BYOD導入で生徒たちのスマートフォンを学習ツールとして活用 ~県内の高等学校144校でBYODを実施する無線LAN環境を整備~
学校・教育 × 無線LAN
神奈川県教育委員会 様
NEW無線ネットワーク導入の背景
神奈川県教育委員会では、教育ICT環境整備の一環として、県内の高等学校144校(中等教育学校2校を含む)で生徒が所有しているスマートフォンを学習ツールとして活用するBYOD(Bring Your Own Device)方式の導入整備を進めています。生徒たちのスマートフォンの高い所有率を背景に、調べ学習や小テスト等でスマートフォンを用いる学習スタイル等を構築します。各学校で1000台規模の端末を接続するBYOD方式を実現するための通信基盤として、無線LANを144校全てに整備しました。
県内全域での整備に先駆け、神奈川県では2018年度から『ICT利活用授業研究推進校』を中心とした14校で、BYODの導入検証に着手しました。当初、県内高等学校のICT端末整備率は低く、各学校20台程度の配備にとどまっていました。本格的な教育ICT環境整備の局面を迎えるにあたり、生徒が1人1台の端末を使用できる環境整備が必要との判断に至り、検討を重ねた結果、1人1台端末環境を実現する手段の補完として、スマートフォン活用によるBYOD導入に踏み切りました。
無線LAN導入における3つの課題
- 生徒が1人1台のICT端末を使用できる環境構築
生徒一人ひとりが1台ずつICT端末を使用できる学習環境を模索していました。タブレット端末の低い整備率を補うための手段として、生徒たちが日常的に使用しているスマートフォンを学習ツールとして位置づけることとしました。
- 各学校1000台規模の端末利用環境に耐え得る安定したネットワークの整備
1学年あたりのクラス数を8と想定し、1クラスあたり40人が在籍する場合、1校あたりの生徒数はおよそ960人、教員を加えると端末接続台数は1000台規模となります。BYODを導入する上で、多台数の端末を安全かつ安定して接続できるネットワークの整備が不可欠でした。
- BYOD方式における生徒スマートフォンの接続管理方法
生徒たちが所有するスマートフォンは、機種のメーカーや搭載されているOSがそれぞれ異なります。そのため、多種多様の端末接続管理を実現する最適な手段を模索していました。検証の結果、生徒が学校に自身の端末を登録申請して校内無線LANに接続するMACアドレス認証によるアクセス制御方式を採用しました。
システム概要
ICT利活用授業研究推進校14校を皮切りに 県内144校でBYODの運用を開始
1. 144校に約2200台のアクセスポイントを配備県内144校に約2200台のアクセスポイントを設置しています。1校当たり1000台規模の端末接続が想定されることから、無線LANを構築する上で多台数端末を安定して接続できる性能が求められました。研究推進校で各メーカーのアクセスポイントを用いて検証した結果、多台数接続とセキュアな通信環境を実現するアクセスポイントとして、フルノシステムズの「ACERA(アセラ)」を採用しました。県内2200台のアクセスポイントは、教育委員会に設置した無線ネットワーク管理システム「UNIFAS(ユニファス)」で一元管理しています。
2. MACアドレス認証によるスマートフォンの接続管理
BYODの運用方法として、生徒のスマートフォンのMACアドレスを利用した接続管理を実施しています。MACアドレスを認証できる不正接続検知センサーを介して、登録申請をしたスマートフォンのみ校内無線LANへの接続を許可する仕組みです。神奈川県教育委員会では、専用の不正端末接続防止ソリューションを活用したMACアドレス認証システムを導入しています。
3. 実生活に近い環境下でのBYOD方式の実施
BYODを実施する上で課題となるのが、コンテンツの閲覧制限・規制です。有害サイトへの接続や勉強以外の目的でのスマートフォン利用といった不適切な使い方に対する防止策を定義する必要があります。神奈川県では、日常とのギャップを設けず、できるだけ実環境に近いかたちでスマートフォンを利用させたいという考えから、生徒の自主性と判断力を尊重しています。閲覧制限は法に触れるものや公序良俗に反するもの等の最小限にとどめ、YouTubeやSNSの利用については許容する方針をとっています。コンテンツの閲覧制限には、UTM(統合脅威管理)のフィルタリングオプションを利用しています。
BYODを実施する上で課題となるのが、コンテンツの閲覧制限・規制です。有害サイトへの接続や勉強以外の目的でのスマートフォン利用といった不適切な使い方に対する防止策を定義する必要があります。神奈川県では、日常とのギャップを設けず、できるだけ実環境に近いかたちでスマートフォンを利用させたいという考えから、生徒の自主性と判断力を尊重しています。閲覧制限は法に触れるものや公序良俗に反するもの等の最小限にとどめ、YouTubeやSNSの利用については許容する方針をとっています。コンテンツの閲覧制限には、UTM(統合脅威管理)のフィルタリングオプションを利用しています。
お客様の声
神奈川県では、政府のGIGAスクール構想に先駆け、2018年度から県内の研究指定校14校でBYOD導入をスタートしました。2022年度からの新学習指導要領に備える意図もありましたが、以前よりICT環境の整備は課題となっていました。BYOD導入を決めたのは、神奈川県のICT端末の整備率がきっかけでした。端末数の配備は各学校20台程度で、1クラス40人に対し2人で1台を共有します。一方で、県内の高校生のスマートフォン所有率は95-97%と全国的にみても高い水準でした。スマートフォンを授業に持ち込むことへの批判もありましたが、調べ学習等へ役立てられるメリットを考慮し、1人1台ICT端末利用の選択肢としてスマートフォンの活用が現実的だと考えました。
ノートPCやタブレット端末と棲み分けて、スマートフォンを授業で有効活用できる環境を整えておくことが大切です。例えば授業中に調べ学習でスマートフォンを使用する場合、使用時間を5-10分に区切って実施することが多いです。ノートPCやタブレット端末を立ち上げるよりも、スマートフォンの方がスピード感があります。調べ学習のほか、小テスト実施やアンケートの集約にも利用できます。
BYOD実現に向けては、学校のネットワーク整備と生徒たちのスマートフォンを接続管理する仕組みの構築が必要となります。生徒たちに通信料を負担させないといった点でも無線LANが適していましたので、アクセスポイントと認証システムを整備しました。フルノシステムズのACERAで構築した無線LANは、校内1000台規模の端末を安定して接続できます。県内144校に配備した2000台を越えるACERAは、UNIFASにより教育委員会で一元管理しています。また、ACERAは故障率が低く、これまで使用してきた中で交換が必要だったのは3、4台程度でした。BYODを支えるネットワーク構築において、これらの機能や要素は評価できるポイントだと感じています。
お客様情報
お客様名 | 神奈川県教育委員会 |
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教育長 | 桐谷 次郎 |
所在地 | 神奈川県横浜市中区日本大通33 |
児童・生徒数 | 高等学校(全日制/定時制合計) 117,088人(2020年5月1日現在) |
URL |
[取材実施:2020年2月]
※本内容はすべて取材当時のものです。組織・部門・役職名、また仕様など、その後変更となっている場合があります。