アインズ様はストイック   作:大城之助

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第二部に行く前にもう一回くらい幕間を投稿するかも…いや、しないかも?そこはその時の自分次第ということで


幕間1

漆黒の英雄。

突如エ・ランテルに現れた冒険者であり、コンビを組むのは黒檀の様な髪を持つ美女。

エ・ランテルにおいても数々の偉業を達成した彼らは、先日起きた王都での悪魔騒動解決の立役者として以前よりも多くの注目を受けることになっていた。

 

 

 

 

「なあ、あの英雄に取り入る方法ってのはないのかね?旦那」

路地裏の小汚い屋台。客は一人しか入っておらず、とても繁盛しているようには見えない。

そして、唯一の客である男は安酒を煽りながら、店主に語り掛けていた。

 

「その前に代金を頂きましょうか。お客さん?」

 

「ちっ、前も色付けて払ったんだから少しはサービスしてもいいんでないかい?」

 

「そういう商売ですので」

 

客である男は、いかにも不満そうであるという顔で身に着けた襤褸の下から袋を取り出す。

袋を受け取った店主は中身を確認し、納得した様に頷いた。

 

「お客さんは金払いがいいので好きですよ。もっと上等な酒でも出しましょうか?」

 

「おいおい、今の支払いに応じたランクの酒なんて相当に上等になるぞ?王族でも出迎える気か?冗談はいいから、早く情報をくれよ?」

 

店主は目を細める。一流の情報屋である店主は、情報の採集・正確性が他にずば抜けて優秀である。目の前の男も王都でも上位に入る優秀な豪商であることも調べはついている。

 

では、彼の欲する情報は何か?それを的確に手早く伝える。それがプロの仕事だ。

 

「漆黒の英雄は、あまり飲食に関心がないようなので飲食関係の商品の売り込みは反応が良くないでしょう。狙うなら、武具のメンテナンスなどがいいと思いますよ?確か、その方面を請け負っている商会はまだなかったはずですので」

 

なるほど…と目の前の男は熟考に入る。手持ちの札でどのように取り入るか考えているのだろう。だが、店主の男はその思考を遮るように言葉を続ける。

 

「…ですが、今、漆黒の英雄に新規の商会が取り入るのは難しいかもしれませんね」

 

「そりゃ、どういうことなんだい?」

 

「はい。これは、新しい情報なのですがね。なんでも最近、かの英雄と仲の良い人物が現れましてね。その男がどうやら、商隊の長らしいんですよ。英雄殿が依頼中に出会ったとのことですが、そこで意気投合したらしく、商品も主にその人物から仕入れてるみたいですよ」

 

「なんだと!?それは…難しいかもしれんな…」

 

男の口調が変わり、忌々し気に唸る。こちらが素であり、へらへらした態度は偽装なのだろう。

そもそも、この偽装は周りで聞き耳を立てているものがいた時の対策であるため、あまり徹底してはいない。

それでも、目の前の優秀な男の態度が崩れてしまう程度には衝撃的事実であるらしかった。

 

「その男の名前はなんていうだ?教えてくれ旦那」

 

「はい。モノウル・ヤスクというらしいですよ。南方の出身。モモン殿と同じ黒目・黒髪で…

 

 

 

 

「うーん。これは、なかなか…甘くて美味しいな」

 

エ・ランテルの一角にあるカフェテリア。この店は、チーム漆黒の御用達ということで密かに人気の高い店である。

その店内の端の方に三人の人物が座っていた。

 

一人は、全身鎧に身を包み、カフェの雰囲気に全く溶け込んでいない男、漆黒の英雄モモン。

その隣に行儀よく座るのは、どんな令嬢にも見劣りしない美姫、ナーベ。

ここまでは、エ・ランテルでは見かけるのも珍しくはない組み合わせではある。

しかし、今日は違った。

 

モモンとナーベを丸テーブルで挟んだ向かいにも男が座っていた。

男はマキャティアを注文していたようで、その味を物珍し気に語っていた。

 

マキャティアは、エ・ランテルやその周辺ではさほど珍しいものではない。

よって、男はこの辺りの出身ではないのだろう。実際、男の容貌はこの辺りでは見ないものだ。

黒髪・黒目であるが、顔つきは彫りが深く混血なのかもしれない。

ただ服は珍しいものではないので、こちらの文化を全く知らないということではないということが読み取れる。

 

