」
それは甘い麻薬のように体をめぐる。

「好き。」
「もう一回。」
「私、彷徨のことが好き。」
「もう一度。」
「う~!好き!!」
「もういっちょ!」
「何度言えばいいのよ!!」
「俺が死ぬまで?」
「バカ、ずっとじゃない…」

未夢が抱えていた不安が春先の雪のように消えていく。
当たり前というように違和感なく…

彷徨という存在によってつくられそして、彷徨という存在によって解かされていく。

「あ、そうそう。これ。」
彷徨は何かに気づきポケットに入っていた箱を取り出した。
それを未夢に手渡す。

「なに?これ?」
「これ買いに行ってたんだよ。これでも苦労してるんだ。知らない女の人には絡まれるし、同級生にはそれを見られるし、お前には勘違いされるしで散々だけどさ。」
「終わりよければすべてよしってことで!」
「開けてみ?」
「いいの?」

彼から手渡された紺の小さな箱に生えている赤いリボンを震える手でそっとほどいていく。
そこには、シルバーでコーティングされている小さなシンプルな指輪が箱に綺麗に収まっている。
未夢は慌てて彼を見た。
彼は余裕綽々といった表情をしているが頬が軽く赤い。

「きれい。これすごく高いんじゃ…。」
「クリスマスプレゼントというか、虫よけ?」
「虫?」
「そ、まぁ分からなくていいよ。その指輪の裏側見てみな。」

指輪の裏側にはconnected in space という文字が書かれている。

「彷徨、私英語が苦手っていうのわかってて言ってるわよね。」
「意味はあとで調べろ。未夢の宿題な。」
「え~!」
「ほら指かせよ。」
「どっちの?」
「左に決まってるだろ!恥ずかしいこと言わせんな!」
「へへへ。」
「いきなり元気になったなお前。」

未夢は左の手を彼に差し出しまだ少しうるんだ瞳で彼を見る。
彷徨は彼女の左手にそっと触れ薬指にそれをはめる。
二人の間には騒がしい音楽も人の声も何一つ聞こえない。

「私もね、彷徨にプレゼントあるの。」
「俺に?」
「彷徨本好きでしょ?前にブックカバー渡したときすごく気に入ってくれてたみたいだったから。同じお店で買おうと思ってここへ立ち寄ったの。」
未夢は先ほどよりもましになってはいるが震える手で彼にプレゼントを渡す。

「開けていい?」
「うん。」
白い包みに紺色のリボン、そしてメリークリスマスの文字が書かれたシールが貼ってある。
彷徨は慎重に包みを開く。

「これ栞?」
「そう、それがすごく気に入ってね。真っ白な栞に真っ白なストックの花すごく素敵でしょ?」
「あと、すごく言うのが遅くなっちゃったけど誕生日&クリスマスおめでとう彷徨。」
「あぁ、ありがとう。」
彷徨の口角が少し上がるのを未夢は見逃さなかった。

「どうしたの?」
「お前さ、このストックの花言葉って何だか知っててこれ買ったのか?」
「へ?」
「この花言葉って求愛とか愛の絆だろ?」

ば、ばれてる!!

やっと落ち着いてきたと思っていたのにまた体温が上がり始める。
「し、知らない!」
慌ててそんなこと知らないといってみるものの彷徨にはすべてお見通しのようだ。
「そういうことにしておいてやるよ未夢ちゃん。」

お互いを見つめ笑いあってる二人の間に小さな小さな白い塊がふわりと落ちてくるものが見えた。

「あ、彷徨見て!雪!」
「通りで冷えると思ったら。」

あちこちに無数に少しずつ数を増やし存在感を出していく。

「きれいだね。」
「そうだな。」
「ありがとう。」
「これからは不安になってることとか溜めんなよ?俺が被害受けるんだからな。」
「あ、ひどい!」


「じゃあ、帰ろう。」
「うん。」 」


雪の降る夜、クリスマスツリーを背に二人は手を繋ぎ人の流れに沿って歩き始めた。
お互いを思いあいながら。


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お付き合いいただきありがとうございました! 

