男が男に惚れるとき
男が男に惚れる?
いやいや、僕は女の子大好きなんですよ! そんなこと、あるわけがないでしょ。
そのことを確証させるため、僕はこれまで出会った男達のことを思い返して見た。
すると……。出てくる出てくる! 抱かれてもいいと思った男が、これでもかってぐらいいたのです。
僕は、どうやら惚れやすい男だったみたいです。
まず、その一人は品川庄司の品川さん
もう、6年くらい前からしょっちゅう、ご飯や旅行まで連れていってもらって仲良くさせて貰っている人。別にお世話になってるから腐れ縁で一回くらい成り行きで抱かれてもいいとかじゃないんです。顔だって全然タイプじゃないし。
品川さんには、何度も飲んでる時に「なるほどなー」というアドバイスを貰いました。休みは不安だという僕に、休みを暇だと思うか何か新しいことを始めるチャンスだと思うかで全然違う、とか。
それに、TVやライブで一緒になった時、僕は何もしてないのに品川さんが僕のエピソードで笑いをとってくれたり、僕がすべったとき全力でツッコんだり、フォローしてくれたり、品川さんだけ大笑いしてくれたり。
もう、それだけ助けて貰っていれば、品川さんに「ホテルの部屋とってあるから来いよ」と言われれば、断ることなど無論出来ない。覚悟を決めて抱かれるでしょう。
ただ最近もっとも、品川さんに惚れた瞬間は『アメトーーク!』の「どうしたんだ品川!」の放送を見た時でした(東野さんプレゼンによる企画、かつてギラギラしていた品川さんがすっかり丸くなってしまったので、もう一度あの頃のように戻すという企画)。
そりゃ、もう番組の前半品川さん不在の中、他の出演者から打たれる打たれる、僕だったらもう何も言い返し出来ないほど散々打たれた後で、やっと登場。ただそこからの品川さんの返したるや、もう伝説。弱った品川さんの「俺、ただの三種類のやな奴じゃん」からギラギラに戻った「お前らも全員、どうしたんだ?予備軍だからな」にいたるまで120点の返しばかり。それを見た時、僕の仲良くさせて貰っている先輩はこんなにも面白い人なんだという誇りと、こんな人といつも飲み屋でトークのスパーリングが出来てるんだという感謝が込み上げてきて感動と共に、今この人の腕の中で強く抱きしめられたいという感情が芽生えたのです。本人に聞かれたら恥ずかしい告白になってしまったのですが、いつも品川さんが飲み屋で他の芸人さんの男前の話を聞かせてくれた後「お前らも、俺のいい話を、どっかでしろよー」と言っているので良しとしよう。
さらに、FUJIWARAの藤本さん
あれは、僕らフルーツポンチがTVにも出ていない2年目の時、ライブで初めてお会いしたFUJIWARAさんがMCをしてくれていた時でした。
そのライブは、ネタの後、作家さんの判定で合格ならファンファーレが鳴り、ダメならゴングの音でカンカンカンカンと鳴らされ、合格五回で上のランクのライブに出られる昇降格ライブ。
その日、僕等はあと一回合格すれば昇格、その日不合格なら降格という大事なライブだった。
手前味噌で申し訳ないが、その日のネタはウケたんです。イケる。そう思っていた。
そして、ネタが終わりFUJIWARAさんが「判定をお願いします」というと……カンカンカンカンと不合格を知らせるゴングの音。
ダメだった。そう落ち込んでいると藤本さんが「ウソやろー、めっちゃ面白かったしウケてたやん。合格ちゃうの!」
まったく面識のない若手の僕等のために舞台でそう言ってくれたのです。
「ねー、お客さん、面白かったでしょ。これは、再審査やろ。どうですか?お客さん」
そう藤本さんがいうと客席からたくさんの拍手が。
まるでドラマみたいな奇跡が起こる前触れのようなシーン。
「よーし、なら再審査や!もう一回判定お願いします!」
静まりかえる会場、張り詰める空気で耳が遠くなっていた。ダメだ。耳をきちんと澄ませなければ、FUJIWARAさんやお客さんのおかげで僕は奇跡の瞬間に立ち会おうとしているんだ、ちゃんと合否を知らせるゴングの音を聞かなければ。そう思い、地球の裏側の誰かの愛のささやきでさえ聞こえるぐらいに僕は意識を耳に集中した。
そして……その時はやって来た。
カンカンカンカーン(え!? ん! なんで? 絶対いける感じだったのに)
判定は覆らなかったのだ。
すかさず、「不合格なんかい。恥かかせんなや!カンカンカンポンチやないかい」
さっきまで、後輩のために立ち居振舞っていたのはウソのように、完全に合格の流れだったのに不合格だったミジメなコンビをエサに笑いをとっていた。
もう、合否なんて関係なかった先輩が面白いっていってくれて、何かをしてくれた。初めて会う僕らの名前で笑いをとってくれている。
ライブ後、楽屋でもイジリは止まらなかった。「なんであの流れで不合格になれんねん。どんだけツイてないねん!もう、あのネタやめろー」
「なんでやめなきゃいけないんですか!」
「そしたら、俺らFUJIWARAがあのネタ貰うから、それでこの後のライブでやるから」
最高の褒め言葉だった。僕ら若手が憧れる先輩達がでるライブで通用すると言ってくれたのだ。
あれ以来、いつでも藤本さんには抱かれる準備はできている。
まだまだ、感謝しても感謝しきれない先輩たち尊敬できる人達はたくさんいるのだが、とりあえずはこの辺で……。
ただ思うと、以外と僕は面食いじゃないんだという事に気付いた今日このごろでした。
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監督・脚本・主演/村上健志

Vol.1

Vol.2

Vol.3

Vol.4
プロフィール
村上健志(むらかみ けんじ)
1980年12月8日生まれ、茨城県出身。B型。
2005年に相方の亘健太郎と共にフルーツポンチ結成。独特のナルシストキャラで人気を博すも、近年はあまりの運動神経の悪さから“ヒザ神”(※走る際にヒザが曲がらないことから由来)の称号を授かり、本人の意図しないところでブレイク中。
PROFILE