男の名前は、モノウル・ヤスク。先日、漆黒の英雄モモンと知己になった商人だ。…という設定の御忍びアインズである。

商人だから名前は「物売る・安く」で行こう!というネーミング。実にアインズである。

 

アインズは思う。ここまでたどり着くまで長かった…と。

 

アインズが今回、エ・ランテルに入っている主な理由。

守護者たちには、スケルトンの体では体験できない部分を体験しておくことで、冒険者モモンの演技をさらに自然にする。と説明している。

 

実際は先日試した<憑依>を使い、前から気になっていたマキャティアを飲んでみたい!というのが主目的である。実に浅い理由だ。

 

ちなみに、アインズの説明を聞いたデミウルゴスは「なるほど…流石はアインズ様…」とぼそぼそ呟いていた。ので、アインズの行動には他に深い意味があるのだろう。俺は知らないけど。

 

ちなみのちなみに、アインズが<憑依>の対象にしているのは傭兵モンスターとして召喚した「真祖の吸血鬼」である。

種族が真祖であるシャルティアで実験を行い、一応成功した実績を鑑みての採用だ。

 

LV75と多少、心許ないが安全性の高いエ・ランテルを出ないこと。五体のハンゾウを護衛として忍ばせることを条件に守護者から許可を勝ち取った。…しぶしぶだったが。

 

だが、LVの低さなど実際問題ではなかった。本当の問題。それは…真相の吸血鬼は顔が怖すぎることである。

シャルティアの真の姿と言えば、分かりやすいだろうか。つまり、ヤツメウナギである。

 

流石にこの顔で外に出るわけにもいかないので、幻術で誤魔化してはいる。

割けた口元を整えて、目を通常サイズにしただけだったが…

意外とパーツ自体は整っていたのか、アインズもびっくりのイケメンになったのだから世の中分からないものだ。

 

後は、異邦人設定を盛るために目と髪の色を黒くした。これで、見た目の問題はクリア…なら楽なのだが。

 

 

幻術は基本見抜かれやすい。今回の様に人外を人間の顔に偽装するような大幅な改良は、特に。

よって、十分すぎるほどの対策を講じて出陣している。

具体的に言うと課金アイテムを多数使用したのだが…

 

(この方法は二度と使わないでおこう)

 

と、アインズが反省するくらいには痛い出費だった。

 

 

 

 

「モモン様!!?」

 

「…イビルアイか?」

 

アインズがマキャティアを飲み干し、そろそろ移動しようとしていた時だった。

 

現在、パンドラズアクター演じるモモンに対して声をかけてくる小柄な人物。

先日、ゲヘナで知り合った蒼の薔薇のメンバー、イビルアイである。

 

(ちっ…面倒なタイミングで会ったものだ)

 

というのもアインズはイビルアイにいい印象は持っていないし、なんなら奴はこちらに探りを入れてきている節がある。気を許すことはできない相手だ。

 

「ぐ、偶然です…ね!!モモン様!まさか、エ・ランテルで用事を片付けている最中に、休憩しようと入った店がモモン様の行きつけで、しかもばったりでくわすとはな~」

 

妙に説明口調だが、奴の目的は分かった。偶然と宣っているが明らかにこれは必然。モモンに接近し、情報を抜き出すのが魂胆だろう。

 

(ふん…エントマの件といい不快な奴だ…)

 

「ああ偶然だな、イビルアイ。しかし、私たちはこの店での用は終了していてな。これから宿に戻り契約について話し合いをする予定なのだよ」

 

しかし、そこはできる男パンドラ。アインズの不機嫌を察して、暗にこの店からでると示唆する。ちなみにナーベラルは、不快気に顔を歪めているだけで何もしていない。

 

「なっ…契約ですか?ということは、この男は依頼人ですか?」

 

イビルアイの言葉に一瞬、周りの温度が急激に下がったように錯覚する。

イビルアイのいう「この男」とは、アインズ・ウール・ゴウンである。知らなかったとはいえ、主人を「この男」呼ばわりするとは死刑も止む無しである(NPC基準)

 

演技のできないナーベラルは敵意をむき出しにしているし、パンドラズアクターもオーラがやばい。

 

