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転生したら悪役令嬢だったので引きニートになります(旧:悪役令嬢は引き籠りたい) 作者:フロクor藤森フクロウ
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現実と妄想のすり合わせ

 読んでいただきありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ

 ブックマーク、ご感想、評価感謝したします。

 アルベルティーナなりに色々考えています。大抵おかしな方向性になりつつありますが、一応周りを思って行動しているつもり・・・です。

 ただ、オツムがどっか残念です。そういう子なんです。




 味方がいない。

 修道院に入り、つつましく生活をしたいとお父様に訴えましたが、お許しは出ない。

 専属の従僕だが、少し兄のような思いを抱いていたジュリアスに碌なフラグもなく告白された。しかもなんだかものすごく訳アリそうだった。修道女希望だったし、私と男女の仲になりたいと思うのは限りなく死亡フラグだ。奇特すぎる。お父様の恐ろしさは、私よりジュリアスの方が知っているはずなのに。

 そもそもジュリアス、結構謎なのよね。私の専属でいっつも我儘ぶちかましてもさらっと応えるスマートかつ有能従僕。メイドたちの間ではその洗練された所作から、貴族出じゃないかという噂もある。まあ、上級貴族が下級貴族を雇うのはよくあることだ――だけど、私の護衛も兼ねているし、レイヴンが自分より強いって言っていたから普通じゃないわよね。本家アルベルも暗殺とかヤバい薬物や人身売買とか裏稼業の斡旋もしていたし。

 ヒキニート令嬢と化したアルベルが斡旋するのは美味しいご飯のレシピの推奨や、可愛くて便利な服飾の推奨だ。平和過ぎる。

 残念ながらヒキニートは外見しかアルベルティーナを保てなかった。悪役令嬢は速攻ドロップアウトし我欲を突き進んでいる。チキンなのでまっとうな商売で。

 お陰で出来上がったのは世間知らずのポンコツ令嬢と超絶有能エリート従僕の愉快なコンビ状態だ。

 皆さん、ポンコツでも血筋だけは立派なので傅いてくれるが、大変申し訳ない。ほんとポンコツで申し訳ない。

 だが、エリート従僕、何故ポンコツに恋をした。このポンコツは大魔王が漏れなくついてくる大変やべえ女だぞ。

 お父様の愛は海よりも深く、空よりも高いが猫の額より狭い局地的なものだ。しかもドチャクソ重苦しい。ますますやべえ女でしかないぞ、アルベルティーナは。

 ヤベーお人ではあるんだけど、私はお父様を好きなのよね。ちょっとヤベーところが完全無欠過ぎるお父様にある唯一ある可愛らしい欠点だと思うの――そういっても、誰一人同意してくれないのよね。お父様の慈愛の精神が私に極振りなのも原因だと思うけれど。

 基本魔王なお父様に、外見だけが取り柄みたいな娘。うん、ヒキニートで大変申し訳ない。ノーブレス・オブリージュを果たしてない。

 小庶民としてはみんなペコペコしてくる中で、適度に気安くしてくれるジュリアスはとてもありがたかったので余計重宝していた。

 あとやっぱり有能。すっごく有能。ポンコツとしてはとてもありがた過ぎて手放せない。

 レイヴンもお仕事できるけど、やっぱりジュリアスほど機微に鋭くない。というより、ジュリアスが仕事でもなんでも出来過ぎるのだと思う。

 でもレイヴンは可愛いからいいの。癒しなの。ジュリアスやキシュタリアは理解しがたそうにしているけどアンナやお母様は一定の理解を示してくれた。

 でも、最近可愛いというとレイヴンが無表情の中に、ちょっと不満そうな顔するの。可愛い。それがまた可愛いの。

 それはともかく、どうしてこうなったという現状だ。

 次の問題はキシュタリア。

 弟だと思っていたのに、まさかの異性扱いだった。解せぬ。

 ヒロインはどうした。一年たって、そろそろヒロインが攻略対象を絞り始めているはずの時期なのに――キシュタリアは違うのかな。どこがダメなんだ。うちのキシュタリアは美形だし、頭いいし、魔力あるし、剣の腕だってなかなかのものだぞ。見たことないけど。それになんたって公爵子息だぞ。社交界でも将来有望株であらゆる面でトップクラスのはずなのに。自慢の弟なのに、何が不満だというのだ。

 ・・・・・私って結構ブラコン?

