まず合作と個人作を比較した場合における合作のメリットデメリットを考えます。
「合作のメリット」
大きく分けて4つのメリットがあり、そこから繋がって様々なメリットが生まれます
<特別感やお祭り感を出すことができる>
・視聴者の興味を引かせれる
・動画でコンテンツを盛り上げようとするための手段として他の方法より容易
・特別感が出せるのでコンテンツやキャラへの愛表現、感謝性としては個人投稿よりメッセージ性が伝わりやすく大きいものになる
<広告や再生数の集中化ができ、ランキングや検索で有利>
・普段よりもたくさんの人に見てもらえる
・技術があるのに普段埋もれる人や新人にとっては自分をアピールするチャンスの場となる
・名作として認知されればそれに参加したことは大きな実績になる
<作業分担によって自分の得意な分野で最大パフォーマンスを発揮できる>
・作業分担による効率化と省エネ化
・できないことは他の人にまかせれる
・多様性に富み、各パートで味の違う作風にすることができる
<人間関係面でのメリット>
・横の繋がりを広げれる
・界隈の結束化、親睦を深めれる
・一時的とはいえ技術共有や気軽に質問できる場になりえる
「合作のデメリット」
・締め切りがある
・自分は作り終えても企画倒れになり投稿できない可能性もある
・人間関係のトラブルと隣り合わせ
・責任を伴う
・1人の意思では後から消せない
次に大規模合作における形式の比較とメリットデメリットです
「①ドカベン合作形式」
各々で好きなように1つの作品を作って持ち込み、それをまとめて一つの動画に収める合同誌のような方式、オムニバスというらしい。
メリット
・企画難易度が低く手軽
・ある程度量さえ確保できれば未提出者がいても投稿可能、リカバリーがしやすい
・まとめ時の負担が少ない
・参加者の負担も少ない
・各々自身の好きなように作ることができる
・参加しやすく敷居が低い、人が集まりやすい
デメリット
・手軽さゆえに現状同じようなものであふれかえってしまい合作自体が埋もれてしまうものまで出てきてしまっている、供給過多。
・全体で無駄に長くなりがち
一般的なアイマス合作といえばこれですね。まず1番に、動画制作における負担軽減と省エネ化という非常に大切な点を最大限に活かせた合作形式だと思います。
私達二次創作をする者は学校や仕事のリアルタスクを第一にこなす必要があり、そんな現代の忙しい環境の中で制作に用意できる時間はわずかしかありません、そのわずかな時間でやりくりするためには同じクオリティのものを作るにしても、とにかくかかる労力を減らす省エネ化が重要なわけです。それに踏まえて難易度や敷居が低い面も合わせて企画倒れになりにくいのもこの合作の利点です。
そしてデメリットが少ないというのもこの形式の素晴らしいところだと思います。
その反面デメリットとしては供給過多になっているのが致命的に痛いです、合作目的である再生数の集中化、つまり多くの再生を取れない可能性が高くなってしまうわけですから、そうとなると上に書いた合作メリットの中でも再生数の集中化によるものがすべて無くなり、さらには他のメリットにも少なからず悪影響を及ぼしてしまいます。
また、無駄に長くなりがちな点も挙げられますがこちらは参加人数に合わせて1パートの時間に制限をかけることで解消できるので対策は可能です。現に6秒合作等ありますし。
他にも小さなデメリットはあると思いますがそれがどうでもよくなるくらいには省エネ化という点で魅力的です、これで再生数を出せるなら何一つ欠点がありません、つまり、完成されてるのです。どうりでこの合作形式が多いわけです、まぁ多くなってしまったがために再生数を出せなくなってしまったのですが。
「②原曲メドレーMAD形式」
アイマスだとミリオンのMS合作等のシリーズや去年ですとアイマス流星群合作もそうでしたね。MMDや手描きMAD等のメドレー形式の合作ではこれが一番多いと思います。
メドレー形式の中でもまだ労力と技術を比較的要さないのがこの形式です。MS合作を基準に1パート1分〜2分だとして進めていきます。