「いえ、依頼人ではありません。私はモノウル・ヤスク。しがない商人でして、今からモモン殿と商品契約の話を詰めようと話していたところなのですよ」

 

アインズは立ち上がり、自己紹介(嘘)をする。さっきまではこの場で一番苛ついていたが、隣がもっと苛ついてしまったので冷静になってしまった。

 

とはいえ、好きではない相手と話すことは苦痛だ。最低限の会話で切り上げることを意識する。

 

「ああ…お話中に失礼したな。…ところで、あなたは魔法詠唱者なのか?」

 

…と思っていたが、興味深い質問が飛んできた。これは詳しく説明を聞く必要がありそうだ…

 

 

 

「どうして、私が魔法詠唱者だと?」

 

アインズは問い返す。訝しんでいることが抑揚に出てしまっているが、精神安定化が起きにくい吸血鬼の体なので仕方ない。

 

「え…あ、いやすまない。初対面の相手に失礼だったな。なんというか…あなたからは凄腕の魔法詠唱者としての素養?オーラの様なものが見えるんだ」

 

イビルアイ自身も不思議そうにアインズを眺める。

 

この世界では、見ただけで魔法が使えるかどうかが分かるという能力の情報はない…アインズが報告を見逃しているだけかもしれないが…。

少なくともイビルアイの能力にそんなものはなかったはずだ。

 

(う~ん。こいつは第5位階まで使えるらしいし、経験で分かったりするのか?)

 

もし、そういう能力があるならこの女は有用だと言える。現地の魔法の素養のある子供を育てて、戦力増加を図るなどを行わせたい。

エントマには悪いが将来的にナザリックに取り込むかもしれない。

 

「それは、凄いですね。確かに私は第3位階までは使えます。イビルアイさんは、魔法の才能を見分けることができるのですか?」

 

「いや、こんなことは初めてだ。本当に第3位階までしか使えない…のか?」

 

「ええ、私は商人ですのであまりそちらの方の修行は疎かにしてましてね。アダマンタイト級の冒険者に認められるくらいなら、もっと頑張ればよかったですね」

 

ははは、と笑って誤魔化すがアインズは少々焦っている。

なぜなら今、アインズは探知妨害の指輪をつけていない。

 

(まじか…こいつぐらいになると、なんとなく勘で分かるのか…)

ユグドラシル出身のアインズにとって、魔法とはゲームしてたら使えるようになったものだ。

ただこの世界は違う。イビルアイをはじめとした魔法詠唱者は、勉強して魔法を身に着けているのだ。

実力に裏付けられた勘というやつだろう。

 

しかも、そんなに都合の良い能力を持っていたわけではないらしい。

皮算用していた育成計画も頓挫し、地味にがっかりしていたりする。

 

(しかし、やはりイビルアイはなかなかにレアな存在…ということが今の出来事で確認できたな)

 

情報によると、イビルアイの種族は吸血鬼。レベル的に「国堕とし」といわれた伝説のアンデッドであろう。「国堕とし」は200年ほど昔の話なので、この世界の情報も多く持っているに違いない。

 

(こいつらを手元に置くのは、まだ時期尚早。それにエントマの件もあるから素直にこちら側に取り込みたくないのが本音なんだよな~)

 

しかし、情報はほしい。

 

(あちらに怪しまれず、できれば進んで情報を提供してほしいがな…うん無理だな)

 

そんな都合のいい話があるわけ…

 

チラッ

 

「?。どうされました?モノウルさm…殿?」

 

アインズと目が合ったのは、パンドラの擬態するモモン。その瞬間アインズは閃く。

 

「どうやら、イビルアイさんはモモン殿にご用があるようですね。私の要件はナーベさんが相手でも大丈夫なので、モモン殿が良ければ一度別れましょうか?」

 

アインズは思う。パンドラズアクターは優秀だ。普段の言動では考えられないが優秀だ(大事なことなので二回言った)。

だからこそ今、当初の予定を変更した理由を察することができるだろう。

報・連・相を重視するアインズだ。できれば後に<伝言>で指示を伝えたいが、流石に怪しまれるだろう。

ここは、パンドラズアクターの能力の高さを信用するしかない!!