 あれ? 結構じゃなくてかなり? アンナ曰く、はた目から見て露骨なほど、相当溺愛しているとのことだ。普通、弟にせっせと贈り物とかしないって。ましてや事業を立ち上げないって。ローズブランドの男性アイテムのモデルに丁度よかったんだもの。どうせなら、キシュタリアに似合うものをあげたいじゃない。お父様にだって、あんなに素敵なんだもの。

 ついでよ? だってこの国? この世界? 基本的に品薄なんだもの、前世と比べて。伝統と格式がゴリゴリで埃被って化石化してそうなのを後生大事に使い続けている感じ。ずっと停滞しているんじゃないかと思うの。飽きているのに、発想力がゼロ?

 プレゼントならジブリールのほうが送っているけど、ジブリールはジブリールでローズブランドの広告塔だ。お母様がマダム向けなら、ジブリールはデビュタントから婚活シーズンの淑女たちの注目の的だという。

 自慢の母と、可愛い妹分である。だが残念ながら、ジブリールは私でなくミカエリスの妹だ。

 ミカエリスはあまりに私がジブリールを可愛がるから、たまに微妙な顔をしている。でもいいじゃない。そのおかげでジブリールはすっかり明るい美少女よ? ミカエリスに苦手意識を持ってなくて、溌溂としているじゃない。キシュタリアが強すぎるよ、とこぼしていたけどアルベルちゃんは知りません。可愛い子が元気なのは良いことだと思います。

 それはともかくキシュタリアよ・・・・まさか幼少期の告白ってまだ有効なの? あの時10年後っていったけど、このままだと本当に同じ感情10年近く持っていたってこと?

 学校でヒロインだけじゃなくて、色々綺麗で可愛いご令嬢を一杯見てきたはずだよね? 私と違ってピカピカな経歴で傷なしの文句なしのご令嬢よ?


「どう思う、レイヴン?」


「・・・・・お嬢様がとてもお可哀想な思考を持っているのは理解しました」


 レイヴンにまで呆れられたのですけれど!? あの可愛いレイヴンが! ジュリアスたちのように、残念な子を見る目で私を!!


「僕はジュリアス様へのご報告で学園に行ったことはありますけど」


「けど? 可憐で美しいご令嬢はたくさんいたでしょう?」


 なんたって、ルートによっては王侯貴族子息を手玉に取って取りまくる最強ヒロインがいるはずなのだ。ライバル令嬢も才色兼備が多い! より取り見取りのはず!

 ゲームでも豪華絢爛で、神絵師様と神声優様たちが作品全体を彩っていた。それが三次元化とか目がまぶしくて潰れそうなのは、私がヒキニートだからだと思う。顔面偏差値が天元突破すぎでござる。だが、私以外のメンツがラブにバトルに盛り上がるなら、ちょっと気になるのもまた事実。

 危ないフラグが乱立していなければ、学園に覗き見にいっていたと思うわ。

学園の彼らのアオハルとコイバナの予感に身を乗り出すが、レイヴンはいたってドライだった。


「別にあまり」


「あまり?」


「特にはなかったと思います」


「え? ええと、あの! ジブリールがいっていた噂のご令嬢は?」


「王子たちが熱を上げているという、平民・・・いえ、男爵令嬢ですか?」


「そう、その方よ!」


 やっぱりいるのね! 私が続きを促すが、レイヴンは基本真顔系というか、無表情なのにすごく珍しいことに顔を少し歪ませた。あれは良いものではなく、悪いものを思い出す顔だった。


「・・・・あばずれ?」


「ふぇ?」


「すみません、ついお耳汚しを」


い、いまなんて言ったの!? レイヴンが! レイヴンが・・・レイヴンが汚い言葉を・・・・えええ?