メドレーとはいえ繋ぎ方はDJのようにフェードアウトフェードインならば知識がなくとも感覚で繋げるだけで一般人は誤魔化せます。なので音源面は専門的な人がいなくても何とかなります。
ではメドレー式の問題点は何かというと、まさにパートを選ぶ必要性があるところです。これに伴い好きなパートでやれない人が出てきますし、選んだパートは必ず完遂する責任が生まれます。
同時に曲を使った形式をとる必要があり、発想で勝負するようなフリースタイルパートで戦いたい場合、曲を活かした音ハメ等がフリースタイルではとても難しく、難易度が格段に上がります。そのためほとんどのパートが正統派MADを基本線にすることになるので他パートと比較しやすくなってしまいパートごとのクオリティの差が一般視聴者でもわかるくらい顕著に目に見えてしまいます。
対策としては作る側ではクオリティ差がわかってしまっても一般人からでは差がわからないくらいどれもすげえとなるクオリティまで下を引き上げるしかありません。基準としてはMS合作の映像はそれがほぼできてるのであれぐらいです。あれ以上のレベルだと一般人からはどれもすごいで終わります。
埋まらないパートに関してはどうにかして埋めるのも手ですが原曲メドレーならカットしてしまうのも可能なところがとても良いです。
デレマイム合作などの同曲を繰り返すぬえ合作方式もこれとほぼ同じ感じですね。
「打ち込みメドレーMAD形式」(音MAD除く)
大規模ではありませんが最近ですとミリ6th記念投稿祭の運営陣がやっていましたね。
ニコマス界隈ではメドレーをデレンジ勢がやってる場合が多く、各々得意分野で作業分担ができていてとてもいいと思います。
アイマスではないMAD系や静止画MADではこういった形式の合作はあるのでしょうか・・・?1つの曲を複数人でやるMAD合作はよく見ますが大規模な打ち込みメドレーとなるとマリオ30周年合作くらいしか知りません、申し訳ない。
原曲メドレー形式と違うところはまさに打ち込みメドレーの差です。やはり、メドレーも1から用意した方がクオリティは圧倒的に高く見られます。
もちろんデメリットとして打ち込みメドレーができる人が必要というわけですが。
そしてメドレーを作るのにかかる労力は我々が思っているよりも大きく、1人辺り3分〜5分が精一杯だと思います。10分クラスのメドレーにしたければできればメドレー制作に複数人用意しないと厳しいと思います。
既存のメドレーを使うのもありですが1から作るとなると好きな選曲ができる利点が大きいです。
そしてここでメドレー式合作の1番の利点を発表します。
それは1パートを短くしてクオリティの集中ができることです。
我々は普段10〜20時間かけて2分尺MADの個人作を作っていると思います。それを合作では30秒なわけです、普段の2分のための20時間を30秒に全力で詰め込めるわけですから必然的にクオリティが上がります。
30秒を普段通りにやれば15時間余るわけです、そこでいつもなら単色の背景なところを図形や手描きで背景を自分で作ったり、キャラを切り抜いて動きもつけたり、モーショングラフィックスや凝ったシーンチェンジにするなどたくさん詰め込んでいくのです。
たまに、個人作は微妙なのに合作だとすごくて本当にその人が作ったのか怪しいと思うような人がいると思います。そういう人はこんな感じでメドレー合作向きな人ってわけなんです。
逆に「30秒ならいつもの4分の1の時間で終わるやん!なら余る時間で他の合作もいっぱい参加しよ!」って考えのままいざ参加すると自身と同じレベルだと思ってた人らが次々とすごいものを出してくるように見えてしまい、プレッシャーで押しつぶされてしまうというのをよく見ます。メドレー合作慣れしてない人にありがちですね。
1パートを短くすれば合作全体が無駄に長くなることもありません。10分ちょっとくらいが丁度いいと思います。
「音MAD合作(ニコニコMADレーシリーズ形式)」
では最後です、音MADの合作です。実は音MADの合作ではほとんどがメドレー式であり、いわゆるドカベン方式での音MAD合作はあまり見かけません。(もちろんあの形式で音MADパートが多いものもそれなりにありますが音MAD以外も参加しているので便宜上そうします。)