しりとり

「じゃあ、いってまいります!さぁルゥちゃま参りましょう!!」
「だぁ!」
「いってらっしゃい。気を付けてね。」
「ルゥのこと頼むな。」
「はい!任せてください!」

早朝そういうなりワンニャーとルゥが大荷物で出て行ったのはわけがある。
ワンニャーが買い物途中商店街のくじ引きでモモンランドのペアチケットが当ててきたのだ。

いつもなら留守番でいけない場所に遊びに行けるとワンニャーは大喜びで今回は二人に留守番を頼んだ。
未夢と彷徨もいつも留守番をしてくれるワンニャーに気を使ってか快く了承したのである。
そうして変身した1匹と1人は頭の上に音符をちりばめながら階段を軽い足取りで降りて行った。

今日は休日。

二人はどこへ出かけるわけでもなく居間でお茶を飲みながら個々の時間を過ごしていた。
未夢はテレビをつけてみたり雑誌を読んでみたりするものの、2人で過ごすというのにまだ慣れなく集中ができない。
チラッと隣を盗み見ると横になりながら本のページをゆっくりとめくっている。

私だけ緊張してバカみたいじゃない

ふいと視線を彷徨から外し時計を見る。
時は一秒一秒ゆっくりと動いていく。

「あぁ、つまんないなー。」
本音半分嘘半分のその言葉は彼の耳に届いたようで本をぱたんと閉じた。

「じゃあさ、未夢。そんなに暇ならしりとりするか?」
「え?しりとり?」
「うん。」
なんでしりとりか分からないが彼がかまってくれるのだから断る理由もない。

「じゃあ、俺から行くぞ。」
「うん!」
「バカ」
「顔」
「おせっかい」
「…いろはうた」
「単純なやつ」
「つりめ!」
「面倒」
「さっきから何か言いたそうな感じよね!」
「別にただしりとりをしてるだけだろ?いいから続けろよ。」
「う~、うるさい。」
「愛しい」
「え?」
「はやく、しりとり続けろよ。未夢の負けにするぞ。」
「い、言うわよ!い、よね。いす!」
「好きだ」

未夢は顔を真っ赤にしながら彼の方を振り向いた。
先ほどまで本を読んでいた目線はいつの間にかまっすぐ未夢向いている。

目と目が合う。

未夢は耐えられなくなり目をそらすがそらした後も頬に彷徨の視線を感じる。

「んで?返事は?」
「冗談でしょ?」
「冗談に見えるか?」
向かい合わせに座っていたのに彷徨が自分の横に移動してきた。

「な?未夢。」
耳元でささやかれる。
未夢は誘われたかのように彷徨を見た。

しかし、そこにはいつものからかうときの顔がある。
未夢はすぐわかった。

「なに本気にしてんだよ、ばーか。」
「ウソついたのね!!」 こうしてだまされたと分かった未夢は3日間目を合わせることはなかった。




未夢が居間から出て行ってしまった後、小さい声でささやく。
「ウソじゃないんだけどな。覚悟してろよ未夢。」

これが聞こえたのか聞こえてないのかはわからない。

第1章『都市ラルフ』④

カイが席に着くと皆一声に幸せを感じながら食事を始めた。
むしゃむしゃと食べる中、レキがカイをチラと見る。

「カイ。親父は?」
「朝の話聞いてなかったのか?治安警備保障安全重要会議に代表者として夜遅く帰ってくるって言っていただろ。」
「ちあんけいびほしょうあんぜんじゅうようかいぎ???」
「治安警備保障安全重要会議。その会議では今までにあった犯罪歴や火災地震などを調べて皆が安全に過ごせる様にする会議だそうだ。」
「ふ~ん」
レキはちょっと固めのロールキャベツをほうばった。

 「はぁ、食った食った!」
パンパンに膨れたお腹をなでながら満足げにレキが言う。
それを見た兄弟たちは笑っていたが今にも瞼が落ちそうだ。
カイと妹達とで机にあった食器を片づけ部屋に戻ってきた。
そのころの時刻はちょうど、月が真上にある。

「よし!食事も食べたし寝るか。さぁ部屋にみんな戻れ!」
兄弟たちは皆えぇ~と言っていても瞼が落ちてきて睡魔には勝てないようだ。
「「はぁ~い」」
中には机の上にうつぶせに寝てしまってる子もいる。
カイはやれやれというように、机で寝ている兄弟たちを起こし部屋に戻らせた。

しかし、兄弟たちが部屋へ移動する中、一人だけ席を立とうとしない黒い瞳の女の子がいる。
レキとカイはその子に近づいた。

「どうした、グルマ。腹でも壊したか?」
「レキ、明日の夕飯抜きね。」
「すみません。何でもありません。」
レキの言葉にカイが言い返す。
グルマはくすくすと笑うだけで、何かを言うことはなかった。