 俄かにプチパニックに陥る中、レイヴンは思い出すように首を傾げた。


「随分色々な男性に言い寄っていましたね。王子たちもそうですが、キシュタリア様やミカエリス様もそうです。他の貴族のご子息らにも言い寄っていましたが、それにも飽き足らずジュリアス様にも言い寄っていました。

 顔の良い金や権力を持っていそうな男ならだれでも股をひら「レイヴン。お前はお嬢様付きを外されたいの?」」


 ずっと黙っていたアンナ。レイヴンの言葉が聞き捨てならなかったのかダイヤモンドダストが見えそうなほど冷え凍えた一言を入れた。

 けして大きな声を出してはいない。むしろ平坦で落ちるような声音。だがレイヴンはすぐさま口をきゅっと噤んだ。


「・・・・とりあえず、お嬢様にはお見せするべき人種ではないと断言できます」


「学園の生徒なのでしょう? わたくし、他人の恋愛に水を差す子供じゃなくってよ?」


「しかし、あれをお見せしたら、だれかの首が物理的に飛ぶかと。

 キシュタリア様もジュリアス様も、あれをお嬢様の視界に入れるくらいなら平気でそれくらいします」


「わかりました。もう聞きません」


 お父様じゃあるまいし! といいたいところだけれど、朱に交われば赤という。

 私が本家アルベルと違いスーパー箱入り娘のせいか、ジュリアスやキシュタリアは年々過保護が増してきている気がする。そのうち赤ちゃん言葉で話しかけたら切れるぞ! 口きいてやらない! 私が拗ねたらこっそり耳打ちで「高い高いしましょうか?」とかあのジュリアスがいってきたことがあるので、相当おこちゃま扱いされていると見た。もうそんなことで喜ぶ年齢じゃないわ! ・・・・嘘です、喜びます。バカなの? 私って、なんかちょっと高い場所とかちょっとスリリングな事に滅茶苦茶弱いの。テンションが上がってしまうの。お父様たちが全力で危険を遠ざけている反動かしら?

 そもそもそんなこと提案するのはおかしくなくて? 本当に私のこと異性として見ているのか、あの二人・・・特にジュリアス。もしかして幼児プレイ好きのロリコン!? ううん、だとしたら童顔ヒロインのほうにときめくはずだわ。アルベルティーナも可愛いけど、本当に綺麗系の顔だもの。美醜はともかくロリペド要素なら、ヒロインのほうが強い。

 残念ながら私のガワは立派にアルベルティーナですが、私の中身は限りなくへっぽこなのは自分で分かっている。メイドや従僕たちにお世話をされないと生きていけないダメ人間です。つまりダメ女好き?

 修道院に行くためにも、自立を目指そうとしているのだけれど、それを嗅ぎ取ったかのように周りの人たちはせっせと私の意思をくみ取り仕事を取っていく。

 仕方なくイジイジといじけながら折り紙をしていた。お母様にもくす玉を作っている。これは観賞用の大きくて立派な奴だ。一番立派なサイズだけれど、あとでお父様にも作るからいいよね! というより、作らなかったら拗ねるだろうし。