音MAD合作においてメドレーはニコニコメドレー界隈(通称ニコメド界隈、メドレークラスタ、メドクラ)の人たちに作ってもらうことが多いです。既存のメドレーを使うのも多いですがビッグタイトルや古参ジャンルであるほど1からメドレーを作ることが多く、ニコメド勢も音MAD合作に使われるメドレーを作ることを目標にしてる人も多いと聞きます。
この記事を見る人はニコマス系中心の人もいるのでもう少しニコニコメドレー界隈と音MAD界隈の関係図を掘り下げます。
ニコメド界隈の人らは名前の通りニコニコで流行った曲や人気の曲を中心にメドレーを作りニコニコオールスタースターズの形成に一役買っています。いや、一役どころかむしろニコメドでよく使われた、曲やメドレー映像がニコニコオールスターとして世間に認知されているのでニコニコオールスターズ入りの決定権を担っているレベルだと自分は思ってますが。
対して音MAD界隈はエンタメカテから例のアレまでアニメやゲームだけでなくCMや実写素材、スポーツや自然、全てのジャンルで作られている、いわばカテゴリの壁を超えて繋がっている珍しいジャンルです。
つまり音MADはニコニコ全カテゴリの垣根を超えて互いに影響しあう越境こそが文化であり、そこがおもしろさでもあります。(逆に使用曲と使用素材が同一作品内である方が珍しいレベルですし・・・)音MADタグを追いかけるだけでほとんどのカテゴリに詳しくなれるでしょう。ニコニコオールスターズに1番影響を与えている存在です。
要は音MAD界隈が様々なカテゴリでニコニコのブームを形成したり、後押ししまくっているのでニコニコメドレー界隈でも音MADが作られまくっている曲(わかりやすい例がダンスロボットダンスやダダダダ天使)でメドレーを選曲することが多く、メドレー映像にも我々の動画を使ってもらってます。
そんなわけで我々音MAD民は作業用BGM以外にも合作等に使うためや参考にするためにニコニコメドレーを漁りますし、ニコメド界隈は使う曲や流行を知るために音MADをかなり見るという切っても切り離せない関係なわけです。直接の絡みがない人でもガッツリ影響しあっています。
長くなりましたが結論として何が言いたいかというと音MAD合作は素材の二次創作のためだけに作られるのではなくニコニコ文化の持続と発展のために作られる面も持っているってことです。
今回の合作においてメドレーの曲が「アイマス曲オンリーじゃないんかい!」ってあるニコマスPに言われました。要は今までのニコマスでのメドレー式合作はアイマス公式曲のみってのが多かったのです。
対してこの合作はアイマス公式曲なんて2割ぐらいで他はガッツリ別ジャンルの曲です。
これはニコニコオールスターを意識した選曲になっているからです。まあ選曲決め時はみんなそんなこと意識せずに好き放題選んでるんですけど音MAD民が好きに選ぶとだいたいこうなります。例えば無意識のうちにボカロ東方アイマスの御三家曲を入れてたりするんです。ニコニコ大好き人間ばかりですので・・・。(企画当時はシャニマス公式曲がめちゃくちゃ少なく、ストレイライトなんてまだなかった頃だってのも要因ですけどね)
まあシャニマスで二次創作がしたいだけの人にとっては知らないアニメOPでやるはめになったりと人によっては作りたいものが作らしてもらえないかもしれませんが・・・
そして音MAD合作に使われるメドレーはニコニコメドレーであるため色んなジャンルの曲が使われるというのがすでにニコニコ視聴者層に認識付いているので知らない素材ジャンルの合作だとしても見てみようとなりやすいです。その辺も含めて音MAD合作ってだけで見る人が多くなりやすいのではないでしょうか。
とまあ音MAD合作の文化事情を話したところでやっとメリットデメリットに入ります。と言っても文化的な違い以外では音声まで作るかどうかぐらいの違いだけですけど。
まずもうメリットとしてはこれです。
・クオリティの最大値が高い。
映像どころか音声まで作るわけですので表現の幅は格段に上がり、できることが増えます。
1番わかりやすい例をあげるとすれば、その辺のアイマスMADに人力ボカロが付いてたらどうなりますか? 最強じゃないですか?