「なぁグルマ、どうした。何か言いたいのか兄ちゃん達聞いてやるから言ってみな」
カイがグルマに心配そうに言った。
昔からこういう所が好かれたのであろう。
グルマはまだ俯いたままカイの言葉に反応した。
しかし、グルマは動こうとしない。

「なぁどうしたんだ?俺らに言ってみな?ラデンの子供にいじめられたのか?」
またグルマは顔を横に振るだけある。

「まぁ今日は無理して話そうとしないでいいよ。しゃべりたくなった時はいつでも俺達聞いてやるからな。なぁレキ?」
「おう。だけど今日は寝たほうがいい。な?」
グルマはレキの目を見ながら深く頷きそのまま部屋に戻って行った。

彼女は家族の中でまだ慣れぬ存在であった。
父親が無理心中を図り母親を目の前で殺され、兄もそして妹もなくしまった。
グルマは追ってくる父親を振り切りこの家に逃げてきたのである。
今ではその父親も、そしてその家族の家もない。
その時から彼女は言葉を発することができなくなってしまったのである。
カイはそんな彼女を心配し、いつもそばに置いていた。

「グルマのこと、どう思う。」
「もうあれから半年経とうとしているのに進歩がみられないよな。」
「親が目の前で殺しにくるなんて想像するだけでも嫌だからな。正直そんな親の頭の中が見てみたいぐらいだよ。」
カイのその顔は奇麗な表情の中に大人に対しての恨み苦しみが見え隠れしているようにも見える。
ここの子供たちはみんな親に見捨てられてやってきた子供たちばかり、そう考えるのも仕方ない。

「俺には、父親やお袋も記憶の中にはないから分からないだけかもしれないけど、親っていうのはそういうものだけでもないだろ。俺たちの運が悪かっただけ、ただそれだけ。」
「そうかもしれないな。グルマも時間が解決してくれるはずだ。俺も捨てられて大人を信じられなかった時期があったし今でも大人は嫌いだけど、その時だっておやじは見捨てなかった。そのおかげで今がある。」
「俺たちはあの人の下で育ったんだ。それが何にも代えがたい誇りだよ。」
レキは目の前でゆらゆら揺れているロウソクの先を見ながら目を細めた。

「はは!お前がそんなこと言うなんてな。お前意外とロマンチストだろ。」
その笑い声に顔を真っ赤にし、今まで目を離さなかったロウソクからカイの顔に移り殴りかかった。
だが、カイの身のこなし方は風のようになめらかでスッとよけられてしまう。

その姿はレキがオオカミならカイはフクロウのようにと例えることができるだろう。

「おわっ!」
「おっと!」 レキはカイに手が届く間もなく、倒されてしまった。
部屋の中には大きな音が響き机の物も床の下に叩きつけられた。

「痛っ~。」
腰を打ったのか押さえながら立ち上がり、よろめいてしまう。
カイは腕を組んで笑っている。
机を支えにし最後の反抗としてカイを睨みつけたがカイには全然効かなかったようだ。
レキは諦めて机を元に戻し、落ちているものを拾い始めた。

「お前もまだまだだな。俺に倒されるぐらいなら親父には勝てないぞ。」
「これから成長していくんだよ。」
「お前が来たのが15年前だから約300回はゆうに超えているはずだな。」
「なんだよ。何回かは俺だってお前に勝ったことあるぞ。」
「でも数える位しかないだろ?」
「うるぇ…。」
頬を膨らまし、そっぽを向く。

「まぁそんな焦らなくても、お前だったらすぐ俺を超える。親父も超えてしまうかもな。」
「必ず親父より強くなって俺みたいのが差別されない平等な世界を作ってやる。その時まで俺の練習相手になってくれよな。」
「…あぁ。」
「じゃあ、とりあえず俺たちも寝るか。」

月がほほ笑み風は吹くそんな営みが続くこの都市で運命の歯車が回り始める。

日の出とともに都市の中でも人一倍大きな屋敷から今にも腸が煮えくりそうな小太りな男がグリードに向って怒鳴り声をあげていた。

「なんと!!我が息子グリードにそんな下賤の者がそのような事を!!許せん!私の顔によくも泥を塗りやがって見とれ!こうなったらなにがなんでも!!」
男はすぐ近くにある都城に向かって使者を出した。
メッセージ
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