 折り紙の用紙は薄くて綺麗で丈夫な高級紙だ。新しい紙を開発して、それを使用するお父様の分は調達に時間がかかるのだ。

 せっせと折っていた指先に影が入る。誰も声をかけてこなかった――私の部屋にそんな不作法に入れるのはただ一人だけ。


「またオリガミかい? アルベル」


「おかえりなさいませ、お父様!」


 優しい笑みを浮かべて私を覗き込んでいたのは、グレイル・フォン・ラティッチェ。当主の公爵にして私のお父様だ。

 お父様、私という娘がいるのにいつまでたってもお美しくいらっしゃるわ。

 修道院問答では喧嘩中だが、お仕事帰りのお父様を無視とか、反発心から冷遇しようなんて親不孝な娘ではない。

 すぐさま立ち上がれば、両手を広げて「おいで」といわんばかりに笑みを深めるお父様の胸へと飛び込んだ。幼いころから慣れし親しんだ香水とお父様の温かさが私を包む。


「アルベル」


「はい、お父様」


「ジュリアスが随分勝手をしたようだが、処分するかい?」


 心臓が凍った。

 ジュリアスとの出来事は、公爵邸の敷地内の裏庭――滅多に人が来ない場所だ。庭師すら、定期的な剪定のため以外来ないくらい。あの場所に気づいてやってくることができるのは私と長くいたジュリアスか、アンナくらい。比較的最近いることの多いレイヴンや、お父様付きのセバスですら難しい。

 処分、とはつまりそのままだろう。お父様にとって、使用人の一人であるジュリアスは、いくら有能でもその程度の価値しか持っていない。将来はセバスに次ぐ立場になっておかしくないはずなのに。

 あの日の出来事は、誰も知らないはず。

 何故、どうしてと思う反面『お父様だから』という言葉が済ませられるのがお父様ゆえだ。


「・・・ジュリアスは必要ですわ。私の従僕を勝手に破棄しないでくださいましね?」


「そうかい? 思ったより役に立たなかったようだから」


「彼の代わりを探すのは大変だと思いますわ」


 レイヴンは優秀だが、あくまで護衛面的な意味だと思う。

 どうも人の感情の機微や、商売的なものはあまり得意でない感じがする。ジュリアスはそつがなさすぎるくらいなのだけれど。

 私の我儘を叶え続けてくれたジュリアスを危険と分かって手放すなんてできない。お父様は、私が手放し次第、即刻手を下しそうだ。

 私がいなくなった後、ローズブランドは彼がいなければ大混乱だろう。むしろ私がいなくても、ジュリアスがいれば安泰のはずだ。

 お父様はつまらなそうに「そうかい?」と不承不承で納得してくれた。

 何故そんなに殺意が高いの、お父様。彼はお父様が用意した使用人で、ずっと私の傍にいた従僕なのに。


「ではキシュタリアは? あれはまだいるかい?」


 背筋が凍る。キシュタリアは公爵令息だ。あそこまで立派に育った青年を、お父様はこうもあっさり手にかけるというのか。

 返答次第では、連鎖的にラティお母様の処遇も決まる。二人とも、何一つ落ち度はない――あ、キシュタリアは夜中に私の部屋に来て、思いっきりお母様に叱られたのだったわ。正直、キシュタリアの告白とかよりラティお母様の怒髪天が印象に強すぎる事件だった。

 あれ以来、ラティお母様は以前にもまして私を気に掛ける――というか、溺愛に近い形だ。特に異性や人間関係には目を光らせている。出入りの商人たちが来るだけでも、私に妙な感情を抱いていないかメイドはじめとする使用人たちと気にかけてくれている。

 馴染みの人たちだからいいんじゃないかと思っていたけれど、予想よりはるかに上を行く私のポンコツ具合に今更心配になったようなの。かたじけないでござる。

 それはともかく・・・うん、今は置いておきましょう。あの時、お母様の激怒にお父様がキシュタリアに対する苦言をなくしたと思ったのに、そうでなかったらしい。

 お母様曰く、一歩間違えば私は強制的にキシュタリアと結婚しなきゃいけなくなる可能性があった。それって、一夜の過ちがあったらだよね? なかったのだから、そこまで怒らなくていいのでは?

