自民党総裁選 国民が見えていますか

2020年9月2日 07時53分
 自民党総裁選は党員・党友投票を行わないことになった。安倍晋三首相の後継首相選びでもある。国民により近い党員らの声を聞くべきではないのか。国民のことが見えているのか、疑問が生じる。
 自民党はきのうの総務会で、総裁選について、両院議員総会を開き、党所属国会議員三百九十四人と、各都道府県連代表各三人(計百四十一人)による投票で行うことを決めた。任期途中の辞任など特に緊急を要する場合に認められた選挙方法で、党員・党友による投票は見送られる。
 首相退陣に伴う政治空白を極力短くするためという理由だが、党員らの投票を見送れば、国会議員票がより重みを増す。
 党内各派閥の支持を集める菅義偉官房長官に有利で、国会議員よりも地方の支持を基盤とする石破茂元幹事長に不利ともされる。
 政権主流派に批判的な石破氏の当選を阻止する狙いがあると勘繰られても仕方があるまい。
 自民党総裁選は一政党の党首選びだが、同党が国会で多数を占める状況では首相選びと同義語だ。
 より幅広い民意を反映する決め方が望ましい。国会議員の都合による「永田町の論理」で後継を決めたと国民に受け取られれば、自民党にとってもいいことではあるまい。中堅・若手議員や地方組織から党員らの投票を行うよう求める意見が相次いだのも当然だ。
 総務会では都道府県連代表が投票先を決める際、予備選などを行い、党員らの意向を反映するよう促す方針も確認した。
 党員らによる予備選は二〇〇一年、森喜朗首相の辞任に伴う総裁選でも行われ、国民の人気を集めた小泉純一郎首相が事前の予想を覆して当選したことはある。
 ただ、このときは告示から国会議員らの投票まで選挙運動期間は十三日間。八日告示、十四日投開票の今回は六日間しかない。党員らの意見を十分に反映する予備選が本当にできるのだろうか。
 自民党は十六日に臨時国会を召集して新首相を選出するものの、十八日に閉会し、十月にあらためて臨時国会を開いて、首相の所信表明演説や各党代表質問を行う方向だという。
 福田康夫、麻生太郎両首相は閣僚認証式の五日後に所信表明演説を行い、代表質問に応じている。
 今回、政治空白をつくらないといいながら、何とも緊張感を欠く国会日程だ。首相に国会での説明責任を果たすよう求めてきた国民は、またも置き去りである。

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