好きじゃない人にも好きって言えちゃう
お笑いの世界に入らなければ、きっと無理だっただろう。
アイドルと、2人でお酒を飲み、彼女の部屋に行ったことがあるのです。
敬語は、いつしかタメ口になり、2人だけの呼び名をつくり、マッサージをしてもらうまで2人の距離は縮まり幸せの絶頂の時。完全に落ちました。恋に・・・ではなく、本当に落ちたのです。突然、床が抜けアパートの2階から1階に落下したのです。
何がなんだか訳もわからないでいると、ニヤニヤとした顔を浮かべた、たくさんの人がやって来ました、そこには、さっきまで幸せな時間を共有していたアイドルの顔があったのです。
『ロンドンハーツ』のドッキリだったんです。
ようやく騙されたのだと理解しました。アイドルが、僕に向けていた「好き」という気持ちはビジネスでした。
僕はお笑いの世界に入ったのでした。
「ドッキリでした」と言われたって、かわいいアイドルとおしゃべりをし、「好きです」と言われ触れ合ってしまったから、こっちは心奪われているんです。
「はいそうですか!」なんて割り切れません。だって、向こうがドッキリを仕掛けていたなんて知らなかったんですもの。僕の幸せな心にウソはなかったから。ドッキリだと知った後、そのアイドルのグラビアを雑誌で見かけたときも、テレビ局ですれ違った時も告白して振られた相手に会うような気まずさは残ったままなんです。
思えば、ドッキリでなくたって、恋愛というのは騙し騙されがつきものかもしれない。
「好き」という心を利用して搾取する人…
彼女いないよとウソをついて目の前の女の子を口説く人…
彼女にバレないように計画を立てサプライズで誕生日を祝ってあげる人…
そんな騙す人がはっきりといて騙される場合は怒りの矛先は分かりやすい。
しかし、単純じゃないこともあって、誰も悪意などなく騙そうなどとしてなくても、すっかり騙されて悲しい思いをしている人がいる。
すごく楽しそうにしてくれるから、電話番号なんて教えてくれるから、一緒に2人でご飯に行ってくれるから。好きになっちゃいますよ!
あなたに、騙すつもりがないのはわかっています。楽しくない会話に笑顔をつくっていたことも、告白を断って深く傷つけるよりまだマシと音信不通という手段をとったことも優しさだったのでしょう。
あなたは、きっと普通にしていただけなのに勝手に勘違いした僕が悪いんです。
ただ、女性諸君。覚えておいて下さい。
貴方たちは、騙すつもりがなくても、君たちの笑顔に、弾むような声に、偶然触れた手から伝わる温もり、すべての行為全てに、僕は騙され、好きになってしまうんです。そんな恐ろしい力を秘めた罪深い存在だということを。
(僕を好きにさせたと心当たりのある人は、連絡待ってまーす。)
散々、騙されて思う。騙されるのも、そう悪くない。
だって、じっとしていてもそこには元々何もなかったのに、あなたと出会い
後に傷つく事になったとしても、騙されたと思うまで、すごく幸せになれたのだから。それに、ひょっとすれば騙されず本当の幸せをつかむ可能性も踏み込んだ先にしかないのだろうから。
だから、僕は、これからもうまい話には全力で乗っかっていこう。
床が抜け、叩き落とされない事を願って……。
追伸、
僕に騙されたと思っているたくさんの方。誠に申し訳ございませんでした。
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『東京ベンチストーリー』
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監督・脚本・主演/村上健志

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プロフィール
村上健志(むらかみ けんじ)
1980年12月8日生まれ、茨城県出身。B型。
2005年に相方の亘健太郎と共にフルーツポンチ結成。独特のナルシストキャラで人気を博すも、近年はあまりの運動神経の悪さから“ヒザ神”(※走る際にヒザが曲がらないことから由来)の称号を授かり、本人の意図しないところでブレイク中。
PROFILE