 

イビルアイは思う。この商人はなんと良い人なのだろうと。どうやらモモン様と商談があるようなのに、恋人同士の逢瀬を邪魔しないように、自らは機会を改めると言ってくれているのだ。

しかも、ナーベを引き離すというファインプレー。

イビルアイの中でこのモノウルという商人への好感度メーターが爆上げしていた。

 

パンドラズアクターは思う。自らの主人の慈悲深さを。どうやら主人は、普段あまり任務の与えられない自らを慮って特命を与えようとしているようだ。

イビルアイから情報を引き出す。この任務は結果によっては、ナザリックの今後の運営にも変化を出す大きなものだ。

しかし、それだけの成果が見込まれているにも関わらず、難易度はVERY EASYだ。

イビルアイは、自ら演じるモモンに完全に好意を抱いており、こちらから投げかければ大概の情報は吐くだろう。

しかし、パンドラズアクターの心境は複雑だ。

イビルアイを骨抜きにしたのは主人であり、自分ではない。

ここまでお膳立てして初めて、任務を任される。これは、パンドラズアクターの実力をあまり信用していないということに等しい。

確かに英知に溢れる主人からすれば我ら創造物のできることなど、おままごとの様に映るだろう。

だからといって、子供扱いされてしまうのは悔しい。

 

(この任務を完璧以上にこなし、アインズ様を安心させなければ!!)

 

慈悲深き主人がそれなりに使える。そう思えるほどには働かなければ!!とパンドラズアクターは決意を新たにした。

 

ナーベラルは思う。

 

(なぜ、アインズ様はこんな提案したのでしょうか?)

 

クールな瞳に隠されたポンコツ。タブラが好きそうな案件である。

 

 

 

 

 

 

 

モモンと別れたアインズとナーベは、黄金の耀き亭を目指…していなかった。

 

なぜ、行き先を変更したか。少し考えてほしい。

絶世の美女であり、他を寄せ付けない孤高の冒険者ナーベ。の隣に歩く色男(幻術)。

 

少し歩けば、舌打ち。また歩けば舌打ち。流石のアインズも気づく。

(これ…このままホテル連れ込んだら…殺されない?)

 

当たり前だが、殺気を送ってくる人物がこちらを害せる可能性は限りなく低い。

しかし、今向けられている殺気はそういった…レベルとは無関係なものをアインズは感じた。間違いなく殺される。と

 

アインズはせめてもと、睨み付けている男の一人に笑顔を送ってみる。

 

そうすると、相手はさらに顔を歪め、「あいつ頭高くない?」「どうする処す?処す?」

などと言っているのが聞こえる。

 

(こちらは友好的に行こうとしているのに…男の僻みというのはどうしようもないな)

 

アインズとて気持ちは分かる。自分も本来そちら側なのだから。

 

ただ弁解させてもらうなら、アインズとナーベは手を組んで歩いているわけでも楽し気に話しながら歩いているわけでもない。

 

アインズの歩く、三歩後ろをナーベラルが歩く。モモンの時と変わらない主従スタイルである。

正直、関係性がややこしくなるため普通の知り合い位の距離感で歩いてほしい。

…がナーベラルはポンコツなので内心諦めている。

 

(ナーベラルはこんな(残念美人)なのによく熱を上げられるものだ)

 

勿論、アインズとてナーベラルは美人と思うし可愛い子供だ。しかし、恋愛対象となると…性欲が少ない現在の状況のせいもあるが…うーんという感じだ。

 

しかし、その状況を加味しても最初は黄金の輝く亭に向かう予定であった。

これ以上街を散策するのは目立つし、余計な噂も広がるだろう。

 

ホテルに連れ込むのも大概だが、これ以上外にいる。というのもアインズ的にはきつかった。

 

しかし、黄金の輝き亭をみたナーベラルが赤面しやがったのだ!!