まぁ人によっては原曲に映像だけがいいという作者もいると思いますが、一般視聴者視点だと両方あるとお得だよねってことです。
映像と音声の両方を最大値付近にまでクオリティを高めてしまえばもはや無敵ですよね。
それに加えてメドレーや曲すらも自分たちで打ち込んだり作ってしまうってレベルになるともはや欠点どこにあるんですかってレベルです。
・・・実際にはかかる労力に対して確実に再生数が取れるわけでもないので個人作でここまで両方に莫大な時間をかけてやる人はほぼいないというのが実情でまさに机上の空論なわけなのですが。
でも合作なら音声映像別れて互いに本気出したら他の追随を許さない圧倒的なパートができるかもしれません。現に今回のシャニ合作では凛として咲く花の如くパートはなんてまさにそうですし。
・わかりやすいパートにしやすい
セリフを使えるとなると表現の幅が増えると同時にそのパートで何がしたいのか、何を伝えたいのかが視聴者に伝わりやすいです。
わかりやすくできるというのはおもしろさの伝わりやすさにも影響し、おもしろいパートを作りやすくなるということにもなりえます。せっかくのネタも視聴者に伝わらなかったら意味ないですからね。
・視聴者を飽きさせない工夫がしやすい
表現の幅が増えると映像だけのものより色んなことができるため同じようなパートだらけになってしまうの防ぎやすいです。
・再生数が高くなりやすくそのジャンルの代表的な合作や名合作が生まれやすい
希少性が高いので視聴者の奪い合いになることはあまりありません。
定番ジャンルやビッグタイトルな合作であれば今の時代でも当たり前のように初動で万越えしてきます。10万越えになるポテンシャルも高くリターンはでかいです。
・作業用BGMで使う人もいたり・・・
再生が多い理由の一因だと思います。一回見たら終わりではなく視聴者もいろいろな使い方をするみたいです。
・単純にクオリティを高くしやすい
最終的にはこれに尽きます。
視聴者の評価は映像だけでなく音声でもさらに加点されますよねっていう話なだけですが。
音声と映像の二方向からのクオリティの暴力で視聴者を殴りつぶしましょう。
「デメリット」
・アホみたいに労力とコストがかかる
もうこれだけでわざわざ音MADでやる必要がないと思います。
音声作った後に映像までやるとか労力2倍じゃないですか・・・
ちなみに今回のシャニ合作は音声素材集めだけでも自分は70時間以上取られてます、アホですね。
・映像技術だけでなく声学や音楽知識、音響知識まで求められる
簡単に言えば敷居が高すぎます。
ミキシングだとかの音響知識に加え、コードやアルペジオ等には音楽知識が必要ですし、「破裂音の子音は音程を持たない〜女声のサ行の子音はコンプやリバーブかけると目立ちやすいから12000Hzあたりを抑える〜」だとかの音声言語学までも頭に入れてるんですよあの人たち、頭おかしいですよね。
求められる知識と技術量が桁違い、それでいてイラストや音楽と違って音MADの作り方なんて教科書も参考書もありません。言うなら独学、いやもはや、自分たちで研究しなければならない域です。シンセ化の仕方だとか韃靼戦法だの音MAD特有の技法なんて音MAD作者に教えてもらうしかないんです。
・圧倒的人材不足
あまりにも敷居が高すぎるため、数少ない作者を探すのが大変です。
むしろシャニ合作が音MADでできたのは奇跡です。よく、シャニマスでやるモチベがある音声作れる人がここまでいてくれたもんですよ。
まぁ僕が主催する音MAD合作だから参加したいので参加表明してからシャニマスをやり始めるという変わった人もいましたが。
そんなわけで普通に人材が枯渇しております故、音MADやったことない人に音声ができるように指導するところから始めなくてはいけないんです。今回も自分が3~5月にかけて初心者四人にそれぞれ適している分野をみっちり教え込みましたし・・・
ここまでしないといけないくらいにはデレ以外のアイマス音MADは人材不足です。
・高度な連携が求められる
まさに合作というわけです。音声映像メドレー、さらには絵師にまで、広い範囲での複雑な連携を要します。難易度が高すぎるのはだいたいこの辺が原因です。
他パートの把握までしなくてはならないですし、他との兼ね合いでの修正地獄が待っています。
・主催や運営陣への負担が尋常ではない
進捗管理やモチベ上げはもちろんのこと一番やばいのは音声まとめ映像まとめです。
運営陣で音声まとめのノウハウを持ってる、音声まとめのセンスがずば抜けている人がいないと終わります。責任も大きく主催はまず病みます。
・企画倒れになりやすい
当たり前ですが難易度が高すぎるのでポシャる確率が他より高いです。自分のパートをなんとか作り上げても他がダメだと投稿できません、参加すらもハイリスクです。