 常に娘ガチ勢のお父様にとって、あの出来事は一生イビリネタになるレベルかもしれない。

 単にあの時は黙っていただけで、お腹の中で熟成していた? 怖いですわ・・・・


「キシュタリアは公爵家に必要な存在ですわ」


 お父様は不老不死ではない。いくら人間離れした能力を持っているけど、その美貌には年齢相応の皺が刻まれ始めている。老いとともに体力や腕力も衰えるし、それに伴い魔法も十全に使えなくなる。今はバリバリ社交も軍務もやっているけど、いつかは隠居する。

 それは、確実に私より早いのだから。


「違うよ、『公爵家』ではなく、『アルベルティーナ』に必要かと聞いているのだよ?」


 声は優しいが、その言葉は残酷だ。

 お父様にとって、公爵家という誰もが羨む地位ですら娘の一存で消せるものなのだ。

 お父様の今までの努力や労力は? ラティお母様やキシュタリアの立場は? 使用人たちは? お父様にとって、私の言葉と意思はそんなにも重要なの?

 それは一般貴族とはかけ離れた価値観。貴族どころか、ほとんどの人間は理解しないだろう。


「キシュタリアは、大切な弟です」


 言葉を選ぶ。慎重に選別する。


「わたくしの『家族』を奪わないでくださいまし。

 わたくしの狭い世界で、数少ない大切なものの一つです――もしいなくなってしまったら、悲しゅうございます」


「では、まだ残しておこうか」


 おやめください! 私のような瑕疵物件ではなく、キシュタリアは社交界をときめく超絶人気の公爵家の令息ですよ!?

 ちょっと残念がらないでくださいまし・・・・本当に心臓に悪い。

 お父様は十年近く一緒にいる義理の息子に少しは情がわかないのかしら? ・・・わかないのがお父様なのですよね。お父様の愛情は亡きクリスお母様とわたくしことアルベルに全振りなのですから。

 そして、お母様亡き今、お父様の重圧じみた愛情はわたくしばかりに降り注いでいる。

 酷く重苦しく、歪んでいて、狂愛じみたそれは、常にアルベルティーナの傍にあった。

 困ったお父様だが、その愛情は確かに本物なのだ。困ったことに。もう少し手段を選んで欲しい。そんなお父様は、唯一のお父様であり誰よりも私を慈しみ守ってくださる存在。

 そのお父様に、何一つ報えない自身が歯がゆい。

 何もしなくていい、そこにいるだけでいい。その許しは呪いのようだ。優しく、残酷な呪いだった。私を守るための。

 それは、何よりもお父様の足かせと弱点になる。

 アルベルティーナの存在は、どこまでもお父様の公爵家の弱点にしかならない。

 血筋ばかり立派で、それ以外は役立たず。本当に穀潰し。

 私がいなくなれば、ラティッチェ家の一番大きな歪みは消える。





 きっと、事態が動くのはエンディング。

 ヒロインがどう動いているか分からない。もし王子たちのルートで王太子が決まるルートに食い込んでいるのならば、本来アルベルティーナやラティッチェ公爵家は引き換えのごとく没落する。

 しかし、学園に私が行っていない以上、アルベルティーナがヒロインを苛め抜き、陥れるなんてことはあり得ない。学園にいないどころか、ヒロインと認識も接点もないアルベルティーナがヒロインを虐める方が不自然過ぎる。現在過去にわたって、私は一切王子と婚約を結んでいないのだから。

 キシュタリアルートでもアルベルの悪行は絡むが、今のキシュタリアはなぜか義姉の私に思慕を抱いている・・・・らしい。どうしてだろう。

 正直、終盤ぎりぎりに行くのは怖いし、エンディングの卒業式なんて鬼門すぎる。物語の強制力があったら怖いもの。

 何故か悪役令嬢の私にキシュタリアとジュリアスのフラグがたっているぽい。本当に謎。

 正直、ゲーム内でも告白イベントはもっと後半のはず。何か番狂わせがあったとしたら、私のヒキニート生活? どこに恋愛フラグが立つの? 食いしん坊令嬢やりつつ、物作りに没頭していただけだと思うの。


・・・・・・・・・もしや恋愛フラグはブラフで、実は破滅フラグ!?