 

ナーベラルの思考回路

パンドラズアクターと別行動でアインズ様の御供。=うれしい

当初の予定通り、黄金の輝き亭に行く=漆黒として動いてる時に何度も行った

あれ?今のアインズ様って…普段と違って生身の体を持ってる=襲うことが物理的にできる

黄金の輝き亭チェックイン=ベッドイン

 

アインズはナーベラルの思考が手に取るように分かった。伊達に長い間振り回されていない。

 

しかし、今のアインズは肉の体を持っているが勃〇しない。当たり前だが、吸血鬼に血が通っていないからだ。

だから期待されても困るし、そんな態度を見られたら冒険者漆黒のスキャンダルとして言い訳ができる範囲でない。

 

仕方なく、ベストでなくベターな選択肢。行き先の変更を行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

アインズが御忍びでエ・ランテルに入った後、ある噂が都市中に広まった。

 

冒険者ナーベとモモンが愛を確かめ合ったという美談だ。

なんでも、モモンと仲良くなった商人がナーベに迫り、狡猾な手でモモンとナーベを引き離す。しかし、ホテル前まで連れてこられたナーベはこれを毅然とした態度で拒否した。というものだ。

 

うん。この商人というのは恐らく俺(アインズ)だろう。しかし狡猾な手も使ってないし、ナーベラルは全然、毅然とした態度じゃないし。

まあ、悪評をながされてもモモンにとってはノーダメージなので放っておくか。

 

…と思っていたアインズだったが後日、噂は誤解であり、ナーベはモモンと仲の良い商人に対して友好的に接していただけである。という訂正版が流行っていた。

 

(人の噂は75日というが、いくらなんでも早すぎだよなぁ…)

 

訝しむアインズだったが…

 

(この都市の人間は大分、ゴッシプに敏感なんだな~)

位にしか思わなかった。

 

ちなみに、モモンとデートした(気になっている)イビルアイの方には噂は立たなかった。南無三。

 

 

 

 

 

時は少し遡り、アインズのエ・ランテル出立前。

 

「デミウルゴス。先程ノアインズ様ノ説明ニ何カ隠サレタ意味ガアッタノカ?」

 

アインズの言葉に一人納得するデミウルゴスに「これは…いつものやつか」と勘づいたコキュートスが問いかける。

 

「ああ、コキュートス。アインズ様の今回の作戦…あれが実行されれば、モモン様としての活動がグンとやりやすくなるのだよ」

 

「ソレハ知ッテイル。飲ミ物ノ味ナドハ直接、体験シナケレバ分カラナイダロウカラナ」

 

「コキュートスそれは、表層的なものでしかない。今回のアインズ様の狙いはもっと深いところにあるのだよ。」

 

「ナンダト!!?」

 

「今回アインズ様は、商人のアンダーカバーでモモン様の近しい人物としてエ・ランテルに潜入されるとのこと…ところでコキュートス、モモン様相手に専属の商人が必要と思うかい?」

 

「必要ナイダロウナ」

 

アインズは骨であり飲食は必要ない。武具も魔法で作り出したもの。ポーションはアンデッドには毒でしかない。相方のナーベラルも魔法詠唱者であり、消耗する道具を持ち歩くクラスでもない。

 

「そうだろう。しかし、モモン様は人間として生活している。かかりつけの商人の一人もいないというのは余りに不自然。しかも、王国の一件でモモン様の評価はうなぎ登りだ。これから多くの商人が接近してくるのは、予想に難くない。それらの有象無象を穏便に払いのけるには?」

 

「先約ガイルトイウノハ聞コエガイイナ」

 

「その通りだね。それに必要ない商品をこれ以上、契約する必要もないというのも実に魅力的なことだね。ナザリックの資金は潤沢と言えど、ごみを無駄に買うというのはいいことではないからね」

 

「流石ハアインズ様!!ソコマデオ考エダッタトハ!!」

 

コキュートスが興奮して、冷気を吹き出す。デミウルゴスもサングラスを抑え、「ああ、素晴らしい御方だ」と感極まったようだ。

 

「しかし、アインズ様の扮する商人の出現で快く思わない他の商会がデマを流布するのは目に見えています。そういった愚か者の対処は私がやっておきましょう。…見つけ次第、牧場送りです」

 

デミウルゴスの形の良い唇がニタリという擬音とともに吊り上がった。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

ここはエランテル。そこの裏通りにあるこじんまりとした店。

その店の主人はコップを磨き、いつも通り客へ適切な情報を受け渡す。

対応していた客が店を出ていき、店じまいを始めながらふと主人は思い出したように考える。

 

(そういえば、あの金払いの良い王都の豪商…最近姿を見ませんね…)

 

幕間1 終了

 




イビルアイ「あれ?私とモモン様の逢瀬は?」

そんなものはない

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