 そういえば第一王子ルートで、アルベルを騙して油断させるために態とイチャついたりするルートがあったわ!

 そうだわ! きっとそれだわ!

 そうとなると、ますますヒロインのルートを知りたいわ・・・対策たてなきゃ。

 国外追放or凌辱フラグを避けつつ、清貧でつつましく生きるために修道院に逃げなきゃ! 私のせいでラティッチェ家が没落とか絶対ダメ!

 やっぱり、一番元祖アルベル関係とかかわりないミカエリス・・・・は怖いわ。彼も攻略対象だもの。それにこの前の一件以来、ちょっと彼とも顔を合わせづらい。

 お手紙がもう、なんというか・・・恋文? みたいな? 全然ポエマーじゃないんだけど、色々お誘いがあるの。あとドストレートに口説かれている気がする?

 あの真面目なミカエリスがどんな顔して書いているか謎だわ。

 長期休み以外でも、定期報告で屋敷に戻ってくるジュリアス。時折持ってくるジュリアスがかなり不機嫌なあたり、かなり情熱的なお手紙なのかなぁ――なんて思う。

 基本、私への手紙はおかしな点がないか、すべて改められる。使用人の中でも信用があるジュリアスやアンナやセバスに。

 普通のご令嬢はそうじゃないかもしれないけれど、お父様は私の交友関係をすべて把握したい人なのよね。

 これでお父様のご機嫌が保たれるなら安いものだわ。ミカエリスにはちゃんと教えたのだけれど、変わらないのよね。いいのかしら?

 この前、アンナなんてすごい乙女な黄色い悲鳴を上げてひっくり返ったもの。最近はセバスやジュリアスが多いけど、二人ともすごく複雑な顔しているときもある。

 一度、セバスに「これは、わたくしもしや口説かれているのかしら?」と首を傾げたら、茶器どころかトレーごと落下させてポットもカップも粉々になったことがあった。絶句されて答えてもらえなかったけど、レイヴンにも読んでもらって確認したら、やはり口説かれているらしい。一度メイドたちにも聞いたけど、少し見せただけでキャーキャー大興奮過ぎて、鼻血を出してしまった娘もいたのでやめた。

 ・・・ミカエリスともフラグが立っているかもしれない。いつどこでたったの?

 ですが、これもブラフの可能性があるのです!

 油断はいけませんわ!

 では学園に詳しいかつ、他に聞けるのは・・・・たった一人!

 私の可愛い可愛い世界一可愛い妹分、ジブリール・フォン・ドミトリアス伯爵令嬢。

 ミカエリスとはちょっと顔を合わせづらいけど、ジブリールにはとっても会いたいの!

 お父様も、女友達で妹分のジブリールには結構目こぼしがあるのよね。安心して会える。ここ、大事。

 でも、今のジブリールは寮生活。

 どうすればいいのかしら?


「お父様、わたくしジブリールに会いに行きたいの。学園に会いに行ってはダメかしら?」


「勿論いいよ、アルベル。お父様が連れて行ってあげよう。だけど、勝手に行くのはダメだよ? なんなら、学園ごと買い取るかい?」


「え、いらないですわ」


 もしR18ルートだったら、あの学園はヤリ場ですわ。破廉恥ですわ。

 夜の教室、星見のできる丘、旧音楽室、温室その他もろもろ――エンディングに近くなり、攻略対象と好感度が高い状態だと発生するエロイベント。ミカエリスは領地の別荘だったけど、そのほかの当主ではない生徒たちは学校でやらかしていた。

 嫌ですわ。普通に嫌ですわ。

 キシュタリアルートでないと願いたい。お姉様は、弟が学び舎の一角でアオカンしているなんて思いたくない。まだまだ夢みたいお年頃なの。

 せめて室内でしなさい。風邪ひくわよ。大変事案でござる。一歩間違えば露出狂。

 アルベル姉様はそんな破廉恥な弟に育てた覚えはありません!







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